ノエビア健康倶楽部

活性酸素による酸化ストレスが引き起こすアレルギー疾患

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

活性酸素による酸化ストレスが
引き起こすアレルギー疾患

…ゲスト…倉島一浩氏

自然派健康倶楽部

2002年春号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
倉島一浩氏

山王病院耳鼻咽喉科医長

1965年東京都生まれ。慶應義塾大学病院、国立栃木病院、東京都済生会中央病院などに勤務後、平成10年より山王病院勤務。
平成12年より現職。
専門は神経耳科。


活性酸素による酸化ストレスもアレルギー疾患を引き起こします。

寺下
免疫とアレルギーを 一口で説明するとどうなりますか。
倉島
たとえば花粉が侵入すると、生体はそれに反応して抗体という蛋白質をつくります。この抗体が生体を守るように働く場合を免疫といい、免疫が過剰に働きすぎて障害をもたらす場合をアレルギーと呼んでいるわけです。
寺下
実は私も花粉症に悩まされているのですが、花粉症になる人が最近急増しているようですね。
倉島
確かに花粉によるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎は増えており、しかも重症化と低年齢化が進んでいます。
寺下
なぜ増えたのでしょうか。
倉島
それは、日本で盛んにスギの植林が行われ、その成長がピークに達したことに加え、デイーゼル車の排気方スなどによる大気汚染が関係しています。花粉の飛散量が多い田舎より、都会にいる人の症状が悪化しやすいのは、都会の大気が汚れているからでしょう。
寺下
花粉と窒素酸化物などによる「複合アレルギー」というわけですね。
アレルギー薬が効かない鼻詰まりはレーザー治療がおすすめ
寺下
花粉症に対して、どのような治療が有効ですか。
倉島
通常は薬物療法が行われます。
内服薬としては抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬、外用薬としては抗アレルギー薬とステロイド薬が多く用いられます。ステロイドホルモンを点鼻薬として使うこともあり、局所的に働くため全身的な副作用が起こりにくいと言われています。また唯一、根本的な治療法と考えられているのが「減感作療法」です。これは感作された(過敏になった)体質を減らす(改善する)治療法で、アレルギーを起こすスギ花粉のエキスを注射で体の中に入れていきます。
寺下
外科的治療はありますか。
倉島
鼻の粘膜にレーザー光線を照射し、アレルギーの起こる場所自体を切除するという手法があります。薬物治療でも鼻詰まりが取れないという方にはおすすめです。
おなかに寄生虫がいれば、花粉症にはならない!?
寺下
花粉症を予防するためには、どういう方法がありますか。
倉島
いったん花粉症が発症すると、鼻粘膜の過敏性を抑えるために強い薬を使わなければならなくなります。そこで、花粉の飛散開始前(1月下旬~2月上旬)から飛散がなくなるまで、抗アレルギー薬を服用してもらう「季節前投与」が有効です。
 また生活上の工夫として、風の強い日には外出を控えるとか、帰宅時は服についた花粉をはたいて落とすとか、洗濯物を室内で干すということも予防効果があります。
寺下
花粉症はコップの水があふれた状態にたとえられますね。花粉に対する抗体があふれると発症し、それが続くというわけです。すると、まだ発症していない人も安心してはいられないし、花粉症になれば一生つき合っていかなければなりませんね。
倉島
老年期になると花粉症の症状は出にくくなるようです。しかし、逆に温度差に対する過敏性は老年期で出てくるので、アレルギーを起こす物質に過敏であれば、一生のつき合いになりますね。
 昔、寄生虫の感染が多かったころは、こういうアレルギー疾患は少なかったということですので、変な話、おなかにサナダムシでもいると、免疫の働きがそちらに集中し、花粉症などの症状は出てこないかもしれません。
寺下
今、世の中は清潔になり過ぎて、免疫の出番が少ないから、花粉やダニに目クジラを立ててしまうということですね。
アレルギー症状を起こす酸化ストレス
寺下
ゴルフ場で発見したことですが、調子よくプレーしているときは花粉症の症状は出ないのに、OBを打ったとたんにくしやみが出たりするのです。これはどういうことでしょうか。
倉島
体調とアレルギーは大いに関係があります。前の晩、寝不足だったり、すごくストレスがたまっていたり、疲れている時期は、アレルギー症状が強く出るということがあるのです。これには、ストレスによる自律神経の問題やホルモンバランスが関わっていると思われます。
寺下
ストレスで動脈硬化が促進されますが、アレルギーにもストレスが関与しているわけですね。
倉島
たとえば喘息では、活性酸素による酸化ストレスによって粘膜の障害を来して、過敏性が惹起されます。同じアレルギー疾患であるアレルギー性鼻炎でも、患者さんの呼気中の一酸化窒素濃度が上がっていることがわかっています。一酸化窒素が毛細血管の拡張を引き起こし、それが鼻詰まりにつながっていると考えられます。
寺下
「活性」と付くと、いい酸素みたいな気がしますけど、英語では「ラディカル」ですから、「過激な酸素」と言ったほうがいいかもしれませんね。
倉島
そうですね。ただ、活性酸素には組織を障害するという悪い面がある一方、殺菌という良い面もあるわけです。いわば両刃の剣の働きをしていますから、バランスよく活性酸素の濃度がコントロールされているというのが一番いいのではないかと思います。
寺下
しかし現代人はそのバランスを崩す食生活をしていますね。
倉島
インスタント食品は、活性酸素を非常に発生しやすいと言われており、それがアレルギー性疾患を生み出す状況をつくっています。ですから、そういったものは余り食べ過ぎない方がいいと思います。
寺下
抗体があふれないように、日頃から花粉に接しにくい生活をし、ストレスを避け、体を酸化しすぎない食生活を心がけることが大切ということですね。

肥満が引き起こす弊害と上手な解消

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

肥満が引き起こす弊害と上手な解消

…ゲスト…間宮康喜氏

自然派健康倶楽部

2002年夏号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
間宮康喜氏

1953年浜松市生まれ。岐阜大学医学部卒業。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員助教授、浜松赤十字病院内科副部長(肥満外来)等を経て、1994年一般内科の他に、肥満治療を専門に行う病院として間宮内科クリニックを開院。

浜松医大非常勤講師。平成4年、肥満治療研究で浜松市医療奨励賞受賞。


肥満は生活習慣病やひきこもりなど、身体と心の両方にダメージを与えます。

寺下
肥満とは医学的にどういう状態なんでしょうか。
間宮
肥満度を測る物差しとしてBMI(Body Mass Index)という体格指数が広く用いられていますが、身長と体重だけでは肥満を正確にとらえることはできません。 体脂肪分布(皮下脂肪と内臓脂肪の比率)や体脂肪率を含めた評価が必要であり、BMIが25以上の肥満でも医学的に減量を要する状態とは限りません。 たとえば大相撲の寺尾関は身長186cm、体重116㎏で、BMIは33・5と高いのですが、体脂肪率は25%以下なのです。つまり、寺尾関は除脂肪体重(主に筋肉、骨)が多く過体重ではあるが、肥満ではないのですね。事実、寺尾関の血圧、コレステロール、中性脂肪などは正常で、肥満に伴う合併症は全くありません。ですから、脂肪の絶対量がどうであったかということと、りんご型肥満(内臓脂肪型肥満)とか洋なし型肥満(皮下脂肪型肥満)といった脂肪の分布によって、合併症の出方に大きな差が出てくるわけです。
肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症は「死の四重奏」
寺下
内臓脂肪型肥満のほうが合併症を起こしやすいようですね。
間宮
体脂肪は皮膚のすぐ下(皮下脂肪)か、肝臓や胃腸などが納まっている腹腔内(内臓脂肪)に蓄えられます。
一般的に、太る時はまず内臓脂肪がたまり、その後に皮下脂肪が蓄積されます。  日本人の場合、皮下脂肪がたまる前の、内臓脂肪が蓄積した段階で、糖尿病や高脂血症、高血圧症などの生活習慣病にかかりやすいといわれています。
 内臓脂肪型肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症の4つの条件が揃うと、血管の動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こして寿命を縮めることになるため、「死の四重奏」と呼ばれています。太ってはいないがおなかがぼっこり出ているという人は要注意ですね。
寺下
皮下脂肪型肥満の人は、問題はないのですか。
間宮
もちろん皮下脂肪の絶対量が多くなれば、過体重という形で非常に負担になり、腰痛や膝の痛みの原因になってきます。こういう痛みは人間の意思とかやる気を非常に殺いでしまいます。また女性の方に多いのですが、太ってしまった自分の容姿を気にするあまり、うつ傾向になったり、外へ出たくないといった引きこもりの状態に陥ることもあります。このように身体と心の両方に、肥満はダメージを及ぼすのです。
過度なダイエットは摂食行動障害を引き起こす
寺下
世の中にはさまざまなダイエット法が喧伝されていますが、間違ったダイエット、良いダイエットを教えて下さい。
間宮
肥満を解消しょうと摂取カロリーを減らしたとき、低カロリー=低栄養(低たんばく、低ビタミン、低ミネラル)になってしまう人が非常に多いのです。その結果、体調不良を起こしたり、脱毛、肌荒れ、口内炎など、皮膚・粘膜が荒れやすくなります。極端なケースになると、女性では貧血、生理不順、骨租軽症になったりします。低カロリーに抑える場合、やはりサプリメントを効果的にとらないと、低栄養を防ぐことは難しいでしょう。日本糖尿病学会や日本肥満学会で指摘されていることですが、1600キロカロリー以下に抑えると、普通食だけでは低栄養になりやすいといわれています。
寺下
過度なダイエットを続けることで、摂食行動障害を引き起こすこともあるようですね。
間宮
やせなくてはいけないという強迫観念は女性に強く働いているようです。そういう女性は、日中は精神的に大変強く緊張しています。この緊張というのがくせ者でして、本当は食べたいんだけれども、周りの目も気になるし、やせなくちゃいけないし、ということで無理をするわけです。しかし自宅に帰った途端に緊張の糸が切れて、わけもわからず食べ続け、その後で喉の中に指を突っ込んで吐くなど、過食・拒食の問題を引き起こしたりするのです。
寺下
素人判断で過度なダイエットをするのは禁物ですね。
間宮
 よくないですね。飢餓感に耐えるとか、おなかが空いているのに無理して自分の克己心で乗り越えていくというダイエットは、長期的にうまくいきませんから、普通食とVLCD(Very Low Calorie Diet=超低カロリー食:医薬品)を上手に組み合わせるのが、我々が一般的におすすめする減量食事内容です。
ダイエットしていても、満足感があるということは非常に重要です。やせなくちゃいけないという意識が過剰になると、食事をする楽しみをあえて無視することになり、精神的に不安定な状況を起こす大きな原因になるような気がします。
「無理なく」「長く」が食生活改善のポイント
寺下
例えば、インドで古くから美容と健康の素材として重宝されてきたギムネマ(ガガイモ科のつる性植物、ギムネマシルベスタの主成分)などが、肥満解消に役立つといわれています。
こうしたダイエット補助食品について間宮先生はどうお考えですか。
間宮
肥満を解消するためには、食生活を改善し、適度な運動を心がけることが大切ですが、長続きしなくては意味がありません。
ダイエット補助食品をとることで食生活を改善できるなら、それはダイエットを長続きさせ、リバウンドを最小限に抑える効果的な方法の一つといえます。
寺下
これだけやっていればいいというような「偏りダイエット」を避け、栄養のバランスを考えながら、肥満を解消することが大切だということですね

