NKH健康ライフ講座
目次
-
- カルテ1:偏頭痛 神経内科・脳神経外科
- カルテ2:熱射病 内科 ・救急診療部
- カルテ3:夏ばて 内科
- カルテ4:脳卒中 脳外科
- カルテ5:インフルエンザ 内科
- カルテ6:自律神経失調症 心療内科
- カルテ7:食中毒 内科
- カルテ8:水虫 皮膚科
- カルテ9:花粉症 内科・耳鼻科・眼科
- カルテ10:睡眠時無呼吸症候群 呼吸器内科・耳鼻咽喉科
- カルテ11:サーズ(SARS) 内科
- カルテ12:糖尿病 内科
- カルテ13:慢性胃炎・胃もたれ 内科
- カルテ14:インフルエンザ 内科
- カルテ15:肺炎 内科
- カルテ16:過敏性腸症候群 内科・心療内科
- カルテ17:慢性肝炎 内科
- カルテ18:五月病 精神科・心療内科
- カルテ19:食中毒 内科
- カルテ20:PTSD 精神科・心療内科
- カルテ21:代謝症候群(メタボリック症候群) 内科・生活習慣病科
- カルテ22:前立腺肥大症 泌尿器科
- カルテ23:胃食道逆流症(逆流性食道炎) 内科・消化器内科
- カルテ24:痛風(高尿酸血症) 内科・生活習慣病科
- カルテ25:うつ病 精神科 心療内科
- カルテ26:高血圧 内科、循環器科
- カルテ27:胃潰瘍・十二指腸潰瘍 内科、消化器科
- カルテ28:貧血 内科、血液科
- カルテ29:白血病 内科、血液科
- カルテ30:ドライアイ 眼科
- カルテ31:特定健診
- カルテ32:インフルエンザ 内科
- カルテ33:心室細動 救命救急・循環器内科
- カルテ34:新型インフルエンザ 内科
- カルテ35:パニック障害 精神科、心療内科
- カルテ36:肺結核 内科、呼吸器科
- カルテ37:くも膜下出血 脳神経外科
- カルテ38:加齢黄班変性症 眼科
- カルテ39:不眠症 心療内科、精神科
- カルテ40:テニス肘(使いすぎ症候群) 整形外科
- カルテ41:熱中症 救急救命科・内科
- カルテ42:糖尿病 内科
- カルテ43:男性更年期障害 内科、泌尿器科、男性診療科など
- カルテ44:尿路結石 内科・救急診療科
- カルテ45:急性肝炎 内科・肝臓内科
- カルテ46:アナフィラキシー 救急
- カルテ47:潰瘍性大腸炎 内科・消化器科・胃腸科
- カルテ48:ギランバレー症候群 神経内科
- カルテ49:風疹 内科、小児科
- カルテ50:COPD(慢性閉塞性肺疾患) 内科、呼吸器
- カルテ51:脂漏性皮膚炎 皮膚科
- カルテ52:大動脈解離 心臓血管外科、循環器内科
- カルテ53:てんかん 神経内科、内科、脳外科
- カルテ54:腸閉塞 消化器内科、消化器外科
- カルテ55:ヒートショック 救急科、内科、循環器科
- カルテ56:坐骨神経痛 内科、神経内科、整形外科、ペインクリニック
- カルテ57:多汗症 皮膚科、心療内科
- カルテ58:秋バテ 内科
- カルテ59:男性の冷え性 東洋医学科、内科
- カルテ60:紫外線アレルギー 内科、皮膚科、アレルギー科
- カルテ61:秋バテ内科
- カルテ62:偏食偏食外来、総合診療科、心療内科など
- カルテ63:鼻血(鼻出血) 耳鼻科
- カルテ64:肢静脈瘤 血管外科
- カルテ65:人畜共通感染症 内科・感染症内
- カルテ66:ヒアリについての豆知識 救急科・アレルギー科
- カルテ67:口内炎 歯科口腔外科・皮膚科・内科
- カルテ68:右心不全循環器内科・内科
- カルテ69:スマホネック 整形外科、生活改善
偏頭痛
カルテ1 神経内科・脳神経外科 偏頭痛 |
NKH「健康ライフ講座」 2001.5 日本機械保線株式会社 社内報 |
原因
頭痛は日常的に感じる症状のなかでも代表的なものです。
原因は千差万別で、くも膜下出血や脳腫瘍、髄膜炎など緊急な治療を要する致命的な病気もあります。でも、たいていは「慢性頭痛」といって、頭の中に器質的変化(形態的な変化があること)を伴わず何らかの原因で頭痛が慢性的に生じるものです。その代表が、偏頭痛と緊張型頭痛です。
春~初夏は、偏頭痛の誘因の1つである日光に当たる機会が増えるので注意しましょう。血管の収縮や拡張により生じますが、その原因は不明です。痛みの程度はかなり強いので適切な治療が快適な生活を蘇らせます。
緊張型頭痛は肩こりを伴ういわゆる疲労型の頭痛で、偏頭痛よりもさらに高輝度にみられます。
症状
発作的で、数時間から2~3日持続し、通常は頭の片側に集中するズキンズキンという拍動性の頭痛です。吐き気や嘔吐、眼がまぶしく感じたりする症状を伴うことが多いようです。
