日経ヘルス

病院選び

日経health 

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

病院選び

日経ヘルス2002年6月号

2002.6

日経BP社発行


相談

先日、新聞にC型肝炎から肝臓ガンになった人の話が載っていました。>最初に検査した大学病院では、良性の腫瘍といわれたのに、なんとなく不安で他の個人病院に行ったら3cmのガンが見つかったそうです。

こういう話を開くと、複数の病院を受診した方がいいのかなと思うのですが。(45蔵・男性)


Dr.

C型肝炎があって、超音波で陰が映ったら、まず肝臓ガンを疑います。これは医者の中では常識です。

恐らく最初の病院では、その人がC型肝炎だということを知らなかったのでしょう。こういう見落としは、医師が患者の基礎情報を知っていればかなり防げます。
 そのためにもかかりつけ医が必要なのです。医師にとって「今までと何か違う」と感じるのも診断材料のひとつ。

僕が経験した中でこういうケースがあります。

B型肝炎を患ったことがある患者さんの話です。B型肝炎から肝臓ガンに移行することは少ないんですが、あるとき、その患者さんの腫瘍マーカーがわずかに高かった。「何かあるな」と思い超音波検査をしたけれど腫瘍らしいものは映らなかった。
それでもなんだかイヤな気分が捨てきれず、もう一度詳しい検査(造影CT)をし直したら、ごく初期の小さなガンが見つかりました。普段から患者さんとのコミュニケーションがあれば、こういうことも起こり得ます。
 ですから質問のようなケースを防ぐには、複数の病院に行くよりも、信頼できる1人のかかりつけ医を見つけることが大切だと思います。
 もちろん、かかりつけ医はすべての病気の専門医ではありませんから、必要に応じてかかりつけ医から専門医を紹介してもらうといいでしょう。また、いままでの病歴をリスト化した「どこでもカルテ」を自分で作っておくことをお薦めします。

セカンドオピニオン

 日経health

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

セカンドオピニオン

日経ヘルス2002年6月号

2002.6

日経BP社発行


相談

マンモグラフィーで早期の乳ガンが見つかりました。主治医は「できるだけ早く手術をした方がいい」というのですが、やはり、セカンドオピニオンを受けた方がいいでしょうか?

セカンドオピニオンを受ける医者をどうやって見つければいいのかわかりません。(48歳・女性)


Dr.

ガンのような病気の治療方針を決める場合の手段として、セカンドオピニオンが注目を集めていますが、原状ではまだ難しいものがありますね。

まず、誰に尋ねたらいいかわからない。
セカンドオピニオンには保険が利かないし、謝礼の基準もない。
患者から「セカンドオピニオンを受けたい」といわれて、検査データやカルテを喜んで提供する医師はまだ少ないでしょうね。
 もちろん、現在の主治医の治療方針に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンを受けるべきです。でも、その場合も「親類に医者がいるから相談したい」などという言い方をした方がいいかもしれません。
 そもそもセカンドオピニオンとは、別の治療法を薦める医師を探すことではなく、今の標準治療に照らして納得がいくものかどうかを確認することです。
次々と別の選択肢を薦める医師が現れても、どれを選べばいいのか迷うだけですから。医師側も「自分ならこう手術する」ということではなく、世界的標準と照らし合わせ、ほかにどんな治療法があるかを伝えなければなりません。
 私は、原則的には、何がなんでもセカンドオピニオンというのではなく、選んだ医師を信頼するというやり方が大切だと思っています。そのためにも、最初にどんな医師を選ぶかが重要。
信頼に足る医者を見つけたら、とことん信用してみる。それも、患者としての選択です。
 なお、セカンドオピニオンの医師を探す方法として、ボランティアの医師によるセカンドオピニオン外来を設けている病院(注)もあります。


 

(注)Cancer Net Japan
http://www.nagumo.or.jp/cancer/

ボランティア医師数名により週に何日かガンのセカンドオピニオン専門の日を設けている。

免疫ドック

 日経ヘルス

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

免疫ドック

日経ヘルス2002年10月号

2002.10

日経BP社発行


相談

最近「免疫ドック」というものがあるそうですが、どんなことがわかるのでしょうか。

最近、感染症によくかかるようになり、免疫力が低下していると感じています。そういう場合、やはりガンなどにもかかりやすいのですか。(41歳・女性)

Dr.