21世紀は、「分析の医学」から「総合の医学」へ

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

21世紀は、「分析の医学」から

「総合の医学」へ

…ゲスト…奥田拓道氏

自然派健康倶楽部

2002年秋号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
奥田拓道氏

愛媛大学名誉教授・医学博士

1936年福岡県生まれ。
九州大学医学部卒業。
徳島大学医学部付属酵素研究施設酵素生理部助手、同助教授、愛媛大学医学部助教授を経て、1977年同学部医化学第二教室教授。
2001年3月定年退官。
本年4月より熊本県立大学環境共生学部教授。
愛媛大学名誉教授・医学博士。


21世紀は、「分析の医学」から「総合の医学」へ変わるでしょう。

寺下
現代医学とサプリメントの関わりについてどうお考えですか?
奥田
今までの医学、西洋医学と言ってもいいですが、常に「悪い所を除去する」という方向で進化してきました。これは外科的分野でも薬学的分野でも同じで、研究して悪い所を見つけだして除去する、すなわち「分析」の医学でした。
例えば抗ガン剤などは、ガン細胞を攻撃して消滅させるという発想のものですが、これによってガン細胞だけでなく宿主(人間)までも弱らせてしまう問題がある。これが副作用というものです。
 これからは、そういったことも踏まえて、もっと総合的見地から医学を考える時代だと思います。
分析して外部から排除するだけでなく、宿主本来が持つ治癒力を高めていくような研究がもっと重要になってくるでしょうね。
寺下
先生は、以前はキトサンの研究をされていたと聞きましたが、アガリクス茸に関心を持たれた理由はなんでしょうか?
奥田
ガンに対する抵抗力を持つNK細胞を活性化させるものとしてβ・Dグルカンという物質が知られています。
これは腸管に露出したNK細胞を活性化させますが、決して内部に吸収はされません。キトサンも同様にNK細胞を活性化しますが、やはり腸管の内部までは浸透しませんので、ガンを縮小させるには抗ガン剤と併用する必要がありました。
ところが、同じくβ・Dグルカンを含むものとして知られているアガリクス茸の場合は、単独で「抗ガン剤+キトサン」と同じ効果を見せたんです。これはβ・Dグルカンだけでは説明できない効果で、一体この力は何だろうということで、愛媛大学の木村善行博士の協力を得て実験を重ねたところ、アガリクス茸に含まれる『アミノ酸誘導体』が血管新生(ガン細胞が自己の周囲に血管を生成し増殖する作用)を阻害するはたらきをすることが確認されました。
寺下
つまり、アガリクス茸自体にガン細胞を攻撃する作用があるというわけですね。
奥田
そうです。このことは近々学会でも発表される予定です。
先人の知恵

育成された土壌を見極めるのが、よいアガリクス茸に出合うポイントです。

奥田
面白い話がありまして、普通キノコは収穫すると日干しにしますよね。そうすることでビタミンDが増えて身体によいとされています。ところがアガリクス茸は収穫してそのまま日干ししておくと真っ黒に変色してしまうんです。ですから収穫したらすぐに熱風をかけて乾燥させてしまうのです。
寺下
すぐドライヤーをかけないと自然融解してしまうそうですね。
奥田
はい。
ところが、これまでの研究で、キノコは紫外線に当てておくとガンに対する有効成分が変性してしまうことがわかったんです。
つまり今のアガリクス茸の収穫法は、それの持つガン抑制効果を損なわないという意味で理想的だったわけで、これがアガリクス茸が他のキノコよりもすぐれている理由でもあるのです。
このような研究結果がわかる以前から、人々はこうした収穫法をしていたわけですから、まさに先人の知恵というわけですね。
よいアガりクスの見分け方
寺下
いろいろなアガリクス製品がありますが、良い製品を見分ける基準などはありますか?
奥田
今回発見された『アミノ酸誘導体』などについては、アガリクス茸が育つ土壌が非常に重要になります。
具体的にいうと、マグネシウムと鉄分。これが土壌に十分に含まれていないと、アガリクス茸の中で有効成分が生成されません。
通常、農作物を育てる場合、窒素・リン酸・カリ といった養分は十分に与えますが、マグネシウムや鉄分を供給することを心がけているような所はなかなかないようです。逆にいえば、そうした土壌や、製品における『アミノ酸誘導体』などの含有量をきちんとチェックしているかというのが重要になってくるといえるでしょう。ノエビアなどのように、そうしたことをすでに実践しているところもあります。またノエビアの場合は、独自の製法で前述のβ・Dグルカンとは違う多糖タンパク複合体のみを抽出・配合し、腸管での吸収を可能にして、さらに免疫増強・抗ガン効果を向上させていることも注目に値します。
こういったことも製品選びのポイントにするといいと思います。
サプリメントと医療を結ぶ

代替医療の考え方の普及をきっかけに「総合的医学」の分野が発展すればいいですね。

寺下
今後の医療とサプリメントの関係はどうなるとお考えですか?
奥田
今までは、ガンならガン細胞だけを見てきましたが、今後は「宿主対ガン」という観点になるでしょう。
抗ガン剤も、ガン細胞を殺すのではなく、宿主の治癒力を高めるようなものが主流になると思います。さらには「アガリクスにはどの抗ガン剤を併用するのが効果的か」といった研究もなされていくべきでしょう。
 今回アガリクス茸に新たな有効成分が見つかったように、サプリメントには、成分だけを抽出した薬品には無い効果が秘められているといえるし、それがサプリメントの研究の重要なところなのです。

これからは、代替医療も視野に人れた健康相談ができるドクターが必要

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

これからは、代替医療も視野に人れた

健康相談ができるドクターが必要

…ゲスト…鈴木信孝氏

自然派健康倶楽部

2002年冬号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
鈴木信孝氏

金沢大学大学院医学糸研究科・補完代替医療学講座 研究室長 医学博士

香川l県出身。
1981年防衛医科大学卒業。。
1987年金沢大学医学部大学院修了。。
アメリカをはじめ海外で栄養補助食品として広く用いられているデヒドロエビアンドロステン(DHEA)の基礎研究で医学博士を取得。
恵寿総合病院産院院長等を経て、1994牛に金沢大学医学部講師(産婦人科)となり、2002年3月から補完代替医療学講座研究室長を兼務し現在に至る。
2001年より日本補完代替医療学会理事長。
ハルピン医科大学客員教授を併任。
補完代替医療分野でも特に、機能食品群の臨床応用や基礎的研究を行なっている。


これからはさまざまな分野がカを合わせて研究を重ねることが大切です。

寺下
鈴木先生は「日本補完代替医療学会」の理事長をされていますが、私はこの 「補完」という言葉が素晴らしいと思いました。
鈴木
最初は「日本代替医療学会」だったんですが、この 「代替」という言葉が、「取って代わる」というイメージがあるようで、一般の医師の方達から敬遠されてしまうことがあるんです。代替医療の目的は、サプリメントを利用して現代西洋医学を補いながら治療効果を高めていくことですから、お互い連携を取りながら進んでいかなくてはなりません。
最近のアメリカでの調査結果で、成人の約4割が代替医療を利用していることがわかりました。そのうち約半数が医師に相談せずに利用しているということです。日本でもほぼ同じような割合で代替医療を受けている患者さんがいると思われます。この現実を見ますと、われわれ医療従事者が、医師の立場で適切なアドバイスが出来るような態勢をつくる必要があります。そのためには、一般の医師の方にも受け入れやすい名称の方がいいということで、「補完」という言葉がつきました。
寺下
専門的に研究する機関も増えてきたようですね。
鈴木
アメリカでは現在ホワイトハウスで代替医療政策委員会というものをつくり、全米規模で調査を開始しています。日本でも厚生労働省の主導で、ガンと代替医療について調査を始めましたし、多くの学会も開かれるようになりました。金沢大学の方で 「補完代替医療学講座」 というものをつくっているのですが、そちらへの問い合わせも多くなっています。しっかりとした研究が必要な時期に来ているということです。
寺下
先生はハト麦の研究をなさっているそうですが。
鈴木
10年くらい前から研究を始めました。興味深いのは、ハト麦に限らずですが、ひとつの成分だけを抽出して薬をつくったとしても、決して同じような効果は得られない。その食品の持つさまざまな成分が相互に影響しあって、より高い効果が生まれるのです。これが自然の食品の優れたところではないでしょうか。
寺下
他の学会や研究者の方とも幅広く交流されているようですね。
鈴木
これからは、いろいろな視点から研究することが必要です。うちの講座でも農学系や統計学など、多彩な分野の研究者が参加しています。分野横断型の研究が大切なのです。そこで今、注目されているのが大豆です。
寺下
女性の更年期で大豆イソフラボンが注目されていますね。
鈴木
そうです。HRT(ホルモン補充療法)という治療法が医療現場で行なわれています。これは、エストロゲン(女性ホルモン)を投与することによって、更年期障害を抑えるというもので、現在広く普及して効果も出ています。しかし最近、逆に乳ガンや脳卒中などの発生率が増加するという報告もありました。
 一方この大豆イソフラボンですが、これに含まれ成分の一部が、女性ホルモンと同様のはたらきを持つことがわかっています。エストロゲン(女性ホルモン) と同じように更年期障害の緩和に効果があるとされています。更年期障害の独特の症状として、ほてり (ホット・フラッシュ) があります。これは真冬でも扇風機が欲しくなるくらいに顔がほてったりするのですが、大豆イソフラボンは、このほてりを抑制するはたらきがあることが報告されています。また、骨密度を増やすはたらきもあるので、骨折や骨粗しょう症の予防にも役立つでしょう。かつ、HRT(ホルモン補充療法)のように乳ガンなどの危険率が上昇することはないとも考えられています。また動脈硬化を予防するはたらきも報告されています。
欧米に比べてアジア人の乳ガンや前立腺ガンの発生率が低いのは、大豆をはじめとする豆類の摂取量が多いからではないかと考えられています。またアルツハイマーの予防や美肌・美白にも効果があるのではないかと、現在研究が進められているところです。
寺下
まさに 「現代西洋医学を補完する」研究ですね。今後の代替医療はどういう方向に進むとお考えでしょうか。
鈴木
「分野横断型」の研究を促進し、さまぎまな見地からサプリメント等を分析していく。それにより患者さんに対して、専門家としてしっかりとアドバイスができるようになるわけです。そのような態勢をつくっていくことが、まさに 「補完代替医療」ではないでしょうか。

