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[2018.8.30] スマホネック

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NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №118

 カルテ69 <整形外科、生活改善> スマホネック

 2018/7/24

 


 

「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉が、昔のテレビの歌謡番組で司会者の決まり文句となっていました。「スマホネック」という言葉を聞き、「病気は世につれ世は病気につれ」と思わず口ずさんでしまいました。病気も世情を反映するものですね。
 

(概説)

「スマホネック」は、現状では医学的病名ではなくて、一般用語として使われているようです。言葉から推察される通り、「スマホ画面を見ながら操作する姿勢を連続して長時間続けることにより、首周りの筋肉が硬くなり、慢性の肩こりや頭痛、めまいなどの症状が出現する状態」と定義して良いでしょう。
 

(原因)

その姿勢を続けることにより、「ストレートネック」と呼ばれる状態を自ら人為的に作ってしまうことが原因と考えられています。人間の脊椎は、頭の方から7個の頚椎(けいつい)、12個の胸椎(きょうつい)、5個の腰椎(ようつい)と仙骨(せんこつ)から成り立っています。頚椎は前方に凸、胸椎は後方に凸、腰椎は前方に凸の状態に湾曲(わんきょく)することにより、体全体の重さをバランスよく分散して受け止めています。
スマホを見る姿勢は前かがみで頭を前下方に向けた状態で、この姿勢が常態化すると頚椎の本来の前湾(前方向への湾曲)が消失し、まっすぐ伸びてきます。それが「ストレートネック」です。その結果、近辺を通る血管や神経を圧迫し、様々な不快症状を引き起こすことになります。なお、「ストレートネック」は従来の医学でも知られている病態です。
 

(対策)

スマホを長時間使い続ける、いわゆる「スマホ依存」の状態を避けるよう生活習慣を改めることに尽きます。スマホ依存は、スマホネックだけでなく、薬物やアルコール、ギャンブル依存症に近い精神障害を引き起こす可能性もあるということをしっかり認識したいところです。スマホは使いようによってはとても便利な道具ですが、諸刃の剣となりえます。
 

[2018.5.17] 右心不全

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NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №117

 カルテ68 <循環器内科・内科> 右心不全

 2018/4/24
 

 



(総論、原因)

心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれています。全身から心臓に戻ってくる血液は、右心房、右心室を経て、肺に送られ、酸素を取り入れ左心房、左心室を経て、再び全身に送られます。この4つの部屋のうち、右側、特に右心室の機能が低下している状態を右心不全を呼びます。一つの病態を指し、肺疾患や弁疾患などにより、肺高血圧という状態になることが原因であることが多いです。多くは慢性の経過をたどりますが、急性肺塞栓症(エコノミー症候群で有名)などにより急激に右心不全症をきたし、致命的になることもあります。
 

(症状)

下肢に多く見られる浮腫、腹水貯留による腹部膨満感、全身倦怠感、悪心、息切れなどが慢性的、進行性に見られます。肺塞栓症の場合は、いきなりショック状態となり、意識の低下、呼吸困難など致命的な状況となります。
 

(診断)

専門家による病状聴取と特徴的な理学的初見(頸動脈の怒張、肝臓の腫大、右室拍動の亢進、下肢の浮腫など)、血液のBNPの上昇などにより、本病態を推定し、その原因探索のための検査が組まれます。
 

(治療)

安静、酸素吸入、減塩などを行いながら、重症度に応じて、利尿薬、強心剤などの薬物療法を考慮します。重症の場合は、体外循環による補助が必要になることもあります。原因疾患がはっきりしている場合は、心不全に対処しながら、その治療を行います。
 

(生活上の注意)

原因となる疾患を持病としている場合は、心不全の初期の段階で治療が開始できるように定期的な検査が望まれます。また、エコノミー症候群で有名になった肺塞栓症予防の注意事項は、飛行機搭乗時のみならず、足を動かさない状態が長時間続くときなどには、普段から励行するように心がけましょう。

[2018.1. 4] 口内炎

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №116

 カルテ67 <歯科口腔外科・皮膚科・内科> 口内炎

 2018/1/4(木)

 

 



(総論)