前兆として、眼がチカチカしたり視野が一部欠損したり、麻痺が起こったり、時には意識をなくしたりするような、いわゆる脳神経症状が一過性に生じることもあります。
対策
医師による治療として、旧来から工ルゴタミンという薬が発作の特効築として使われてきました。最近では、日本でも認可されたトリフタン系の薬剤が発作の治療薬としてとても有効で、現在は注射薬ですがまもなく経口の薬としても使えるようになる予定です。また、予防薬としてカルシウム拮抗薬等が効果的ですので、何はともあれ専門医に相談するのがよいでしょう。
偏頭痛発作の誘引として、チョコレートやチーズ、高脂肪食やたまねぎ、オレンジ、赤ワインなどのとり過ぎ、強い光刺激などがありますので、それらに注意する必要があります。発作が起こったときは、暗い静かなところで休むのが症状を和らげるコツです。
熱射病
カルテ2 内科 ・救急診療部 熱射病 |
NKH「健康ライフ講座」 2001.7 日本機械保線株式会社 社内報 |
暑いい夏を迎えました。こんな厚い時でも皆さんは、炎天下や熱帯夜に働くことがあると思います。そこで気をつけたいのが「日射病」です。
俗に「日射病」と呼ばれるものは、比較的軽度な「熱疲労」と、ときには致命的な「熱射病」「熱けいれん」などに分類されます。
今回は、主に「熱射病」について説明しますので、勉強して予防しましょう。
原因
高温の外気に長時間さらされると、効率的に汗をかいて放熱する機能が追いつかず、体温調節機構が破綻します。その結果、40度を超える体温の上昇となる状態をいいます。非常に致命的な病態といえます。
症状
自覚できる初期症状に頭痛、めまい、倦怠感などがあります。汗の量はむしろ減少し、脈拍は増加します。血圧は低下し、筋肉のけいれんを起こしやすく、意識障害が生じます。体温は急速に40度から41度くらいに上昇します。
状況からほとんどの場合、診断は容易です。
治療と対策
すみやかな診断と治療が生命予後(生きるか死ぬか)を大きく左右します。身体の冷却と輸液による電解質の管理が重要です。水やアルコールで濡らした布で体をくるんだり、扇風機や氷により冷却します。数分ごとに体温を測り、体温が急激に38度以下に降下しないよう注意します。けいれんに対しては、安定剤の注射などを行います。治療が遅れ、長時間、脳障害や腎障害が続くと、永続的な障害が残ることになります。
対策としては、高温多湿のところでの激しい運動を避けることにつきます。そういった状況では帽子や日傘、スポーツドリンクなど継続的摂取等の対策を十分行い、疲労、脱力、びっしょりの汗といった「熱疲労」の段階で十分な休息と塩分、水分摂取を心掛け、急に汗の量が減ったり、体温上昇、意識の低下が見られたら、すぐに病院に連絡を取れるようにすることが大切です。
夏ばて
カルテ3 内科 夏ばて |
NKH「健康ライフ講座」 2001.9 日本機械保線株式会社 社内報 |
今年は残暑もきつく、「夏ばて」で体の調子を狂わせている人も多いことでしょう。夏の疲れを取り去り、気持ちよい秋を迎えるため、今回は「夏ばて」についてお話しします。
原因
暑さにより、体内の水分調整が狂うことが主な原因です。汗をかくことで体外に放出される水分や電解質の量が、吸収される水分や電解質の量を超えてしまうのです。
また、暑いと消化機能が低下し、本来必要とする栄養素が不足します。そうなるとますます食欲がなくなる、といった悪循環が生じます。蒸し暑さによる睡眠不足も追い打ちをかけます。
症状
そもそも「夏ばて」は厳密には医学用語ではなく、夏期に食欲がなくなり、身体がだるく、何もする気がおこらないといった状態を指す言葉として一般化しているもの。血液検査や尿検査をやっても正常範囲で、いわゆる「病気」という範囲に入らないものを指すことが多いです。
対策
原因から考えてもわかるように、こまめな水分補給が必要です。この「こまめ」というところが大切です。
冷たい飲み物ばかり一気に摂取すると、吸収されずに、胃ばかりが膨満して胃酸も薄まり、食欲をさらに低下させてしまいます。夏場は、少しずつ水分補給を行うことが正解なのです。あまり冷やさずに、体温に近い温度のもののほうが吸収しやすいので、喉の乾きをいやすための冷たい飲み物と、水分補給用の生ぬるい水分を区別して摂取するのも1つの方法ではないでしょうか。
不足しがちなビタミンを補給するベく夏野菜や果物をしっかり食べることが、夏ばて防止の第2の戦略となります。
消化機能を整えるオクラ、利尿作用を持つきゅうりやスイカ、免疫力を高めるビタミンAの豊富なピーマンやかぼちゃ、胃液の分泌を促進するトマトなどは夏ばて防止の力を兼ね備えています。
また、消化機能を向上させるために香辛料も上手に使いましょう。香辛料は胃液の分泌を活発にして食欲を増進させます。