ブルーベリーの機能について

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

ブルーベリーの機能につい

…ゲスト…堀井敬一氏

自然派健康倶楽部

2003年春号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
堀井敬一氏

1953年 東京農工大学農学部農芸化学科卒業。

農林水産省農林物資企画調査会専門委員を歴任。

日本プラント協会コンサルタントとしてパプアニューギニア調査、全国清涼飲料工業会技術部幹事、ソフトドリンク技術資料編集委員幹事等を歴任。
現在日本ブルーベリー協会会長。


寺下
堀井先生は「日本ブルーベリー協会」の会長をされていますが、ブルーベリーというとイギリス空軍パイロットの話が有名ですね。
堀井
そうですね。ブルーベリーは一般的に目にいいといわれていますが、そもそも注目されるきっかけとなったのは第二次世界大戦中イギリス空軍に「撃墜王」と知られたパイロットがいたんです。彼は薄暗い上空でも敵機が鮮明に見え、迎え撃ちました。他のパイロットと違ったのは、彼はブルーベリーが大好物で食事のたぴにパンと同じくらい厚塗りしたブルーベリージャムを食べていたんです。その後彼の特殊な視力について研究が進められ、ブルーベリーの成分にその秘密があったことが判明したわけです。
寺下
具体的には、ブルーベリーのどういった成分が目の健康に効果的なんでしょうか。
堀井
ブルーベリーの美しい青色は「アントシアニン」という色素で構成されています。このアントシアニンが視覚に関係するはたらきをします。目はものを見る際、見たものを電気信号に変換し、脳に送り、知覚するというサイクルを持っています。この電気信号への変換の際関与するのが網膜内にあるたんばく質「ロドプシン」です。ロドプシンは目に入った光で分解されるので目を酷使すると再合成が追いつかず弊害が生じます。アントシアニンにはそのロドプシンの再合成を促進し、活性化するはたらきがあります。この再合成が活発になることで、視覚の機能がよくはたらき、夜間の視力もよくなり、視野が広がるという効果があらわれます。
 また私たちの目にはピントを合わせるはたらきの水晶体があり、アントシアニンはその水晶体の厚みを調節する筋肉「毛様体筋」内の血流をよくするはたらきもあります。血流をよくすることで目の疲れも緩和されるわけです。これが目にいいとされるゆえんです。
寺下
速効性もあるとお聞きしましたが。
堀井
そうです。アントシアニンを摂取すると4時間後くらいから体感できるほどの効果がではじめ、24時間ほどその効果が持続します。ブルーベリーが根強い人気を持ち続けているのは、消費者の方が現にその効果を体感なさっているからではないでしょうか。特に情報化社会で多くの方がパソコンを使用して目を酷使され眼精疲労に悩まされております。時代が目によいものを求めていると感じております。
寺下
アントシアニンは海外ではすでに医薬品として用いられているとうかがいましたが。
堀井
1960年頃から臨床試験が繰り返され、イタリアで初めて25年前に医薬品としての製造承認がなされました。その後ニュージーランド、スペインなどで用いられています。アントシアニンは目への有効性だけでなく様々な機能が確認されています。毛細血管を広げ、かつ強化して血流をよくし、血小板凝固を抑制することで血をサラサラにする、コラーゲン基質を強化する、さらに関節の炎症の治療にも有効であること等が研究で明らかにされています。こうした人体への総合的な効果が医薬品として用いられている理由でないかと思います。
寺下
ところで、生のブルーベリーは依然、消費者の間で高価なものという認識があると思うのですが。
堀井
そうですね。国内生産は年間1千トンで、加工用原料としては主に輸入に頼っているのが現状です。みかんの国内生産180万トンと比べても、きわめて少量です。これには果実を摘むのに手間がかかること、いたみやすいこと等の原因があります。しかし、その機能の高さを、ひとりでも多くの方に知っていただきたいと考えています。
寺下
素晴らしいですね。ブルーベリーの成分のそのような機能をより多くの方が知って一般家庭に普及すると、日本人の平均寿命もますます長くなるのではないでしょうか。
堀井
そのとおりです。健康のバロメーターとしての目への効果、それ以外の優れた数々の機能性は、過酷な現代社会に生きる私どもの健康維持に大いに役立つものであると確信しております。

脳の栄養素ホスファチジルセリン

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

脳の栄養素ホスファチジルセリン

…ゲスト…矢澤一良氏

自然派健康倶楽部

2003年夏号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
矢澤一良氏

1972年京都大学工学部工業化学科卒業。東京大学より農学博士号を授与。

2000年湘南予防医科学研究所設立。

2002年東京水産大学大学院ヘルスフード科学講座教授。

2000年湘南予防医科学研究所設立。

「痴呆症、うつ、ADHDに克つホスファチジルセリン」(ハート出版)ほか著書論文多数


脳の栄養素ホスファチジルセリン

脳の健康は、身体全体の健康につながります
寺下
早速ですが、矢澤先生はなぜホスフアチジルセリンという成分に注目されているのですか。
矢澤
はい。ホスファチジルセリンという物質はそもそも人間の脳内にある物質です。脳は人間の生命をつかさどる重要な器官です。脳が病気になると身体のさまざまな器官に障害がでてきます。つまり、脳の健康を考えることが身体全体の健康を考えることになるという観点から研究を進めてきたわけです。欧米でもここ30年間、ホスファチジルセリンが脳内にあるということから、多くの研究者がなにか人間の身体にいい働きをしているのではないかと考え、こぞって研究を進めてきました。
脳の機能障害に対する決定的な治療薬はいまだ存在せず、薬でうまく調整するのは難しい。そこで毎日の食生活で脳に十分な栄養を補うことで過酷な現代社会の環境に負けない脳をつくるというアプローチが必要なわけです。ホスファチジルセリンに私が注目いたしますのは、脳の健康を考えることが身体全体の健康を考えることに直結するということから、当然なわけです。
寺下
脳機能改善食品というわけですね。ホスファチジルセリンの具体的なはたらきをうかがえますか。
矢澤
はい。脳は、他の器官とくらべて食べ物の栄養素が届きにくい器官です。反面、脳のエネルギー消費は他の器官に比べて格段に活発です。普通の食事からでは脳の健康を保つには不十分であるといえます。ところが、この大豆から採れるホスファチジルセリンは脳まで届く栄養素なんです。脳の中のホスファチジルセリンは、体内で作りだすことはできません。ですから毎日の食事から摂取しなくてはいけないのです。多くの学会発表・研究論文でもその作用が科学的に解明され、アルツハイマーの患者の症状を改善する、脳の老化を抑制して機能を促進する、不安感を解消しストレスに負けない精神をつくる、といった効果が確認されています。脳の中でも特に重要な大脳の活動を維持させますので、ストレスからくる身体への悪影響を正常化させるわけです。
寺下
近テレビや雑誌などで取り上げられるADHD(注意欠陥多動性障害)にもこのホスファチジルセリンが有効であるとうかがいましたが。
矢澤
そのとおりです。この病気は落ち着きがない、不注意などが大きな特徴とされ子供だけでなく、大人にも認められているものです。皆さん「片付けられない女性」のお話は聞かれたことがあると思います。怠けているわけではなく、このADHDが原因で毎日の日課を忘れてしまうのです。このADHDの発生原因はまだ解明されていませんが、アメリカでホスファチジルセリンの大量投与が有効であったという研究例もあります。まだまだ脳は未知の世界ですが、ホスファチジルセリンが脳のメカニズム解明の助けとなることを期待しておりす。
寺下
ホスファチジルセリンと併用することで、相乗効果が期待できるようなものはありますか。
矢澤
DHAとイチョウ葉エキスが特におすすめです。DHAは魚の目に多く含まれる脂肪酸ですが、脳の神経細胞の活性化に効果的です。また、イチョウ葉エキスには脳の血管拡張作用があります。これらと併用することで、脳細胞に対してより良いはたらきが期待されます。これからの食品・サブリメントの摂取を考えるとき、単品で効果的なものでも、他の食品・サブリメントと併用することで身体により良い効果をもたらしてくれることがあるということを認識していただきたいと思います。
寺下
食べあわせということは昔からいわれてきましたが、サプリメントも食品なので、当然当てはまるわけですね。栄養の組み合わせで予防医学的に健康を考えるというコンセプトはこれから非常に大切にしていかなくてはなりませんね。
矢澤
そのとおりです。病気になったときに、効果的な治療はなにかと考えることは大切ですが、それ以上に、いかに病気にかからない健康な身体をつくっていくかということが大切だと思います。そしてここでもう一度強調させていただきたいのは、健康な身体を保つためには、それをつかさどる脳の健康を大切にしていただきたいということです。