口の中の粘膜に炎症が起こった状態の総称が口内炎です。多くの方が、一度は経験しているのではないでしょうか?口の中の傷や炎症は、唾液の作用により修復されますので、大抵の場合、市販薬や自然経過で治ってしまう場合が多いので、軽く考えられがちです。しかし、ヘルペスなどのように治療が必要なウイルスが原因の場合や全身の病気として口内炎が発生する場合があるので、2週間以上も治らない場合などは専門医に相談した方がいいでしょう。

(原因)

ウイルス、真菌、細菌などの感染性、アレルギー性、自己免疫性、悪性腫瘍などのほか、貧血、ベーチェット病、エイズなど全身性の病気の症状の一つとして発生する場合もあります。また、原因が特定できないまま治癒していく場合も多いのが現状です。

(症状)

最初は、粘膜が発赤するカタル性口内炎の状態になり、さらに粘膜が腫脹してびらん性口内炎に進み、中央が凹んで潰瘍になった状態をアフタ性口内炎と呼び、最もよくみられる状態です。食べ物がしみることが最大の症状です。

(診断)

経験豊かな専門医による視診と経過観察だけで済む場合が多いのですが、難治性の場合は、組織生検や菌培養などによる検査が必要なこともあります。また、全身性の病気の検索が必要な場合もあります。

(治療)

口腔内を清潔にし、刺激性のある香辛料などを避けるようにします。ステロイド含有の軟膏を使用すると治癒が早まります。特殊な原因による場合や、全身性の疾患の場合は、それぞれの治療を優先させます。

(生活上の注意)

いずれの原因にしろ、体の免疫力が低下している場合に発生しますので、規則的な生活、十分な栄養という日頃の基本的な健康管理が肝要です。歯磨きやうがいを励行し口腔内を清潔に保つことも大切でしょう。

 

[2017.10.31] ヒアリについての豆知識

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №115

 カルテ66 <救急科・アレルギー科> ヒアリについての豆知識

 2017/10/23(月)

 

 



〇総論〇

2017年7月3日、ニュースで「東京都大井埠頭で猛毒を持つアリが発見された」と報道され、身近に存在するアリに対して恐怖を感じている方も多いと思います。「知識は最強のワクチン」を合言葉にしている私としても、この欄をご愛読の皆様に、東京都の環境局などで発表している内容を簡単にまとめてみます。

(日本での存在、生息地)

2017年5月に兵庫県尼崎市で国内で初めて発見され、その後立て続けに東京、愛知、大阪、神奈川、福岡、広島など(9月1日現在)全国各地で確認されるに至っています。もともと南アメリカに生息していましたが、アメリカや中国、オーストラリアなどでも生息しています。

(形態)

体長は2~6mmで、赤茶色から褐色。

(毒)

主にアルカロイド系の毒素で、刺されると激痛とともに患部が水ぶくれを起こします。毒素に含まれるタンパク成分によりアナフィラキシーショックを起こした場合は命に関わることもあります。スズメバチに近いイメージを持っていただけると理解しやすいでしょう。

(治療)

スズメバチの場合と同様に医師の受診が必要です。特に呼吸困難や意識低下など重度の障害と思われたときは、虫刺されによるショック状態かもしれないということを救急隊に告げて、その対処ができる病院での治療を受けることが必須です。

(国内での蔓延の可能性)

現状では、水際での駆除を徹底していますので、心配は少ないですが、一旦広まると駆除は大変困難になります。在来のアリがヒアリの繁殖を阻害してくれることもあり、「対象を特定しない広範なアリ退治」を安易にできません。今後の報道にも注目しておいてください。

 

[2017.8. 8] 人畜共通感染症

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №114

 カルテ65 <内科・感染症内科> 人畜共通感染症

 2017/7/24(月)

 

 



〇総論〇

WHOの定義によると「脊椎動物と人との間で自然に移行しうるすべての感染性疾患」となっている。動物は家畜のみではないため、人獣共通感染症と呼ばれる傾向にあります。動物から人へ、だけでなく人から動物へ感染する場合もあります。原因となる病原体の種類は数百種類もありますが、感染の大量発生の可能性や重篤になりやすいという意味で、鳥インフルエンザなどが最近注目されています。近年では、SARSやエボラ出血熱や狂牛病などが世間を騒がせたことは記憶に新しいですし、ペストのように歴史に名を残す怖い病気もあります。