第3の戦略としては、良質な睡眠をとるように工夫することです。クーラーをつけっぱなしで眠らない、アルコールを飲みすぎない、起床時間を-定にするなど、睡眠の基本を守りましょう。
こうして考えてみると、健康の3種の神器「快食」「快眠」「快便」にことさら留意することこそ、夏ばて対策の秘策だったわけです。
脳卒中
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
脳卒中
2001/11
脳の中の血管が詰まったり出血を起こすことにより、脳への血液の供給が急激に途絶え、脳の一部の機能が障害される病態を総称して脳卒中と呼びます。脳卒中の主なものには脳梗塞と脳出血とくも膜下出血があります。
(原因)
脳梗塞と脳出血は脳の血管が動脈硬化をおこし、内腔が狭くなったり閉塞したり、また血管の壁が脆くなり出血を起こし結果的に正常な血液の流れが阻止されることにより起こります。主な原因としては血液中の脂肪成分(コレステロールや中性脂肪など)が多くなり、それらが血管内部に蓄積することや、高血圧により長年血管に負担がかかり血管が脆くなることなどが考えられています。くも膜下出血は、遺伝的に動脈瘤や動静脈奇形という状態を持っている人に高血圧などが誘因となり血管が破裂することにより起こります。
(症状)
脳のどの部位に障害が起きるかにより異なった神経症状が見られます。主なものに、身体の片側の麻痺や感覚障害、言語障害、意識障害などがあります。くも膜下出血の場合は、激しい頭痛と意識障害を起こします。一般的にくも膜下出血のほうが重症で、発病初期の致命率が高いようです。
(治療)
いずれも発病初期の治療が大切です。脳卒中と判明したら脳外科医の待機する病院へのすみやかな移送が明暗を分けます。脳梗塞なら詰まった血栓の融解治療が、脳出血なら血液の固まりの除去や止血作業が、くも膜下出血なら出血している動脈のクリッピングという止血作業がそれぞれ一刻を争う治療法となります。
(予防対策)
動脈硬化を促進するような生活習慣(危険因子)を改めるという一言に尽きます。この危険因子の代表的なものは、肥満、喫煙、ストレス、高血圧、高脂血症、糖尿病などです。前半の3つは自分でコントロールするものです。後半の3つはもし存在すれば医師から指導を受けて日頃からコントロールしておくことが肝要です。何事につけても、規則但しいい生活が基本で、バラエティーのある食事、禁煙、節酒、脂肪や塩分、糖分を控えた食事、毎日の軽い運動、ストレスの少ない楽しい生活の工夫などが脳卒中の可能性を低めます。
インフルエンザ
カルテ5 内科 インフルエンザ |
NKH「健康ライフ講座」 2002.1 日本機械保線株式会社 社内報 |
鼻やのど(専門的には上気道と呼びます)の粘膜に炎症を起こす感染性の病気を総称して「かぜ症候群」、「感冒」と呼びます。
原因としては、数十種類のウイルスがあるとされており、その代表的なもので、比較的強い症状を引き起こす「インフル工ンザウイルス」により発症する病気のことを、一般の「感冒」と区別して「インフル工ンザ」と呼びます。
原因
「インフル工ンザウイルス」は大きく分けてA型、B型、C型の3種類がありますが、集団発生や劇症型の新型などは、ほとんどA型です。ここ数年、日本でも集団発生が多く見られるようになったことと、劇症型の新型ウイルスの登場で、とみに社会的な問題と考えられるようになってきました。
症状
主な症状は発熱、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などです。比較的急に症状が現れ、たいていの場合は1週間程度で軽快します。とはいえ、小児や高齢者や体力の弱った人が「インフル工ンザ」にかかると、肺炎や脳炎などに発展することもあります。そうなると激しい咳や痰、頭痛のほか、全身衰弱、意識障害などが見られます。
治療
一般的に、ウイルスに効果的な薬はほとんどなく、「感冒」にしろ「インフル工ンザ」にしろ対症療法が中心でした。
しかし、最近の医学の進歩により、「アマンタジン」というバーキンソン病の薬が「インフル工ンザ」にも効果があるということで、1998年、日本でも認可になりました(「アマンタジン」はA型のみに効果的なことと、副作用などで、まだ日本では一般的な治療法ではありません)。
また、2000年より「リレンザ」というA型にもB型にも効く択ウイルス剤が日本でも承認されています。
予防
予防法としてワクチン接種がありますが、1994年以来任意摂取となり、摂取率は5%程度です。しかし、1998年度のインフル工ンザの集団発生などの教訓からか、1999年度の冬は350万人分のワクチンが早くから底をつくという現象が見られました。