免疫ドックでは、血液中の免疫に関係する細胞がどれくらいあるかを調べます。血液を採取するだけの簡単な検査ですが、調べる内容は医療機関でかなり差があるようです。

というのも、これさえ調べれば免疫の強さがきちんとわかると特定されている検査は、まだないからです。
例えば、白血球の中のリンパ球や、ナチュラルキラー細胞などが免疫と深く関係していることはわかっていますが、それらの数や活性値が多いからといって、すべての病気にかかりにくいのかどうかは、まだわからないのです。免疫細胞の中には、ガンの予防にだけ関係するものもあるのです。
また、ナチュラルキラー細胞などは、笑っただけでも増えるといわれています。

だから、どんな状況で調べたかによっても、検査値は簡単に変化してしまいやすいのです。
ただ、同じ検査を定期的に受けることで、過去の自分の数値と比較し、今の状態を知るには意味がある検査といえるでしょう。

免疫力は、不摂生な生活によっても低下します。中でも、リンパ球は夜、活性化されるといわれており、睡眠不足になると免疫力は低下します。

もし、検査を受けて免疫力が低下していると判定された場合は、まず、『快食、快眠、快便』を心がけるのが王道でしょう。

手術の際の輸血

 

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

手術の際の輸血

日経ヘルス2002年10月号

2002.10

日経BP社発行


相談

子宮筋腫の開腹手術を控えています。主治医にその際の輸血に備えて「自己血輸血」をしたほうがいいといわれました。どんなメリットがありますか。貧血がかなりひどいのですが、採血しても大丈夫でしょうか。(39歳・女性)


Dr.

自己血輸血とは、手術の前に自分の血液を採っておいて、手術中や手術後、輸血が必要になった場合にそれを使う方法です。
自己血輸血のメリットは、他人の血液を体に入れたときの拒否反応や感染などの、リスクが少ないところにあります。
そもそも投薬や手術、輸血といった治療法は、人間の体にとっては不自然な行為。できればやらないに越したことはありません。それでも、行うことのメリットが多いと判断された場合には行います。ですから、そういう治療を施す場合には、できるだけ体に負担が少ない方法を選ぶべきなのです。
もちろん、他人の血を輸血する際にも十分な感染対策がとられていますが、現在発見されていない未知のウイルスが含まれていないとも限りません。その点、自分の血なら体に負担が少ないわけです。
貧血を気にされているようですが、主治医が自己血輸血を薦めるのであれば、採血しても問題がないと判断したのでしょう。
今、健康な人の献血なら一度に400mlまでは大丈夫とされています。人間の体は、必要なものが減れば補おうとするようにできており、多少血液を採っても時間がたてば元に戻りますから、心配いりません。
ただし、医学は日々進歩しています。例えば20年前なら採血して1、2時間の新鮮血を輸血するのが最新治療とされていましたが、今では悪い医療です。
そう考えれば、今いいとされている治療法が必ずベストではないことを、医者はもちろん、患者側も頭の片隅で認識しておく必要があるでしょう。


ドクターからひとこと

日本の今の医療制度では、一律の金額で標準の治療が受けられます。世界的に見れば、コストの割にはいい治療を受けているといっていいでしょう。そのあたりをもう一度認識し、病院にサービスばかり期待するのではなく、自分で勉強する姿勢も大切だと思います。

高コレステロール

日経ヘルス

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

高コレステロール

日経ヘルス2003年秋号

2003.10

日経BP社発行


相談

高血圧症と高脂血症(悪玉コレステロールのLDL値が高い)です。これらにいいといわれる食品をいろいろ食べたり、毎日1時間のウォーキングをしていますが、コレステロール値がなかなか下がりません。体質的なものでしょうか。(63歳・女性)


Dr.