〇主な病原体〇

細菌:結核、サルモネラ、ペストなど
ウイルス:狂犬病、SARS、日本脳炎、鳥インフルエンザなど
寄生虫:アニサキス、マラリア、アメーバ赤痢、マダニなど
真菌:カンジダ、アスペルギルスなど
プリオン:狂牛病(クロイツフェルトヤコブ病)など
その他、クラミジアやリケッチア(猫ひっかき病)などに分類される病原体があります

〇感染経路〇

感染動物と直接接触、糞や尿などからの間接的接触、ノミや蚊などにより媒介される場合などがあります。

〇予防、生活上の注意〇

多種多様な病原体、感染経路があるために、確実な予防は一筋縄ではいきません。流行の兆しなどがある場合に、ニュースや政府、保健所などから発信される勧告に注意するように心がけることです。海外渡航の場合は情報収集を行い、推奨されている予防接種などをきちんと受けることが不可欠です。

 

[2017.5. 2] リレーエッセイ(Medical Tribune)

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Medical Tribune  

リレーエッセイ「時間の風景」
 
2017/2/2 
 


安心と納得の医療を求めて、医療正義を考える
 

医学部同級生の友人からこのエッセイのバトンを受け取った。昭和53年卒業だから、かれこれ40年になる。学生運動を実際に体験した最終的な学年だ。当時は学生たちによる立て看板がキャンパスに溢れ、ビラもあちこちに散らばっていた。今から思えば、乱雑な景観だったと言えるが、医学生たちは何を求めていたのか?と気にもなる。方法論の是非はともかく、医療や医学における正義を求めて、色々な形で闘っていたのであろうか?

今、「正義とは何か?」という問いかけが、医学の分野に限らず様々な分野での命題となっている。お金や権力の二極化が強まる中、本来の正義とは何か、幸せとは何か、一部の賢者が模範になろうと気になり始めた証だと期待している。

医学部出身者の進む道の多くは臨床医の道であり、少数派として基礎医学の道がある。本日は、3番目の選択肢として「社会医学」の道を伝えたい。

医療に対する日本の国民の満足度は意外と低いと感じる。不満が不安に変わり、さらに恐怖、攻撃となり医療裁判の件数が驚くほど増えた。しかし、それは、日本の医学医療のレベルが低いからではない。むしろ、日本の医学医療は世界トップレベルであり、医療保険の仕組みも世界に類をみない傑作品である。しかしシステムのどこかに問題があるから、国民は安心・満足していないに違いない。アポロ11号の月面着陸を思い起こして欲しい。1969年当時(なんと半世紀も前!)の技術を巧みに組み合わせるだけで、未来の夢が実現した。そこが仕組みづくりの素晴らしさだ。

昭和59年6月、同窓仲間らと共に、医療の仕組みづくりを通じて医療満足度の最大化に貢献しようと研究会を立ち上げた。カルテの共有システム(今の電子カルテ)や医師間遠隔相談システムなど。インターネットなど存在しない30年以上も前の話だから、今思えば時期尚早であった。後輩の医学部学生が、夜な夜な事務所に集合し、医学辞書をタイプし、ハドソンソフトから初めての医学辞書つきワープロが誕生した。「すいぞう」が「膵臓」と変換されて喝采する時代であった。

「安心と幸福をもたらすべき医学医療」の仕組みを追求していくと、ハイテクによるイノベーションも時代の流れだが、皇室の「侍医システム」という患者(クライアント)医師関係が理想だというローテクな結論に至った。高度細分化される医療環境においては、専門医とは別に、指揮者や管制官のような存在が不可欠であり、患者も含め人間的信頼関係で結ばれたチームによる医療が、医療満足度を最大化するシステムであると考えた。1990年には、自らも「主侍医倶楽部」と名付けた民間版侍医モデルの試みを始めた。

その活動の中、「医療判断学」という概念が生まれた。インフォームド・チョイスが進んだ故に、患者は選択や決断に悩む。主侍医は「医療上の意思決定の支援」のプロである。同窓後輩であり私が敬愛する故西本征央慶應義塾大学薬理学元教授の熱い依頼があり、1995年、慶應義塾大学医学部にて「医療判断学」の集中講座を開設した。最初は、「医学生の道徳教育か?」と、学生たちは感じたようだ。3日間連続の対話型集中講義として、教授以下教室員総出演し、講義後も夜遅くまでその日の学生の発言を検討して翌日の資料に反映した。その熱意が通じ、最終日には学生たちの目の色が変わってきた。「裏出欠チェックだ」と噂された授業感想文も、こちらが驚くほど充実した内容に変貌していく。ある時、学生の一人が「このような真剣な決断の支援は私にはできないかも」と医師になることに不安を訴えてきた。講師陣は慌て驚き「君みたいな人こそ医師、医学者になって欲しい」と必死に説得したことを思い出す。熱心に教育すれば学生の心に届くことを教室員一同恐ろしいほど体験した。