一般的な予防法としての、「栄養、睡眠に気遣い、うがいや手洗いを励行する」ということは、地味ではありますが、基本的でかつ効果的な予防法でしょう
自律神経失調症
カルテ6 心療内科 自律神経失調症 |
NKH「健康ライフ講座」 2002.5 日本機械保線株式会社 社内報 |
「自律神経失調症」という言葉は、-般の方にとっても馴染み深い名前でしょう。医師から告げられる診断名として比較的多いのですが、つかみ所がない病名でもあります。
脳からの命令が全身に通じる神経には大きく分けて2種類あり、自分の意志が支配する「随意神経」系と脳が自動的に支配する「自律神経」系とがあります。
そして、この「自律神経」には、一般に活動を促進する「交感神経」系と抑制する「副交感神経」系があり、普通、両者が上手くバランスをとり生命活動を支えています。
何らかの原因で、この「交感神経」と「副交感神経」のバランスが悪くなった状態を「自律神経失調症」と呼びます。
原因
過度なストレスや生活習慣の不摂生、更年期障害などによるホルモンの乱れ、神経症やうつ病の初期症状としてなど、原因は多彩です。
体質的に「自律神経」が不安定な人もいます。
症状
「自律神経」は多くの臓器をコントロールしていますから、多くの症状がみられます。
代表的なものとして、動悸、めまい、のぽせ、冷や汗、頭痛、頭重感、不眠、食欲不振、肩こりなど。多彩なので、総称して「不定愁訴」とも呼ばれます。
診断
診断は困難なことが多く、「除外診断」といって、それぞれの症状を起こしうる他の病気を1つひとつ否定することが先決になります。
「自律神経失調症」の原因となる基礎的疾患があれば、そちらの治療を優先します。他の疾患がなければ、総合的な診断として本症を疑います。
対策
心身の休養が大切ですが、専門家によるカウンセリングや自律訓練法の指導を受けると良いでしょう。場合により精神安定剤、睡眠導入剤、自律神経調節剤などの薬物を併用することがあります。
対策としては、日頃からストレスをためずに発散するよう心掛け、生活のリズムを整えておくことにつきます。特に、睡眠不足にならないよう注意しましょう。気になる症状があれば、早めに「心療内料」などの専門医にかかりましょう。相談し安心することは、予防や早期治療の意味でも大切です。
食中毒
カルテ7 内 科 食中毒 |
NKH「健康ライフ講座」 2002.7 日本機械保線株式会社 社内報 |
人に有害な細菌やウイルス、その他の有毒物がついた飲食物を摂取した結果起こる急性の胃腸障害のことを、食中毒と言います。
原因としては細菌性のものが多く、夏場に集中する傾向があります。
原因
原因となる細菌には菌そのものが障害を与える感染型としてサルモネラ菌、腸炎ピブリオ菌、病原大腸菌、菌の産生した毒素が障害を与える毒素型としてはブドウ球菌、ポツリヌス菌などが代表的です。
近年、病原性大腸菌の1つである腸管出血性大腸菌(O-157)が原因の食中毒が多発しマスコミなどを通じ、一般人もその恐ろしさに怯え、社会問題となっています。
O-157による食中毒は、産生されるベロ毒素により尿毒症をきたし、致死率が高いのです。また、冬場の集団食中毒として小型球形ウイルスが注目を集めています。急激な嘔吐と下痢が主症状で重症感が強いですが、数日以内に自然治癒する予後の良い感染性胃腸炎です。
症状
比較的急激な嘔吐、腹痛、下痢がみられます。感染源の菌の種類により発熱、血便がみられることがあります。
診断
特徴的な症状と因果関係が推定される食物、また集団発生など複数の患者が同時に発生することなどから診断されます。
治療と対策
万一、食中毒になったら、すみやかに内科の専門医がいる病院を受診してください。
治療では下痢や嘔吐による脱水の治療のための輸液療法が優先されます。原因となる菌が判明すれば、それに対する抗生物質などを投与します。O-157などの特殊な強い菌の場合は、特別な治療を要します。
対策としては何よりも、原因となる細菌やウイルスを体内に侵入させないことです。生ものは鮮度に注意し、日頃からのまめな手洗いを実行することも食中毒になる確率を大きく低下させます。
食中毒の集団発生などの情報に注意を払い、疑わしい時は生ものをよく加熱調理しましょう。ただ、毒素型の場合は、加熱をしても効果がない場合があります。
いずれにしろ、菌に対する抵抗力をつけることが重要ですので、日頃から快食、快眠、快便を保ち体力を温存しておくことです。
水虫
カルテ8 皮膚科 水虫 |
NKH「健康ライフ講座」 2002.10 日本機械保線株式会社 社内報 |
原因
水虫は医学的には足白癬(はくせん)といい、白癬菌という真菌(カビ)が原因です。