環境ホルモンとたたかう栄養素スピルリナ

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

環境ホルモンとたたかう

栄養素スピルリナ

…ゲスト…黄堂泰昌氏

自然派健康倶楽部

2003年秋号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
黄堂泰昌氏

スピルリナ研究所代表取締役社長 理学博士

同志社大学工学部工業化学科卒業
渡米、カリフォルニア州立大学(サンタクルーズ校)大学院修士課程修了〈有機合成化学)
その後、渡英、オクスフォード大学大学院ダイソンペリンズ研究所にて、有機生物化学の研究に従事、オリゴヌクレオチド及び遺伝子の人工合成などをテーマに理学博士学位を修得
財団法人日本健康栄養食品協会評議員
CRN JAPAN理事


環境ホルモンとたたかう栄養素スピルリナ
寺下
スピルリナと聞くと、あの緑色の小さな粒をみなさん連想されると思います。黄堂さん、いったいスピルリナとはどのような食品なのか教えていただけますか。
黄堂
はい。スピルリナは今から35億年もの昔から生きつづけている藻類の仲間です。大きさは0.4ミリメートルとたいへん小さく、らせん状(スパイラル)であることからスピルリナと命名されました。魚介類なども生息できない高アルカリ性の塩水湖で育ち、現代では考えられない非常に強い太古の紫外線にも負けず、今日まで生きつづけてきました。
寺下
すごい生命力ですね。ところで、人がスピルリナを摂取するようになったきっかけは何だったんでしょうか。
黄堂
アフリカにチャド湖という湖があります。一人のヨーロッパ人学者が、その湖の周辺に定住する原住民の健康状態がとてもいいことを発見しました。たどっていくと、彼らはスピルリナをいつも食べていたそうです。それから、スピルリナはヨーロッパに持ち込まれ、全世界に広がるサブリメントとなりました。1960年代半ばには国連の食糧会議でも、人の健康への有効性が認められた、国連が推奨する食品でもあるんです。
寺下
具体的に、どのようにすぐれた食品であるかお話していただけますか。
黄堂
はい。一言で言いますと、スピルリナは人間に必要なほとんどすべての栄養成分をバランスよく含んでいるということです。まず、良質のたんばく質があげられます。また、カルシウムやマグネシウムといったミネラル類、ビタミン類が豊富に含まれています。とくに、ビタミンB12は通常摂りにくいビタミンですがこれも豊富に含まれているのです。つまり、人の健康の土台を支える栄養成分がまんべんなくスピルリナには含まれているわけです。
寺下
まさに、「生命」に効く食品というわけですね。それでは、何か特定の目的のために摂る食品というわけではないんですか。
黄堂
そうですね、人の存在自体を支える栄養素をバランスよく含んだ食品ですから。ただ、スピルリナは臨床的にもいろいろな効果が証明されています。糖尿病などの生活習慣病を改善する効果など多くの研究成果が認められているだけでなく、摂取した脂肪や糖質の吸収をおだやかにするという理由から、アメリカでは’70年代にダイ工ットに役立つ食品として紹介され、サプリメントとしての地位を確立しました。また、肝臓の機能向上に効果的であるということがわかっています。あの濃い緑色のスピルリナには青い色素のフィコシアニンが含まれ、この成分はたんばく質の消化吸収を促し、肝臓のはたらきを助ける役割と脂肪を分解するはたらきがあるのです。豊富に含まれるガンマリノレン酸は飲酒などで疲れた肝臓を健康にする役割があります。高たんばく、高ミネラル、高ビタミン食品が肝臓の病気にはとくに必要だといわれていますが、そういったことからも、スピルリナは理想的というわけです。アメリカ航空宇宙局(NASA)でも、スピルリナの研究がとても進んでいて、驚異的な生命力と光合成によって酸素をたくさんつくりだす点が注目されて、ほかの惑星での栽培計画もあるそうです。
寺下
まさに栄養の宝庫といったスピルリナですが、最近、環焼ホルモン(ダイオキシン)を排出する食品として注目されていると聞きましたが。
黄堂
はい。ダイオキシンはみなさんご存知のように、工業用品などの製造過程で産み出される有害化学物質で、そのほとんどが食べ物を通じてわたしたちの体内に蓄積されていきます。長期間蓄積されると発ガン物質になるといわれる怖いものです。また、免疫力を弱め、ぜんそくやアトビーの原因になるともいわれています。この環境ホルモン(ダイオキシン)を体外に排出するのに注目されているのがスピルリナに含まれる緑色の色素クロロフィル(葉緑素)です。ラットを使った福岡県環境保健研究所の実験では、餌に混ぜてスピルリナを与えられたグループが、スピルリナを摂取していないグループよりも、約4倍も多く体外ヘダイオキシンを排出しているという結果がでました。この結果は、食品の中でも最も多くのダイオキシンの排出を促進するとのことです。太古の昔から、過酷な自然条件の中で生きつづけてきたという事実が、スピルリナのもつ、有害物質からの驚異的な防御機能を証明しているのではないでしょうか。
寺下
その恩恵をわたしたちが、受けられるのはとてもすばらしいことですね。
黄堂
そうですね。先人の知恵というわけではないですが、わたしたちの祖先よりもずっと昔からこの地球上に存在したスピルリナから私たちがもらう身体の健康ははかりしれないものだと思います。まずは、スピルリナで健康の土台をつくることが大切だと思います。

肝臓を健康に保つ食事法

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

肝臓を健康に保つ食事法

…ゲスト…林 茂樹先生

自然派健康倶楽部

2003年冬号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
林 茂樹氏

国立病院東京災害医療センター副院長/東京大学医学部消化器内科非常勤講師

1971年東京大学医学部医学科卒業
1988年東京大学医学部第一内科医局長
1991年国立病院医療センター内科医長
1993年国立国際医療センター第二消化器科医長
2000年国立国際医療センター総合外来部長

所属学会:日本内科学会評議員、日本消化器病学会財団評議員、日本肝臓学会評議員、日本診療録管理学会評議員、日本肝癌研究会幹事、日本消化器衝撃波療法研究会幹事など。
著書:「肝臓病-正しい知識で早期発見・有効治療」〈梧桐書院)、「ホーム・ドクターシリーズ 気になる病気が快」(梧桐書院)「名医図解健診結果の見方・読み方」(PHP研究会)


肝臓を健康に保つにはバラエティに富んだ栄養を摂取し、その上で障害軽減にはたらく栄養素の摂取も考えましょう。

肝臓が有効にはたらくためには、たんばく質やビタミン、ミネラルを始め、さまざまな栄養の補給が不可欠です。
肝臓が心配な方にはさらに解毒や肝機能を保つ栄養補給も大切といえるでしょう。

障害を見つけにくい臓器なので定期的な検査をおすすめします
寺下
本日はよろしくお願いします。まず、肝臓は「大いなる静かなる臓器といわれています。「大いなる」というのは、人間の臓器のなかでももっとも大きい臓器ということですね。
そうです。身体全体を支える効率のよい臓器といえます。
肝臓は生きていくために必要な成分を、食事から摂取した栄養からつくりだす「一大工場」です。それだけでなくアルコールや食品漆加物などの有害なものを解毒して体外に排泄します。
食べ物から吸収・合成した栄養成分を蓄えておく機能もあります。
余分な糖分をグリコーゲンに変えて貯蔵し、血糖値が下がったときはグルコースに変えて使います。鉄もそうです。「静かなる」ということでいうと、余力が大きい臓器なんですね。
寺下
つまり少々傷んでもサインが出てこない。それで障害に気がつかないということがいわれますね。
肝臓のトラブルが重くなると黄疸が出ます。その前にお小水が濃くなるので気がつくということがあります。さらにその前の段階ですと、ちょっとだるいとか食欲が落ちたり、吐き気が出たりということがあります。でもこれは、ほかの原因でも起こることですし、いつか治るだろうと見過ごす方が多いですね。しかし、一晩たっぶり寝ても回復しなかったり、長引くようだったら肝臓の状態を疑ったほうがいいでしょう。初期の軽い状態では、血液検査や超音波検査で調べないと見つけにくいですから、40才を過ぎたら定期的に検診なさることをおすすめします。
40歳以上の女性の間で脂肪肝と診断されるケースが増えています
寺下
最近、女性の非アルコール性の脂肪肝が話題になっています。あまりお酒を飲まないのに障害を起こしてしまうという。
これは肥満体の女性に起きやすい病気です。放っておくと肝硬変にもなるので危険です。また、一般的には女性の場合、お酒を飲んでも男性の半分くらいの量で酔うし肝臓を悪くするといわれています。女性は胃の粘膜にアルコールを代謝する酵素が少なく、そのまま腸から体内に吸収されて血液に入ってしまいます。だから早く酔うわけです。
寺下
一般に酒量の多い方は肝臓障害を起こしやすいわけですが、安心して飲める量の目安はあるんでしょうか。
診断される先生、体質によって違いがありますが、男性の例でいうと、積算のエタノール量が1トンぐらいで肝硬変になります。1日日本酒を3合、ビールなら3本、ウイスキーでW3杯を20年飲み続けるとその量になります。だから3合が飲み過ぎで2合が安全圏でしょうか。それで週に2日くらい飲まない日をつくることですね。
バラエティに富んだ食事 と肝臓にはたらく栄養を摂りましよう
寺下
食事で肝臓障害を予防するには、どういうことに気をつけたらよいでしょうか。
バラエティに富んだ食事は必要最低限のことでしょうね。特に一家の食事をつくる女性が気をつけないといけません。加工食品メインの献立ばかりだと家族みんなに影響します。日本食がいいですよ。たんぱく質が多く摂取でき栄養バランスがすぐれています。肝臓はたんぱく質を材料にしていろいろなものをつくっていますし、体内に運んでいます。ですから、たんばく質を摂ることが大切です。並びにビタミンやミネラルも必要です。
寺下
肝機能向上が期待できるといわれるウコン。またマリアアザミやコエンザイムQ10なんかが注目されていますね。
最近は外来でもサプリメントについて質問なさる方が大勢います。みなさん興味があるようです。マリアアザミの有効成分のシリマリンは昔から生薬として使われていましたし、コエ ンザイムQ10は治療面で利用され薬理作用もはっきりしています。
システインを含有した酵母エキスなんかも注目されていますね。アミノ酸の一種で肝臓の解毒作用にもからんでいます。こういったものは、確かに普段の食事では摂りにくいということもあります。ただ、あくまでも毎日の食事に気をつけなくてはいけません。栄養が偏ると歪みが蓄積されて将来影響が出ます。
寺下
日本食を中心に食事をしっかり摂る。その上で、ウコンやマリアアザミ、コエンザイムQ10などのサプリメントの利用も考えられるということですね。今日はどうもありがとうございました。