風変わりな授業と評されたが(ハーバードのサンデル教授の授業のようであるが、我々の方が早かった?)、授業の出席率は高く、数名の欠席者が返って目立つほどとなった。しかし、神の悪戯か、西本教授のスキルス胃癌での急逝により10年間でこの講座は閉幕となった。

今、世の中は模範となる人間像を求めている。我々、医師は色々な人たちと日常的に出会う。そして命を握っていると頼られる。さりげない模範となれるのか、その意味を噛み締めたいと自戒する日々である。

 

[2017.4.25] 下肢静脈瘤

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №113

 カルテ64 <血管外科> 下肢静脈瘤

 2017/4/24(月)

 

 



〇総論〇

一般に静脈は動脈と違い、心臓のポンプ機能や血管自らの収縮弛緩などによる強い血流はなく、心臓へ吸い上げる弱い力と、周囲の筋肉の収縮による圧迫や重力による流れが血流の原動力になっています。それでも逆流がしないように、静脈の中には弁があります。この弁の調子が悪くなったり、血栓ができ静脈の流れが滞るとその抹消側の静脈にコブができ蛇行します。肉眼的にも分かるようになりますが、主に下肢に生じやすく、それを特に下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と呼びます。

〇原因〇

妊娠や長時間の立ち仕事が原因となりますが、生まれつきの静脈走行の異常が原因となる場合もあります。

〇症状〇

目で見える静脈のこぶのような腫れ、むくみ、だるさ、かゆみ、疼痛、こむら返り、進行すると皮膚潰瘍などを起こすこともあります。

〇診断〇

ほとんどが視診、触診で診断がつきます。

〇治療〇

自覚症状も少ない軽症の場合は、弾性ストッキングによる圧迫療法と下肢の挙上や筋肉のポンプ作用を促すような運動指導で経過を見ます。外科的治療として、血管内に硬化剤を入れて閉塞させる方法と原因となる静脈を除去する方法があります。後者には従来からのストリッピング手術という血管を外科的に抜去する方法に加えて、レーザーにて焼灼する比較的低侵襲の治療法も近年保険適用になりました。

〇生活上の注意〇

長時間の立ち仕事を避けて、下肢を挙上させたり、下肢の運動をしたり、軽症のうちから弾性ストッキングを着用し悪化を防ぐことも大切です。レーザーを使った治療も進歩してきましたので、気になる症状がある場合は、専門医と早めに相談しましょう。

 

[2017.1.10] 鼻血(鼻出血)

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №112

 カルテ63  <耳鼻科> 鼻血(鼻出血)

 2017/1/4(火)

 

 



〇総論〇

鼻出血は、ありふれた症状の一つです。子供や高年者に比較的多いようです。大抵は、鼻中隔前下方からの出血で、医学的には前鼻出血と呼ばれるものです。鼻ほじりや鼻かみによる機械的刺激が原因で、微細な血管が集中するキーゼルバッハと呼ばれる部位からの出血です。その他、出血部位により鼻の奥の動脈から出血する後鼻出血や上鼻出血などがあります。

〇原因と対処方法〇

機械的刺激による前鼻出血の場合、大抵は自然に止血します。止まりにくい場合は、頭をやや前に傾け鼻の両脇を強くつまみ圧迫します。また冷やしたタオルなどで鼻を冷やすとより効果的です。
それでも止血しないときは、動脈性の出血も疑われますので耳鼻科を受診してください。また、出血傾向を来たす血液などの病気や脳梗塞や心筋梗塞の予防薬として使われる薬(血液サラサラにする薬と形容される薬)などを服用している場合なども、止血が困難な場合が多く、早めに耳鼻科受診をしましょう。繰り返し鼻出血を起こす場合は、高血圧、腫瘍、肝硬変や出血傾向をきたす全身の病気が隠れている場合もあります。耳鼻科や内科への受診をお勧めします。頭を強く打った後の鼻出血の場合は、脳底骨折などの心配もありますので、緊急的な受診が必要です。