湿気、通気性の悪さ、免疫力の低下、不潔などカビにとって都合の良い条件がそろうと簡単に生えてしまううえ、いったんかかると治りにくく、途中で治療をやめてしまうとまた再発してしまうという厄介な皮膚の病気です。
症状
足裏、足の指の問にできることが多く、じゅくじゅくと白くふやける、小さな水ぶくれができた後カサカサの薄皮がむける、足裏の皮膚が厚くなるなどのタイプがあります。
かゆみは必ずしもあるとは限りません。爪の水虫では爪が黄色に濁り厚くなります。
診断
見た目だけではなかなか診断は難しく、医師が診断する時も視診だけではなく、皮膚の一部を顕微鏡で確認してから確定診断となります。
本人は水虫と思っていても実は違うというケースが全体の約1/3をしめます。
水虫と間違えやすい病気としては、ブドウ球菌感染症、接触性皮膚炎、ショウセキ膿ほう症などがあるので、必ず一度皮膚科で診断を受けるようにしましょう。診断の際、すでに何か薬がついているとカピが確認できませんので、患部をよく洗ってから受診してください。
治療と対策
水虫の感染を防ぐために
- 足を洗う習慣
- 足を洗ったあとはよく乾燥
- 清潔な靴下、履いたあともよく乾燥させた靴
などが大切です。
最初に述べたような条件がそろわなければカビは簡単にはうつりませんので、家族に水虫の患者さんがいてもあまり神経質になる必要はありません。家庭内で一番うつりやすいのはパスマットとトイレのスリッパ。それだけは別にしておきましょう。
現在水虫治療のために使われているぬり薬は、2~3週間でカビを全滅させるだけの強さがあります。但し実際には、もともとカビが非常に育ちやすく、また常に清潔と乾燥を保つのが難しし部位であるため、3ヶ月~1年の治療期間必要です。
冬場のように低温で乾燥している状態のときにはかゆみもなくなり、よくなったように感じますが、水泡や皮むけが無くなったとしても、菌が皮膚の中に残っていることがありますので、ここで薬をやめてしまうと翌夏にまた再発します。継続的な根気強い治療必要なのです。なお、爪の水虫は特殊で、治療には内服薬が必要になります。
花粉症
カルテ9 内科・耳鼻科・眼科 花粉症 |
NKH「健康ライフ講座」 2003.1 日本機械保線株式会社 社内報 |
症状がひどいと日常生活に大きな支障をきたし、現代病としても注目されている「花粉症」。最近は日常生活で花粉を回避する習慣を身につけたり、薬剤を上手に使うことでコントロールが可能になりつつあります。
原因
花粉症はアレルギー反応によって起こります。原因植物は大きく樹木と草花に分けられます。樹木としては、日本での原因のほとんどを占めるスギを始め、ヒノキ、ハンノキ、ブナ、マツ、イチョウなど、草花はカモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、オオアワガ工リ、カナムグラなどが挙げられます。地域によって原因植物は異なり、花粉の飛散時期も異なります。1種類の花粉にだけ反応する人はむしろ少なく、スギ花粉症患者の60%の人がヒノキの花粉にもアレルギーを示したとの報告もあります。発症には、アレルギー体質(遺伝)、大気汚染、ストレスや過労が関係します。
症状
主に鼻症状と眼症状が中心です。
鼻は発作的なくしゃみや水っぽい鼻汁、鼻閉(鼻づまり)など、眼はかゆみや充血、まぶたの腫れといった症状が挙げられます。このような症状が特定の季節に繰り返し起こります。
診断
花粉症を疑った場合、内科か耳鼻科、もしくは眼科で診断を受けましょう。診断は、鼻や眼の症状のアレルギー性と原因花粉をつきとめることの両方からなります。ポイントは症状、発症時期、分泌物の検査、皮膚反応検査、血液検査などです。
治療と対策
一般的な花粉症の治療としては、眼鏡やマスクなどを用いた花粉の回避、薬で症状を和らげる対症療法です。特に、抗アレルギー剤を花粉が飛散する時期に入る2週間くらい前から予防的に投与し、アレルギー症状を軽減させる方法が有効です。
飛散開始の予測がポイントになりますが、スギ花粉の飛散時期に関していえば、たいてい早い所でも2月の半ばから。2月の初旬から薬の投与を開始すれば間に合うようです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)
カルテ10 呼吸器内科・耳鼻咽喉科・一部の歯科 睡眠時無呼吸症候群 (SAS:Sleep Apnea Syndrome) |
NKH「健康ライフ講座」 2003.4 日本機械保線株式会社 社内報 |
睡眠中に呼吸の止まった状態が断続的に繰り返される、重度の睡眠障害一つです。
一般にいびきをかく人は少なくないのですが、無呼吸発作を繰り返すようないびきは、様々な問題を生じ、時には命にもかかわります。