基本を守ることが体脂肪を減らすベストな方法

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

基本を守ることが

体脂肪を減らすベストな方法

…ゲスト…野坂和則氏

自然派健康倶楽部

2004年春号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
野坂和則氏

横浜市立大学大学院総合理学研究科運動・スポーツ科学教室助教授医学博士

1981年東京学芸大学教育学部卒業。
1983年東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了(教育学修士)
1995年博士(医学)横浜市立大学より。
1989年~1991年マサチューセゾソ州立大学運動科学部研究員。br /> 所属学会:日本体力医学会評議員、日本運動生理学会評議員。


バランスの取れた食事と適度な運動という基本を守ることが体脂肪を減らすベストな方法

「太っている」「痩せている」の指針として重要なのは体重よりも体脂肪率。摂りすぎた栄養は体脂肪として体内に蓄積されます。体脂肪が増えすぎない生活を心がけましょう。

日常の細切れの運動でも脂肪燃焼に効果はある
寺下
野坂先生の専門は運動生理学、特に筋肉、肥満の予防、減量ということで、まずは人間が太っていく、すなわち体脂肪が増えていくメカニズムを教えてください。
野坂
健康な人間が太るメカニズムは結局、摂取と消費のバランスです。摂取より消費が少なければ、余分は全て「貯金」として身体にたまっていきますが、その貯金のほとんどは脂肪です。仮に1日当りの摂取エネルギー量が消費エネルギー量よりも100キロカロリー多い場合、体脂肪1g当り約7キロカロリーなので1日につき約14gの脂肪がたまる計算になります。それ自体はたいした量ではなくても、同じ生活を続けていると、1か月で約400g、1年で約5㎏の体脂肪が増えることになります。逆に、摂取エネルギー量よりも消費エネルギー量を1日当り100キロカロリー多くすれば、理論的には1年間で5㎏くらいの体脂肪を減らすことができるわけです。
寺下
それには摂取を減らすか、消費を増やすか、ですね。
野坂
消費でいいますと、人間が1㎞歩くためには、体重1㎏当り約0.7キロカロリー使われます。50㎏の人が1㎞歩くと35キロカロリー、約3㎞歩けば100キロカロリーのエネルギー消費があると考えられます。3㎞を歩数に換算するとおよそ5000歩ですから、そのくらい1日当りトータルの運動量を増やせばいいんです。たとえば、近場ならば歩いていく、エレベーターやエスカレーターを使わない、リモコンを使わずに立ち上がって操作するなどこまめに動く…いろんなことを「非効率的に」やるとエネルギー消費は増えます。
寺下
よく20分~30分間、連続して運動しないと脂肪は燃焼しないといわれていますが。
野坂
それは誤解ですね。われわれは安静にしている時でもエネルギーの約半分は脂肪、もう半分は糖質から得ています。常に脂肪は使っているんです。トータルとしてエネルギー消費量が高ければ、運動後に脂肪が使われたり、食べた分がたまりにくくなったりするので、結果的には同じなんです。
寺下
これは朗報ですね。ジョギング中は信号待ちでも足踏みしていなければいけないと思っていた方も多いでしょうし、30分間続けて運動する時間がないと、ダイエットにならないからと運動しなくなってしまう方もいるでしょう。
野坂
体力作りには持続した運動も必要ですが、単に脂肪を燃焼させるだけならば、1分とか細切れでも、トータルとして運動量を多くしていけばいいんです。
バランスのよい食事で基礎代謝を落さない
寺下
エネルギー摂取の面から体脂肪を減らすポイントはありますか。
野坂
まず基本ですが、糖質とたんばく質は1g=4キロカロリーのエネルギー量なのに比べ、脂肪は1g=9キロカロリーです。脂肪がたくさん含まれた食品はカロリーが高いので控えたほうがいいといわれるのはそのためです。ただ、食べる量が少なすぎると筋肉が落ち、基礎代謝が落ちる可能性も高い。すると、安静時の代謝も下がって、たとえ体重は減っても太りやすい体質になってしまう。
寺下
つまりは、偏ったダイエットはせず、脂肪をおさえた食事を楽しみつつ適度な運動をするのがベストということですね。それをサポートするものとして、さまざまなサプリメントや健康食品があるわけですが、糖尿病の患者さんはよくギムネマ茶は糖分を下げるといって飲んでいますね。ギムネマくらい歴史的に長く使われているものには、経験的根拠はあると考えてもいいでしょう。
野坂
糖質や脂肪の分解を促進したり、腸管で吸収を抑制する成分があれば、理論的には脂肪の蓄積を防ぐことになる可能性はあると思います。私もアカショウマの脂肪吸収抑制・分解の効能について今度データを取ってみようと考えているんですよ。また、体重1㎏当り1g程度のたんばく質の摂取は必要ですが、この量を食事で摂ろうとすると、一緒に脂肪も摂ってしまいがちになるので、たんばく質だけを摂取したい場合には、サプリメントを併用する例もありますよね。
寺下
食事と運動を基本にバランスがとれたダイエットを補助する意味でサプリメントは研究の価値が多いにありますね。

腸のはたらきを助ける成分

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

腸のはたらきを助ける成分

…ゲスト…光岡知足先生

自然派健康倶楽部

2004年夏号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
光岡知足先生

東京大学名誉教授 農学博士

1930年生まれ。千葉県出身。
1953年、東京大学農学部卒。
専攻は細菌分類学、微生物生態学。同大学院博士課程修了。
「腸内菌叢の系統的研究」で1988年に日本学士院害を受賞するなど腸内細菌学の世界的権成。理化学研究所主任研究員、東京大学教授などを経て、現在、日本学会事務センター理事長、日本ビフイズス菌センター理事長。著書に『腸内細菌の話』『腸内クリーニングの驚異』『老化は腸で止められた』『健康長寿のための食生活』ほか多数。


食事やサプリメントで乳酸菌やオリゴ糖などを積極的に摂取し、「腸内環境」を改善しましょう

人間の消化活動には消化器の運動や消化酵素だけでなく、体内にすみついている細菌(バクテリア)が重要な役割を果たしています。その仕組みと腸内健康法についてお話いただきましょう。

腸内には100種100兆個もの細菌が棲息して健康状態に影響を与えている
寺下
医学で消化管について学ぶと、かつては大腸というのはあまり役に立っていないとされていました。小腸で栄養分を吸収し、大腸では水分を吸収するだけと。ところが、光岡先生をはじめとする研究者のおかげで、そうではないことがだんだんわかってきました。
光岡
大腸内には種類にして約100種、数にして100兆個もの細菌が棲息し、これは小腸の100倍~1000倍の数になります。腸内細菌のひとつで、乳酸菌(善玉菌)の一種であるビフィズス菌はオリゴ糖や乳糖といった消化しにくい糖類を好んで食べて分解し、乳酸と酢酸を作る。つまり、大腸では、水を吸収するのと同時に、そうした乳酸や酢酸などの栄養分も吸収されるわけです。ただし、腸内細菌の中には腐敗物質や発ガン性物質などはたらき方によっては身体に有害な物質を作り出してしまう細菌(悪玉菌)もいます。年齢を重ねるとビフィズス菌などの善玉菌が減り、ウェルシュ菌など悪玉菌が増える傾向があります。健康を保つためには腸内細菌のバランスを取ることが大切ですね。
寺下
光岡先生のおっしゃっている「腸内年齢」「腸内環境」というのは、主に大腸のことですか。
光岡
そうですね。「腸内環境」がよくなるというのは、腸のPHを下げ、弱酸性に保つということ。それを日常生活で判断するのに最も重要なのが便の色や固さなんです。腸内のPHが低いほど便は黄色っぽく、高いほど黒っぽくなります。赤ちゃんの便はPH4.5~5.5(酸性)なので、黄色い。健康な大人はPH5.5~6.0くらいで、黄土色をしている。7.0(中性)を越すと茶色っぽくなり、8.0(弱アルカリ性)くらいになると黒っぽくなります。大腸菌、ウェルシュ菌などの腐敗菌、いわゆる悪玉菌は、アルカリ環境を好んで発育し、PH6.0以下だと発育しにくい。逆に、いわゆる善玉菌のビフィズス菌が増殖すると腸内のPHが0.5くらい下がり、それにより悪玉菌が少なくなるんです。
「腸内環境」をよくする乳酸菌、オリゴ糖、食物せんいを摂取しましょう
寺下
おなかの健康のために、たとえばヨーグルトをたくさん食べたり、オリゴ糖を摂ったりするとよいといわれますが、摂取した乳酸菌がそのまま腸で活躍するわけではないそうですね。
光岡
はい。ヨーグルトの中の乳酸菌が腸内で増殖して腸内環境をよくするわけではないんです。乳酸菌を摂ると、もともと自分の腸内に持っている乳酸菌が増えるんです。乳酸菌FKなどは、体内のビフィズズ菌を増殖させる効果が高い。また、よくある誤解として、食物せんいがビフィズス菌のエサになるように思われていますが、これも間違い。ビフィズス菌のエサになるのはオリゴ糖などの糖類で、食物せんいではない。消化できない食物せんいは塊となって腸への物理的な刺激になり、ぜん動運動を促すんです。つまり、食物せんいを摂ると便を早く出してくれる。すると、腸内で時間をかけてゆっくり発育するウェルシュ菌などの悪玉菌の増殖が抑制され、結果的にビフィズス菌など善玉菌が増える。逆に、便秘をして腸内に便がたまっていると悪玉菌が増え、美容にも健康にも悪い影響を与える。そういう仕組みなんですね。
寺下
腸内環境を整える食品やサプリメントには、ほかにもケフィア、大豆乳酸菌など、いろいろなものがあり、製剤はカプセル、顆粒など形状もさまぎまですね。
光岡
そうですね。願粒のものはスティックで目安となる量を摂っていただければいいでしょう。ヨーグルトなら1日に200gくらい食べるといいのではないでしょうか。
寺下
腸内細菌は医学的にも注目され、今後もさらなる研究が期待されるジャンルですね。