コレステロールが高いと「脂っこい物や甘い物を食べてるんでしょ」といわれるかもしれませんが、意外とやせていたり菜食主義の人もいるんですよね。これも糖尿病と同じように、体質が関係しています。

血中のコレステロールは食べ物によって増える場合もあるのですが、肝臓で合成される割合も多く、その時点で体質が関係してくるわけです。遺伝の場合は、家族性高脂血症といわれ、薬を使ってでも下げたほうがいいでしょうね。

私がコレステロールを下げるのに薦めているのは、大量の食物繊維をとること。1日に15~20gくらいとるのが理想です。でも、野菜からそれだけの量をとるのは、大変。その場合は、サイリウムなどの水溶性の食物繊維サプリメントを活用するといいでしょう。口から摂取したコレステロールは、食物繊維とくっつけて体の外に出してしまえばいいんです。これだけでもかなり意味があります。

日経ヘルス「健康情報」2003年秋号「誌上診察室」より

子供のダイエット

日経ヘルス

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

子供のダイエット

日経ヘルス2003年秋号

2003.10

日経BP社発行


相談

子供の生活習慣病予備軍が増えていると聞きます。わが子もかなり太り気味で、将来が心配です。それほど食べているとは思えないのですが、遺伝が関係あるのでしょうか? 太っている子の8割は太った大人になると聞きますが、何歳くらいまでにやせさせるのがいいのでしょうか?(42歳・女性)

Dr.

最近、太る遺伝子があるということがわかってきました。

常時、私たちの細胞は分裂しており、分裂した新しい細胞にどんな情報を伝えるかは遺伝子がかかわっているわけです。もちろん、親が太っていて子供がやせている場合もありますが、太る遺伝子を持っている子供は、同じ生活をしていてもほかの子供より太りやすいということは、いえるでしょうね。

では、いつまでにやせればいいかというと、早ければ早いほどいいでしょう。

脂肪細胞の数は、幼児のころに設定されたものがずっと続きますから、そのころに太っていると、大人になっていくらダイエットをしてもやせにくくなります。特に、女性はお年ごろになって太っていると、ダイエットから摂食障害になるリスクも高くなります。

発育曲線の表と子供の体重を比べてみて、標準ラインを20%以上超える場合は、病院で指導してもらうことも必要でしょうね。

糖尿病予防

 日経ヘルス

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

糖尿病予防

日経ヘルス2003年秋号

2003.10

日経BP社発行


相談

親をはじめ、親類には糖尿病を患っている人が多く、自分も糖尿病の素因があるのではないかと気にしています。また、出産した子供が4kg以上あったことから、医者にも「将来糖尿病になる可能性がある」といわれました。防ぐ方法はありますか?(34歳・女性)


Dr.

糖尿病に限らずほとんどの病気にいえるのは素因、つまり遺伝的なものと、環境が関係しているということです。そのバランスは病気によって違いますが、糖尿病の場合、素因のほうがやや多くて6対4くらいでしょうか。

素因がピストルの弾としたら、環境は引き金です。たとえ弾が入っていても、環境という引き金を引かなければ発症しません。つまり両親のどちらかが糖尿病であったとしても、暴飲、暴食を控え、適度な運動を続けていれば、糖尿病にかからずにすむか、かかるのを遅らせられるわけです。

また、こういう慢性の病気は、たとえ発症したとしても、自分の生活次第でそれ以上悪くならないようにコントロールすることも十分可能です。

予防という面からいえば、できるだけ早いうちからサプリメントでビタミンなどの基本的な栄養素を補っていれば、栄養のサイクルが良くなって、糖尿病にかかりにくいといえます。