症状
「大きないびき」と「昼間の眠気」が主な症状です。
一晩の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または睡眠1時間あたりの無呼吸を5回以上認めると、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。
無呼吸を繰り返すと、血液中と脳で酸素量が減少し、十分な睡眠が得られないため、昼間の眠気や集中力の低下、頭重感などの症状が出ます。
酸素不足は循環器機能にも負担をかけ、不整脈、高血圧、脳卒中などの原因になりますし、日中の眠気は交通事故や産業事故を引き起こす可能性があります。
同じ部屋で眠る人から、睡眠中の体動が激しい、大きないびきをかいている、息苦しいあえぎやうなり声などをあげているなど指摘された場合は要注意です。
診断
最近は睡眠障害の専門外来が増えています。「アプノモニター」という酸素濃度を測定できる装置を自宅に持ち帰り、夜間装着して無呼吸の回数や血液中酸素濃度の低下の有無などをコンピューター解析して診断します。重度の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、入院して脳波形、眼球運動、いびき音、心電図などを同時に測定する「ポリソムノグラフィー」という精密検査を行います。また、必要に応じて血液検査、心エコー、肺機能検査、耳鼻咽喉科的検査などを行います。
治療と対策
肥満、鼻中隔のゆがみ、ポリープ、扁桃腺肥大、蓄膿症などが原因となっていることが多く、特に肥満中年男性の場合は体重を減らすだけで問題は解決します。
上気道(鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭、気管など)の閉塞が原因となっている場合、マウスピースの装着や、空気の圧力で気道を広げる「シーパップ」と呼ばれるプラスチックマスクの装着が有効です。重度の睡眠時無呼吸症候群では、喉を広げる手術などの外科的治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群は、治療を行うことで生存率の改善はもちろん、活動的な日常生活を可能にし、不整脈、心肥大、高血圧などの疾患の改善も期待できますので、早めの対策が大切です。
サーズ(SARS)
カルテ11 内科 サーズ(SARS) |
NKH「健康ライフ講座」 2003.7 日本機械保線株式会社 社内報 |
SARSウイルスによる重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome:SARS)の感染は「制圧状態に近づきつつある」(世界保健機関:WHO)ものの未だ治まらず、世界的な脅威となっています。
今回はSARSについて現時点でわかっていることをまとめてみました。
原因
原因となる病原体はWHOにより新型のコロナウイルスであると決定され、「SARSコロナウイルス」と名付けられました。コロナウイルスは顕微鏡で王冠のような光冠(コロナ)の形に見える一群のウイルスで、風邪の原因ウイルスとして知られています。
症状
主な症状は、38℃以上の発熱、咳、息切れ、呼吸困難などで、胸部レントゲン写真で肺炎または呼吸窮迫症候群の所見(スリガラスのような影)が見られます。ただし、これらの症状は通常の肺炎と区別がつきにくいので、SARS流行地域への渡航歴が重要になります。主要な感染経路として咳やくしやみを介する飛沫感染が想定されていますが、接触感染(分泌物、排出物などに含まれるウイルスが付着した手で、目、鼻、口等を触ることによる感染)など、その他の感染経路も否定されていません。潜伏期間は2~10日程度と言われています。
診断
新しい感染症であり、まだ完全にその全貌が明らかになったわけではありませんので、明確な定義はありません。現状では症状と渡航歴から疑い症例を判別し、確定診断のためには専門の医療機関で病原体検出や血清検査などの特殊検査が行われています。
治療と対策
SARS流行期間中の海外旅行については、地域内伝播が確認されている地域の把握など情報収集が大切になります。また、体調が良くないとSARSに対する抵抗力が低下しますので特に注意か必要です。
WHO西太平洋事務局などでも公衆の場でのマスクの着用は推奨しておらず、我が国においても国内での感染が確認されていない現在、SARSの感染予防としての健常者のマスクの着用は必要ないと考えられます。
● SARSに関しての問い合わせは保健所で受け付けています。
糖尿病
カルテ12 内科 糖尿病 |
NKH「健康ライフ講座」 2003.10 日本機械保線株式会社 社内報 |