〇緊急時の注意〇

大量の鼻出血の場合は、ショック状態になったり意識が低下する場合もあります。その場合は患者さんを横向きにねかせ、血液や血の塊を誤嚥しないように注意して、すぐに救急車を要請してください。

〇普段の注意〇

「上を向き、首の後ろを叩く」とよく言われますが、これはむしろ逆効果です。また、血液サラサラ系の薬を服用している場合は、身近な人たちにその旨を知らせておきましょう。

 

[2016.11. 2] 偏食

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 NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

 カルテ62 <偏食外来、総合診療科、心療内科など>

 2015/10

 


(総論)

今回は「偏食」というテーマを頂きました。いつもの医学的病名ではありませんので記載方法が異なりますが、健康管理においてよく使われる言葉ですので、解説にチャレンジします。多くの辞書を調べてみましたが、平均した意味合いは「好き嫌いにより特定の食品を食べなかったり、または特定の食品ばかりを多量に食べるなどの偏った食生活様式」となります。子供の頃のしつけや生活環境や時にトラウマなどにより形成される場合が多いのですが、最近では大人になってから形成される偏食も問題になっています。偏食は、文字通り偏った栄養摂取につながり、様々な病気の原因や引き金にもなりえます。テレビなどのマスコミで、ダイエットや健康増進や病気治癒のための極端な食事法が紹介されると、街のスーパーではその食材が売り切れることもあります。幸い長続きしないので、偏食に進むことは少ないのですが、中にはそのことを信奉するあまり偏食状態となります。社会的要因による偏食と言えるでしょう。「炭水化物を取らないダイエット」など、専門家の間でも意見が対立する食に対する考え方があり、結論が出るのにまだしばらくの年月がかかりそうです。

(対処)

総論でも述べましたが、「病気の原因となるようなほどの偏った食生活」であるのか「好き嫌いが多少あるが、栄養バランスは取れている食生活」であるのかの見極めが大切です。前者の場合は、もちろん補正していくべきでしょう。原因に精神疾患が関与している場合は、精神科医の指導が必要になるでしょうが、成長期に形成された偏食では、家庭での調理などにもまめな工夫が必要でしょう。専門家に相談できる場所や機会が用意されていないのが現状ですが、管理栄養士などが常駐する病院に相談するのも一法です。

「好き嫌いにより偏る」

のも、人間らしい行動なのでしょうが、「バランスをとる」というのも人間らしい行動となることを認識してはいかがでしょうか。

[2016.7.27] 秋バテ

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ58 <内科>

2015/8

 


(総論)

夏バテに呼応して秋口に体調を乱すことを「秋バテ」といつしか呼ばれるようにになりました。いずれも正式な医学病名ではありませんが、よくみられる病状を表している言葉でもあります。夏バテは暑さによる体温調節の乱れや交感神経の乱れから特に胃腸障害や熱中症という形で現れます。秋バテは、秋口の気候の変化に順応できずにさまざまな体調不良を感じる状態を指します。

(原因)

さまざまな理由が考えられますが、夏バテにより体力が弱っていることとと、急激な気温の変化や気圧の変化(主に低下)により自律神経がスムーズに対応できずに不調をきたすことが原因と考えられています。また学生は夏休みであったり、会社なども夏休みモードであったのが、本格的に稼働し、秋は一年中でも活動が活発な時期であり、そういった環境の変化にもついていけないことも原因の一つと考えられるでしょう。

(症状)

夏バテは食欲低下を中心とした胃腸障害やだるさ、疲労感が中心となりますが、秋バテも同様な症状があります。それに加えて、自律神経の乱れによる、めまいやのぼせ、不眠、気力低下など多彩な症状がでます。

(診断)

他のはっきりした疾患による症状でないかどうかの鑑別診断が大切になります。安易に「夏バテ」「秋バテ」で片付けてしまうと、ガンや糖尿病など重大な病気が隠れていることを見落とすことがありますので、じっくりと経過を見てくれる医師と相談しながら様子を見ることが大切です。

(治療)

症状が進まないうちに、十分な休養と栄養補給を中心に養生をすることが大切です。放置していると胃腸障害の悪化や肺炎など本格的な病気に発展してしまうこともあります。

(生活上の注意)

基本的なな健康管理として、快食快眠快便を保つように心がけ、暴飲暴食、夜更かし運動不足に特に留意することが大切です。いつもとは違った症状が長く続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。

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