市販薬の飲み方

 日経ヘルス

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

市販薬の飲み方

日経ヘルス2004年春号

2004.4

日経BP社発行


医者は患者を選べません。でも、患者は医者を選べるのです

相談

子宮内膜症です。月経時の痛みがひどく、市販の鎮痛薬で抑えていますが、3時間に1度くらいのまないと、痛みが治まりません。主治医は、市販の薬で痛みが抑えられるなら、のんでもかまわないといっていますが、本当に体に害はないのでしょうか。(29歳・女性)

Dr.

薬局で買える薬はOTCといって、病院で処方される薬より作用が弱く、その分、副作用の出る確率も少なくなっています。
病院で長年処方され、安全性が認められて市販薬になるものはスイッチOTCと呼ばれ、胃酸の分泌を抑えてむかつきや痛みを抑えるH2ブロッカー(商品名・ガスター10)などはその代表です。これも、医者が処方するのはたいてい20㎎ですが、市販薬は10㎎です。
 ただし、いくら作用が弱いといっても、自己判断で市販薬をダラダラとのみ続けるのはお薦めしません。説明書に書かれてある量や日数を超えてのんでも症状が治まらないような場合は病院を受診したほうがいいのです。また、自分で「何かおかしい」と思ったときは、その直感を信じるべきです。
 この方は、病院で診断名もついているのですから、そのまま市販薬をのみ続けてもまず問題はないとは思います。でも、量を増やさなければ効かない場合は、主治医に相談しましょう。
 子宮内膜症は完治しにくく、長くつきあっていかなければいけない病気ですから、主治医との信頼関係が大切です。医師の方針に納得がいかない場合は、かかる医療機関を変えてもいいかもしれません。医者は患者を選べませんが、患者は医者を選べるのです。

C型肝炎

日経ヘルス 

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

C型肝炎

日経ヘルス2004年春号

2004.4

日経BP社発行


相談

先日、友人がC型肝炎のキャリアであることがわかりました。発症すると、肝硬変や肝臓ガンになると聞き、非常に恐怖感を持っているようです。

どういう人がC型肝炎のキャリアの可能性が高いのですか。(42歳・男性)


Dr.

C型肝炎という病気がわかったのは、今からわずか15年前のこと。それまでC型肝炎を引き起こすウイルスは見つけられず、非A非B型肝炎といわれていました。そのため予防措置が遅れてしまったのです。
現在、40~45歳以上の人の約25人に1人がC型肝炎ウイルスの保持者であるという説があります。これほどまでに多くなったのは、子供のころの予防接種が原因のひとつといわれています。
というのも、昭和40年ごろまでは、学校の予防接種のとき、注射針の先をアルコール綿でふくくらいで、何人も使い回しにしていたのです。僕自身も、医者が「針の先が曲がったのでそろそろ換えなきゃな」といっていたのを覚えています。予防接種以外に、手術の際の輸血で感染したケースもあります。
C型肝炎が恐ろしいのは、ウイルスを保持している人が慢性肝炎になり、やがて肝硬変、肝臓ガンヘと悪化の道をたどることです。肝臓ガンの70~80%が、C型肝炎から発症するといわれています。
C型肝炎ウイルスはカゼなどのウイルスと違って、感染したとしても何十年もまったく症状が出ない期間が続きます。ですから、現在40歳以上の人は、一度血液検査を受けて、感染の有無を確かめておいたほうがいいでしょう。
2002年から、地域健診でC型肝炎検査が受けられるようになりました。詳細は保健所や市町村役場に尋ねてみてください。
C型肝炎には、インターフェロンというウイルスの増殖を抑える薬が有効です。この薬を早めに投与すれば、発症を抑制できたり、進行を遅らせられます。

Copyright ©2013-2018 Terashita Medical Office Allrights All rights reserved.