総論
現在わが国では約600万人の糖尿病患者がいると考えられ、特に40歳以上の国民ではその10人に1人が糖尿病であるといわれています。糖尿病は自覚症状がないだけに、治療がされないまま放置されることが多く、悪化してからでは厳格な食事制限やインシュリン注射治療など、苦痛を伴う治療を余儀なくされます。“境界型”“糖尿病予備軍”と診断された段階で、病気の重要性を自覚することが大切です。
原因
糖尿病は血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が持続する病気です。膵臓から分泌されるインシュリンという、食物中から吸収されたエネルギーを体内の細胞にとりこみ、血糖が一定値以上に上昇しないように作用するホルモンの働きが弱くなることが原因となります。これは細胞内には必要なエネルギーが取り込まれずに枯渇しているのに、血液中のブドウ糖濃度は高いままという状態で、高血糖が血管や神経を障害するため様々な合併症を起こします。糖尿病は遺伝的な体質に加え、暴飲暴食、ストレスなどの生活環境が引き金となって発症します。
症状
自覚症状がないのが特徴で、口の渇き、多飲、多尿、だるさ、体重減少、目のかすみ、手足先のしびれといった症状を認めたときにはかなり進んだ状態であると言えます。極度の高血糖を放置しておくと、意識を失って倒れてしまう昏睡状態におちいることもあります(糖尿病性昏睡)。
診断
尿検査だけで糖尿病と確定することはできず、必ず血液検査を行います。糖尿病の程度を知る検査としては、合併症として腎臓病を調べる尿中蛋白定量検査、網膜を調べる眼底検査、神経障害を調べる自律神経機能検査などが挙げられます。
治療と対策
糖尿病の治療は食事療法、運動療法と生活習慣の改善がまず基本となります。糖尿病は残念ながら治ることはなく、進行を止める事が目標となりますので、無理な食事制限と挫折を繰り返すよりも継続性を重視したプログラムが有効です。また、様々な合併症の予防のために、症状がなくとも定期的な診察、検査を受け、未然にコントロールすることが重要です。
慢性胃炎・胃もたれ
カルテ13 内科 慢性胃炎・胃もたれ |
NKH「健康ライフ講座」 2004.1 日本機械保線株式会社 社内報 |
総論
慢性胃炎は、胃酸の分泌などに関与する胃の粘膜が薄くなって、本来の胃の機能が低下した状態を言います。通常、食べ物は胃液の分泌と胃の蠕動(ぜんどう)運動により2時間から3時間程度の間に消化されますが、ストレスなどによって胃の働きが悪くなると消化するのに時間がかかり、食べ物が長く胃にとどまることにより胃もたれやむかつきの原因となります。
原因
暴飲暴食、香辛料、カフェイン類の摂り過ぎ、喫煙、不規則な生活、ストレス、また鎮痛剤など、ある種の薬剤などが引き金となって起こりますが、胃・十二指腸潰瘍や胃癌などの病気に伴って起こることもあります。
胃粘膜の萎縮は、加齢や、胃の粘液の中に生息しているヘリコバクターピロリ菌が作りだすさまざまな物質によることもわかっています。
症状
胃酸の出すぎによる胃痛、胃の運動機能低下による胃もたれや嘔気、食欲不振などを認めます。その他胸焼けやげっぷ、症状が長く続くと不安感などを認めることもあります。
治療と対策
まずは食生活や生活習慣の見直しが大切です。暴飲暴食をつつしむだけではなく早食いや不規則な食事を避け、辛いものなどの刺激物、タバコやアルコールの摂取量に注意する必要があります。症状が持続する場合には、消化器内科を受診することをおすすめします。胃の造影検査でも胃粘膜の状態はある程度はわかりますが、一番確実なのは内視鏡検査(胃カメラ)で胃粘膜を直接観察することです。
医療機関の処方する薬は強力に胃酸分泌を抑えるH2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤といわれるものが主流で、とてもよく効くため胃潰瘍や十二指腸潰瘍にまで進むことも少なくなりました。市販薬を選ぶときは胃痛には酸分泌抑制剤、胃もたれには胃の蠕動運動を活発にする薬や胃の緊張を和らげる効果をもつ薬を選びましょう。
一時的に内服薬で改善しても服薬の中止により再び症状を認める場合は、ヘリコバクターピロリ菌に対する特別な治療が必要であったり、または癌などが原因となっていないかの確認が大切になります。
インフルエンザ
カルテ14 内科 インフルエンザ |
NKH「健康ライフ講座」 2004.4 日本機械保線株式会社 社内報 |
総論
インフル工ンザは毎年日本において11月から3月にかけて流行を起こす。世界的にも最も罹患(りかん)率の高いウイルス感染症です。ヒトのインフル工ンザウイルスには、A・BおよびC型の3種類が存在しますが、臨床的にはA(A香港型とAソ連型)とB型が問題となります。