大豆イソフラボン

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

大豆イソフラボン

…ゲスト…久保田芳郎先生

自然派健康倶楽部

2004年秋号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
久保田芳郎

キッコーマン総合病院院長(医学博士)

1974年東京大学医学部卒業。同大付属病院、都立墨東病院、都立駒込病院などに勤務し、1988年より米国クリーブランドクリニック・リサーチ・フェロー。1993年、キッコーマン総合病院外科部長を経て、1996年より同院院長。現在、日本大腸肛門病学会評議員、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医、日本消化器病学会指導医、日本人問ドック学会評議員などを兼務。


大豆イソフラボンは更年期障害の緩和、乳癌の予防が認められています。

大豆イソフラボンとは大豆に含まれるフラボノイド(植物色素の-種)で、女性ホルモンに似たはたらきをします。大豆イソフラボンを摂取するとどのような効果があるのか、お話いただきましょう。

大豆イソフラボンは女性ホルモンの不足にも過剰にも効果がある
寺下
日本では昔から味噌、豆腐、醤油などさまざまな食品に加工された大豆が食べられてきましたが、大豆イソフラボンの機能性は近年、世界的に注目されているそうですね。
久保田
そうなんです。昨年、4日間にわたってアメリカのオーランドで「大豆(イソフラボン)の生理機能に関する国際会議」というのが開かれ、世界中からさまざまな研究成果が持ち寄られました。
寺下
とりわけ大豆イソフラボンの「女性ホルモン様作用」は興味深いですね。
久保田
ホルモンが作用するためには、細胞の表面にある受容体にホルモンがくっつかなくてはならないんですが、大豆イソフラボンは受容体にくっついて、女性ホルモンと似た作用をするんです。しかし、あくまで「女性ホルモン様」で、女性ホルモンと同じではない。だから、大豆イソフラボンを摂っても血中の女性ホルモン濃度があがってくるわけではありません。
寺下
女性ホルモンのなかでもエストロゲンに似たはたらきをするそうですね。
久保田
はい。大豆イソフラボンのなかのゲニスティンという物質が、エストロゲンと構造が非常に似てるんですね。ゲニスティンはある時は補うはたらきを、またある時は抑制するはたらきがあるんです。ですから、女性のエストロゲンが低下することによって起こる更年期障害などの疾患に対しては、女性ホルモンを投与したのと同じような形で作用して症状を緩和します。逆に、女性ホルモンが過剰な方がかかりやすい乳癌・子宮体癌などの疾患に対しては、女性ホルモンが受容体にくっつくのをブロックしてガンにかかりにくくすることも期待されています。
寺下
相反した二つの機能をあわせもっているとは、非常に面白い。今日のポイントですね。
骨粗しょう症や肥満の予防など大豆イソフラボンの機能はさまざま
久保田
大豆イソフラボンに含まれるゲニスティンは、要は「いいとこどり」なんですよ(笑)。更年期には早期と晩期があって、早期には、ほてり・のぼせ・発汗・動悸・冷え性、自律神経失調症のような連動神経障害などの症状が出ます。それらの諸症状を緩和するために、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲストロン)を投与するホルモン補充療法というのがありますが、乳癌・子宮体癌・子宮筋腫などの発生率が高くなる副作用があります。すでにそれらのガンにかかっている人にはもちろん使えません。ところが、大豆イソフラボンならば、安全です。
寺下
更年期の晩期や、逆に更年期より前の若い方にも、大豆イソフラボンは効果がありますか。
久保田
女性ホルモンは骨の代謝に関係していて、閉経を迎えて女性ホルモンが減ってくると、だんだん骨密度が下がり10年~20年後には骨粗しょう症になる可能性が高くなってきます。また、閉経期には悪玉コレステロール値が上がる症状も現れやすくなります。それらに対してもイソフラボンは効果があるという研究結果が出ています。若い女性については、無理なダイエットで栄養状態が悪く、骨密度が低くなっている方も多いので、そういう方に大豆イソフラボンはよいでしょうね。またPMS症候群といわれる月経前のイライラや精神不安などへの作用も期待できるでしょう。
寺下
食生活で大豆イソフラボンを効果的に摂るにはどのような食品がよいでしょうか。
久保田
吸収しやすいのはアグリコンという形になっているイソフラボンです。アグリコンは発酵食品、特に味噌に一番多く含まれていますが、味噌は塩分も多いので、摂りすぎはよくありません。そうしたことを考え合わせると、やはりサプリメントで摂取するのがいちばんいいでしょうね。
寺下
なるほど。今後は医師も医薬品だけでなく、サプリメントもうまく使えなくてはいけない時代になりそうですね。

黒酢

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

黒酢

…ゲスト…林 輝明先生

自然派健康倶楽部

2004年冬号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
林 輝明先生

(財)東洋医学国際研究財団 理事/中宮長●中国長春中医学院 名誉教授/薬学博士

大阪生まれ。1948年、大阪薬学専門学校〈現大阪大学薬学部〉卒。 大阪薬学専門学校助手、大阪大学医学部薬学専門科助手として、薬品分析などの研究に従事。さらに、国立予防研究所で研究生として抗生物質の研究にあたる。1967~73年まで、大阪大学薬学部生薬学教室研究員として生薬学を専攻。1976年、大阪大学より、薬学博士号を授与。その後、近畿大学東洋医学研究所講師として、東洋医学の研究を続ける。現在、財団法人教育文化研究所理事、財団法人東洋医学国際研究財団評議員などを務めるかたわら、全国各地での講演や執筆活動などに幅広く活躍中。著書に「からだに効く食材調理図典」(小学館)「若さを保つ食べもの学」(光雲社)ほか多数。


黒酢はアミノ酸やクエン酸を豊富に含んだ栄養価の高い食品です

最近は空前の「アミノ酸ブーム」ですが、アミノ酸のはたらきなどの基礎知識は意外と知らないものです。アミノ酸は体内でどんな役割を果たしていて、どのような食品から摂れば効果的かを、寺下先生と東洋医学の権威である林先生にお話いただきました。

20種類のアミノ酸が10万種類もの人体のたんばく質を作っています
寺下
ここ数年「アミノ酸」が大変人気ですが、そもそもアミノ酸とは、どういうはたらきをする成分なんでしょう。
身体の約60%は水分で、残り40%のうち半分がたんばく質。血液もホルモンも酵素もすべてたんばく質です。そのたんばく質を形作るための部品の役割をするのがアミノ酸。アミノ酸は全部で20種類ですが、その組み合わせによって、10万種頬ものたんばく質になるんです。
寺下
20種類のアミノ酸のうち「必須アミノ酸」というのはどういうものですか。
アミノ酸は、肉や大豆といった食品のたんばく質が体内で分解されて作られます。ところが、20種頸のアミノ酸のうち9種類(考え方によっては8種類)は、体内で合成できないので、そのままの形で摂取しなければいけません。それが「必須アミノ酸」なんです。
寺下
必須アミノ酸は肉、卵などのほか、どういう食品から効果的に摂取できますか。
まずお酢ですね。黒酢や白酢など、米から作った酢(米酢)というのは、とても栄養価が高いんです。アミノ酸はもちろん、クエン酸などの有機酸も豊富です。それは米酢の製造過程に秘密があって、まず始めに米の澱粉質に麹菌がはたらいて甘酒(糖類)ができます。次に糖類に酵母菌がはたらいてアルコールができ、さらにアルコールに酢酸菌がはたらいて酢ができる。3段階もの発酵を経て作られているんです。
寺下
今は酢にもいろいろあるようですが。
なかでも栄養価が高いのは、昔ながらの製法で半年間熟成させた黒酢や白酢です。一方、醸造用アルコールに酢酸菌だけをはたらかせて作った醸造酢や合成酢などは栄養価が低いんです。
アミノ酸とクエン酸の組み合わせが疲労回復に効果をもたらします
寺下
なるほど、アミノ酸は黒酢など米酢で取るのがいいんですね。近年のアミノ酸ブームでは、アミノ酸単独での機能が注目されているようですが、どういう効果があるんでしょうか。よく肥満防止にいいといわれていますが。
数種類のアミノ酸を用いたドリンク等がありますが、一部のアミノ酸だけで痩せることはありません。脂肪を分解してエネルギーに変えるリパーゼという酵素を活性化するアミノ酸がありますが、それを飲むだけで痩せるわけではありません。栄養補給にはなりますけどね(笑)。
寺下
脂肪の燃焼には当然、運動が必要ですからね。では、BCAA(分岐鎖アミノ酸)なども話題ですが、アミノ酸の疲労回復機能はどうでしょう。
人間は運動をすると、乳酸という成分ができ、排出されます。しかし、激しい運動をすると乳酸の排出が追いつかなくて筋肉のたんばく質と結合して乳酸たんばくを作りだし硬直させます。それがだるいとか、疲労の原因になっているのです。
黒酢等の米酢には、クエン酸などの有機酸が16種類と豊富に含まれ、これが乳酸の排出を促進してくれるのです。またアミノ酸は、代謝を活性化させる酵素などの栄養源となり、貧血や疲労がたまるのを防ぐ効果があります。
寺下
米酢は、アミノ酸とクエン酸の両方で疲れを取ってくれるんですね。
米酢は胃の壁を刺激して消化液を出すので食欲増進作用もあります。殺菌力があるので、食中毒を防ぐ。夏場には特にいいですね。また、黒酢のアミノ酸は皮フの形成に役立ち、老化色素を減らすはたらきもあるので、美容にもいい。
寺下
1日どのくらいの量を摂るといいという目安はありますか?
純米酢なら15ccですね。料理に入れてもいいし、飲んでもいい。蜂蜜など果糖を加えると酸っぱみが消えます。牛乳に入れてかき混ぜてヨーグルトみたいにして食べるとか、それを冷凍庫に入れてシャーベットにするとかね。
寺下
いろんな栄養成分が豊富に入っている黒酢は毎日の料理に使って食べるのが理想的ということですね。

アレルギー

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

アレルギー

…ゲスト…小幡徹先生

自然派健康倶楽部

2005年春号

「自然派健康倶楽部」編集室


 …ゲスト…
小幡徹先生

東京慈恵会医科大学助教授

1949年東京都生まれ。1972年東京教育大学理学部卒。植物生理化学専攻。筑波大学生物科学系準研究員、東京慈恵会医科大学付属研究部助手、アメリカ合衆国国立衛生研究所国立ガン研究所分子生物学部門(リサーチフェロー)、東京慈懸会医科大学医科学研究所生化学研究部講師、同大DNA医学研究所分子細胞生物学研究部門講師を経て現職。日本アレルギー学会会員、日本医用マススペクトル学会会員、日本生化学会会員。日本内分泌学会会員、日本補完代替医療学会会員、Society for Leucocyte Biology会員。アメリカの生化学関係の医学誌に総説2編を発表。


バラ花びらエキスにはアレルギーの症状を抑える効果があります。

今や国民病ともいわれるほど多くの人が苦しみ、また、さまざまな種類があるアレルギー。アレルギーが起きる仕組みと症状を緩和する方法について、アレルギー研究の第一人者である小幡先生と寺下先生にお話いただきました。

アレルギーが起きるおおもとの原因はまだ解明されていない
寺下
まずはアレルギーが発生する仕組みからご説明いただけますか。
小幡
「望まない形で現れる身体の防御反応」というのが一番わかりやすい説明かと思います。
人間には、外から入ってくる異物(細菌やウイルス)から身を守るため、異物を異物として認識して無毒化したり、外に追い出す仕組みがあります。それを「抗原抗体反応(免疫反応)」といいます。これは人体にとって大切な機能ですが、過剰に反応してしまうと、耐え難いかゆみ、涙、鼻水などの症状が出ます。それがアレルギーと呼ばれるものです。最近ですと、花粉、家の建材が出すガス、食べ物、金属などさまざまな要因のアレルギーが起きています。これらは昔では考えられなかったアレルギーです。
寺下
そうしたアレルギーが起きる理由、増えている理由はわかっているんですか?
小幡
体内でどのような反応があってアレルギーが起きるのかという、メカニズム自体はくわしくわかってきています。しかし、どうして過剰に反応してしまうのかというおおもとの原因は、まだはっきりとはわかっていないんです。電磁波や食品添加物など、アレルギー増加の原因ではないかと考えられる要素は多岐にわたり、仮説もさまざまです。
寺下
先生はアレルギーと活性酸素の関係にも注目されているそうですね。
小幡
活性酸素は、アレルギーと関係が深いようです。活性酸素というのは、普通の酸素がほかの物質と結びつきやすい状態になったもので、免疫反応で異物を無毒化するなど、適量であれば身体にプラスに作用します。しかし、多すぎると、ほかの細胞を変質させたり破壊したり、老化を早める原因となります。そして、過剰な活性酸素は身体全体にダメージを与え、アレルギーを起こしやすくします。
現代は過剰に発生する活性酸素への対応が必要だと思います。
ピクノジェノールの抗酸化力とバラ花びらエキスのアレルギー症状の緩和
寺下
先生はアレルギーに対してサプリメントを使った検証実験もされているとか。
小幡
はい。まず、穀物発酵抽出エキス・バラ花びらエキス・ピクノジェノールを含んだサプリメントの摂食実験では、ヒトの体内の酸化レベルを下げ、結果的にアレルギー症状を緩和する可能性のあることがわかりました。
体内で生成される酸化化合物の量を測定したところ、このサプリメントを利用したグループでは、酸化化合物の量が少なくなったという結果が出ています。
現在は、ピクノジェノールがどの細胞にはたらきかけて酸化レベルを下げるのかなど、細胞レベルでの検証が待たれています。
寺下
これとは別に、バラの花びらの抽出物のサプリメントでの実験結果を教えて下さい。
小幡
はい。これは、ヒトの体内の「マスト細胞(炎症物質を蓄えた細胞)」に、抗原に反応した抗体を作用させると、ヒスタミンなどのアレルギーの諸症状を引き起こす炎症物質が放出されるというメカニズムを使って調べてみました。このとき、バラ花びらエキスを使うと、炎症物質の放出.が抑えられることを、新たに明らかにしました。
寺下
ただ、アレルギーは症状を緩和することはできても、何が原因で近年急激に増加しているかはまだわかっていないんですね。
小幡
細かなプロセスを調べていくうちに、どうしてアレルギーが起きてしまうのかというおおもとの原因に結びつくと考えています。
寺下
アレルギー急増に直接関わっているのは何か、解明が待たれるところですね。
小幡
はい。現状では、重症ならば医者の処方する薬を使って治すのが第一だと思いますが、軽症の場合にすぐ抗アレルギー剤を飲むということは私はあまりおすすめしません。アレルギーを予防するには、やはり体質を変えるのが一番だと思います。
理想的なことをいえば薬でなく、正しい食生活で健康的な身体になることです。しかし、それだけでは足りないところをサプリメントみたいなもので補ってやり、アレルギーになりにくい身体を作ってあげる必要があります。
寺下
足りないところをサプリメントで補うという考え方ですね。

ADHD

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

ADHD

…ゲスト…平山 諭氏

自然派健康倶楽部

2005年夏号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
平山 諭氏

倉敷市立滝期大学専攻科保育臨床専攻教諭

臨床発達心理士/学校心理士

1956年佐賀県生まれ。1984年筑波大学大学院博士課程心身障害学研究科単位取得。倉敷市立短期大学保育科専任講師、同大保育学科助教授、同大保育学科教授を経て現職。同大附属図書館長兼任。専門は発達臨床学。ADHD児童の環壊対話キャンプを主宰。独自に開発した環境対話法に基づくプログラムを考案。スクールカウンセラーとしても活動。著書に『ADHDを救う愛の環境コントロール』(ブレーン出版〉『親と教師のためのADHD・ASを変える環境対話法』(麗澤大学出版会〉ほか多数。


ホスファチジルセリンはADHDの不注意傾向を軽減させるはたらきがあります

ここ数年、子供だけでなく大人にも見られる症状としてADHD(注意欠陥多動性障害)に対する関心がさらに高まっています。ADHDを人間関係や食品といった広い意味での「環境」で改善する方法を提唱されている平山諭先生に、サプリメントについてうかがいました。

ADHDは「特性」ですが生活に支障をきたすなら改善しましょう
寺下
ADHDは、日本語で「注意欠陥多動性障害」と訳されますが、その特徴についてうかがえますか。
平山
ADHDには3つの特徴があります。まず、忘れっぽくて不注意であること。これを不注意タイプまたはADタイプといいます。2つ目は多動、つまり落ち着きがないこと。3つ目は衝動性。我慢できない、しゃべりすぎるなどです。 2つ目と3つ目を多動性・衝動性タイプ、もしくはHDタイプといいます。これら2つのタイプを合わせてADHDといっています。
寺下
ADHDは治療が必要な「病気」なんでしょうか。
平山
基本的には、本人や周りが困っているかどうかでしょう。あまり困っていないならば「特性」として捉えることもでき、例えばADHDの「集中できない」という特徴は、いい換えると「ひらめき型」とも表現できます。
寺下
エジソンなど歴史上の偉人もADHDだったのではないかといわれていますね。ただ、社会に適応できずに困るケースもあるようですが。
平山
トイレに行って手を洗うと、鞄を置いてきてしまったり、スカートをはかずにコートを着て出かけてしまうなどというケースがあります。勉強や仕事に支障をきたすこともいろいろとあり、病気といえるかどうかはわかりませんが、脳機能の問題として捉えるなら、軽度の発達障害ということもできますね。
脳を育てる食事をしサプリメントで補えばADHDは改善されます
寺下
ADHDの仕組みや原因はわかっているのですか。
平山
人間の行動や感情・意思などを司る、脳の「前頭葉」での神経伝達物質のはたらきに問題があるのではないかと考えられています。
寺下
先天性、後天性という点では、どうですか。
平山
遺伝的な要因もあるとされていますが、社会や家庭など広い意味での環境も大きく影響していると私は考えます。前頭葉は、うれしいことや楽しいことを経験したり、考えることをしないと活発にはたらきません。近年の工業化、情報化で生活が便利になり、前頭葉が使われなくなってきたため、ADHDが増えているのではという説もあります。文部科学省のデータだと、小中学生の5~7%、男女比だと約4:1~9:1の比率で男性に多く見られます。小学校ではクラスの半分くらいの男子はこの傾向を持っているのではないかと考えています。
また、ADHDに限らず、子供たちを見ていて「対人関係をはじめとして、常に不安を感じている傾向」が強いことを私は重要視しています。
現代の人間関係や生活習慣がADHDの増加に深く関わっている。つまり「文明が文化を破壊した」ということですね。
寺下
確かに、現代社会にとって「不安」は重要なキーワードですね。ADHDを改善する方法としてリタリンという薬が効果的とききますが。
平山
確かに、ADHDの方の中には生活する上でリタリンが必要な方がいらっしゃるのは事実ですが、リタリンは脳を治すのではなく、ごまかすという感じですし、安全性にも疑問の余地はあります。それよりも、環境を変えることで脳を変えていこう、というのが私の発想の原点なんです。それにはポイントが2つあります。ひとつは、人と人の関わり方。周りがどんな表情、言語活動をするかということです。前頭葉というのは、希望のある言葉、見通しのある生活といったもので活性化するんです。ですから「叱って正す」よりも、「自分の行動に気づかせる」ように心掛けます。もうひとつ重要なポイントは、脳にいい食べ物をとるということですね。
寺下
具体的には?
平山
ADHDに関係する前頭葉の神経伝達物質のはたらきをよくするには、チロシンなどのアミノ酸。これはチーズ、たけのこなどに含まれています。HDタイプに二次的によく見られる不安傾向や攻撃性を軽減させ、キレにくくするには、DHAがいいですね。
寺下
平山先生は、ADHDとサプリメントの研究もされていらっしゃいますね。
平山
私の実験では、ホスファチジルセリンという物質が、ADHDの不注意傾向を軽減させるはたらきがあることがわかりました。これもやはり前頭葉での神経伝達物質のはたらきをよくするようです。私が行ったのは小学生を対象にした実験ですが、大人への効果も期待できます。
寺下
サプリメントとして国内では食品として扱われているものでも、海外では薬として使用されているものもありますね。
平山
老人性痴呆などに効果があるとされるイチョウ葉エキスは、ドイツでは薬として扱われていますね。ただ、サプリメントはもともと食品なので、化学薬品よりも自然だし、副作用がなく効果がじんわり現れるのがいいですね。
現代は、満腹感は得られても、必要な栄養素を十分にとれていないことが多いので、脳を守る、あるいは、脳を育て直すためには、こういったサプリメントをうまく利用することは必要でしょうね。

免疫力をアップしてガンと戦う

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

免疫力をアップしてガンと戦う

…ゲスト…鈴木達夫先生

自然派健康倶楽部

2005年秋号

「自然派健康倶楽部」編集室


 …ゲスト…
鈴木達夫先生

北里研究所メディカルセンター病院医療環境科学センター長・研究部長

北里研究所病院院長補佐・診療枝術部担当・総合サービス担当・危機管理担当

北里大学客員教授

1967年、北里大学卒業後、慶応大学医学部細菌学教室佐々木正五教授(初代医学部長)に師事し、腸内細菌の重要性について研究する。1975年より、九州大学医学部生体防御研究所免疫学教室野本亀久雄教授(前臓器移植学会理事長・現臓器移植ネットワーク副理事長)のもとで、感染免疫学、生体防御学について学び、その後、1978年に感染予防の研究では世界三大研究所である北里研究所の病院に入所する。感染対策や丸山ワクチン、クレスチン等の各種免疫賦活剤の生体防御機能向上効果に関する研究を行い現在に至る。


アガリクス茸の多糖タンパク複合体は、免疫力を高める効果が期待されています

免疫力を向上させるサプリメントはさまざまな疾患に有効に作用するといわれています。特にアガリクス茸に含まれる多糖タンパク複合体には免疫力を高め、アミノ酸誘導体はガン細胞の血管新生を阻害するはたらきが期待されています。免疫賦活剤研究の第一人者である鈴木先生にお話をうかがいました。

ガンは自分自身の細胞が起こす病気だから難しい
寺下
ガンは日本では特に忌み嫌われる病気のひとつです。まずはガンのメカニズムについて簡単にご説明していただけますか。
鈴木
自分自身の細胞が、なんらかの因子(発ガン物質)による刺激を受けてコントロールがきかなくなり、無限に増殖を始める。それがガンです。ガン細胞がどんどん増えていくには栄養が必要なので、ガン専用の血管の造成(血管新生)が非常に早く起こっていきます。そして、たとえば食道にガンができると物を食べたときにつかえて、刺激を受けたガンは炎症や出血を起こすというように2次的に物理的な障害が起きるのです。ガン細胞は血管に入り込んで勝手に転移して、身体中いたるところで増殖を繰り返します。これが外部から体内に入ってきた異物であれば、ブロックしようという機構がはたらくのですが、ガンは自分自身だから攻撃しにくく、どんどん増えていってしまう。だからこそ早期発見がいちばん大事なんですね。
寺下
ガンが現れやすい年齢というのはありますか。
鈴木
ふつう皆さんが、成人病検診などで人間ドックヘ行く年齢は40代半ば~50歳くらいですよね。
なぜかというと、80年前後といわれる寿命のちょうど2分の1くらいのところで、自分の身体を監視し、病気から身体を守ってくれる「免疫機能」が衰えてくるんです。ガンはそれまでにも身体の中で発生しているのかもしれませんが、それを抑制していた機能が衰えることによって、成長してしまうのです。ちょうど40歳くらいから、監視機構が弱くなって、健康を害する悪者を攻撃する免疫細胞の活性が低下するのです。つまり40代くらいからが発ガンの可能性が高いともいえるでしょう。
免疫力は年齢とともに低下しますが、なんとか下げないで一定レベルで保てないか、もしくは免疫力の落ち方を緩やかにできないか、という研究がされています。
多塘タンパク複合体は善玉菌と一緒に摂ると効果的
寺下
ガン患者はガンそのもので亡くなるのではなく、7割程度は2次的な感染症で亡くなるそうですね。
鈴木
ガンが発生すると急激に免疫力が低下しますが、手術や化学療法、精神的なストレス、食欲の低下などでさらに落ちてしまう。すると健康体では悪影響を与えないような感染力の弱い菌でも「日和見感染」によって死に至る。免疫力を高いレベルで保つことができれば、ガンの予防につながるだけでなく、こういった感染症を防ぐこともできます。それには現代医学だけでなく、健康食品などを組み合わせて、全体的なバランスでの治療が必要だと考えます。ただ、健康食品は口から摂るものである以上、安全でなくてはいけないし、品質が一定じゃないといけない。
寺下
免疫力を高める健康食品として、鈴木先生は、アガリクス茸に注目されているそうですね。
鈴木
はい。アガリクス茸の多糖タンパク複合体に免疫購活の効果が期待されます。体内の異物を食べて殺菌してくれるマクロファージや白血球の機能を高めてくれるようです。マウスを使った実験では、緑膿菌による感染症に対して効果が認められました。
寺下
感染症が抑えられれば、ガンを持ちながら長寿を全うすることも可能かもしれませんね。
鈴木
そう。ガンもイボだと思えばいいんですから。(笑)
寺下
アガリクス茸には、血管新生を阻害するピログルタミン酸も含まれているそうですね。
鈴木
はい。ガンに栄養を与えるための新しい血管を作らせないので、増殖を抑えられるようですね。
寺下
多糖タンパク複合体を含んだ食品と一緒に摂ると効果的な食品はありますか。
鈴木
私の実験では、多糖タンパク複合体を含むアガリクスと一緒にフェカリス菌(乳酸菌の一種)を飲ませたマウスは、リンパ球の機能が高まり、外敵を退治するキラーT細胞数が増えていることが確認されています。本来は敗血症で100%死んでしまう毒性の強い菌を投与しても90%以上が生き残りましたから、劇的な効果ですね。くわしい仕組については、これからの研究課題ですが、腸内の環境をよくしてあげることによって、身体に必要なものを摂り入れやすいのかも知れません。また、私が研究しているアガリクス原料では人を使った実験で、肝臓に全く悪影響を与えず、逆に肝機能を高めるデータも出ました。同じアガリクス茸の商品でも全く違いのあるものもあるのではないでしょうか。
寺下
「ガンにきく」という健康食品や民間療法が注目されやすい状況があります。それを盲信してしまうのは危険で、オーソドックスな医療を受けるチャンスを逃してしまいますが、逆に、健康食品を頭から否定するのは恩恵を受けるチャンスを逃すことになるかもしれない。
鈴木
そうですね。ガンは長寿社会になったからこそ、表に出てきた病気とも言えます。これからは、医療、健康食品、介護の3本柱をしっかりさせることが大切ですね。生活環境、地球環境をしっかりさせるように人間が努力すれば、お年寄りも老健で元気で明るく生きていけるでしょう。平均寿命120歳も夢ではないと思います。

Dr.寺下コラム 有害物質と健康

 

Dr.寺下コラム

 

有害物質と健康

 Kenkoclub 【自然派健康倶楽部】

2008年 春夏号

「自然派健康倶楽部」編集室

最近ブームの「デトックス」 という概念は、横文字になっているだけで、古来より「解毒」という言葉として存在しています。人間にとって基本的な関心事だからでしょう。我々は、生命の維持に必須のものを摂取する際に、なんらか有害物も少なからず取り込んでしまっています。酸素を取り込む際に、活性酸素も発生してしまうことはその典型といえるでしょう。また、最近では環境汚染による有害物質の摂取の心配も増大しています。これらの防御法はできる限り添加物や農薬などの摂取をさけることと、安全に有害物質の排出が期待できる方法を生活に取り入れるという当たり前のことです。この当たり前のことを毎日心がけ、実行するることが健康への近道だと考えています。

 

Dr.寺下コラム インフルエンザを向かえ撃つ

 

Dr.寺下コラム

 

インフルエンザを迎え撃つ

 SOCIETY 【ソサエティ】

2010年 春号

 

 医学の進歩を語るとしたら、「様々な病原体とのせめぎ合い」の歴史ともいえます。最近流行の歴史ドラマの登場人物が病いに倒れる場面をみても、たいていは当時流行していた感染症です。数十年前までは日本の死因のトップだった「結核」やヨーロッパで大流行した「ペスト」を始め、「天然痘」「寄生虫」など医学が勝利をおさめつつあるものもありますが、「エイズ」をはじめたくさんの怖い感染症が虎視眈々と我々人類を狙っているのです。そんな中、今、世界中を席巻しようとしているのが「新型インフルエンザ」です。一般論として、感染症に対処する手段としては①病原体を人体に近づけない②病原体に負けない免疫を作る③人体に侵入した病原体を排し殺傷するという3通りがあります。①うがい、手洗い、消毒②ワクチン、日頃の体調管理③抗ウイルス薬、抗生剤などがあります。そしてその中で私たちが日常的に出来ることは①と②になります。つまり病気から身を守るためには、日々の自己管理が非常に大切だと考えます。氾濫する情報惑わされることなく、これらの基本事項に目を向け、冷静に対応してまいりましょう。

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