普通の風邪と異なり、急激な発熱や関節痛やだるさなど強い全身症状を特徴とし、乳幼児や高齢者、もともと病気を持つ人がかかった場合、重症化して肺炎や脳症などの合併症により死に至ることがあります。
症状
悪寒を伴う38~40度の高熱、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身症状が強いことが特徴です。さらに同時期または少し遅れて咽頭痛、鼻汁、咳、頭痛などの症状も見られます。潜伏期は1日~2日で、合併症を併発しなければ症状は約1週間で軽快します。
診断
地域内においてインフルエンザの流行があり、上記の症状が急激に認められた場合、臨床的にインフルエンザの可能性は非常に高いと考えられます。確定診断にはウイルス学的検索が必要ですが、近年簡便な確定方法(EIA法)が開発され、A・B型ともに診断可能なインフルエンザ診断キットがあれば、外来にて20分以内で診断ができるようになりました。
治療と対策
予防には、インフルエンザワクチン接種が最も有効で、特に高齢者ではワクチン接種により、入院日数や死亡率を大幅に改善できることが報告されています。
発症した場合は、安静・保温・保湿などの対症療法に加えて、発病48時間以内であればインフルエンザウイルスの増殖を抑え、病気の期間と症状の重さを軽減する抗ウイルス薬の服用が効果的です。現在用いられている薬には、A型インフルエンザにのみ有効なアマンタジン(シンメトレル)とA・B型の両方に有効なノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル・リレンザ)があります。
鳥インフルエンザについて
鳥インフルエンザウイルスはヒトのインフルエンザウイルスとは異なったウイルスです。鳥インフルエンザは、店頭での生きたニワトリの小売りが一般的な地域での発生がほとんどで、今のところヒトからヒトヘの感染が確定された事例はなく、鶏肉や鶏卵からの感染の報告もありません。特別な予防法はなく、現在使用されているヒトインフルエンザワクチンも効きませんが、上記の抗インフルエンザウイルス薬は鳥インフルエンザにも効果があるといわれています。
肺炎
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カルテ15 内科 肺炎 |
NKH「健康ライフ講座」№63 2004/7/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
肺炎は、いろいろな病原体が肺へ感染して起こる、肺の炎症の総称です。主な感染経路は気道ですが、他部位の感染巣から血液の流れに乗って病原体が肺組織へ侵入し発症する場合もあります。特に高齢者や糖尿病、癌などの基礎疾患を有する 患者さんが発症した場合は、病原体が血液を介して全身に広がる敗血症という症状という状態を引き起こすなど、致命的になることがあります。肺炎を起こす病原体としては、細菌のほかにウイルス、マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジア、原虫、真菌(しんきん)などがあります。
○症 状○
多くの場合は発熱、全身のだるさ、咳、色のついた痰などの風邪症状に引き続き、呼吸困難、胸痛、特に重症な場合はチアノーゼや意識低下などが認められます。発熱も多くの場合39度異常まで上がります。しかし高齢者や体力の低下した人では、無熱性肺炎といって発熱が軽微なこともあり注意が必要です。軽い症状であれば自宅での治療も可能ですが、呼吸困難や40度以上の発熱、悪寒、頻脈、意識低下、チアノーゼ、胸痛などを認める場合は少しでも早い入院治療が必要です。
○診 断○
症状および胸部のレントゲン写真によって行います。また血液検査での炎症性変化の所見(白血球数増加、CRP高値など)があればより確かとなります。診断の確定のためには病原菌の検出が必要になり、痰の細菌培養や血液検査による抗体(特定のウイルス、マイコプラズマ、レジオネラなどを対象)などの検査を行います。診断において最も重要なのは、結核や癌に合併する肺炎と鑑別することです。
○治療と対策○
治療は、全身管理および症状に対する対症療法と、原因となっている病原体に対する薬物治療からなります。全身管理においては特に水分および栄養補給、安静、加湿が基本となります。入院治療が必要な場合はさらに心拍数や呼吸、体温、血液中の酸素濃度などをみながら点滴、酸素投与、人工呼吸管理などを行います。
薬物治療については、原因となっている病原体によって薬が使い分けられます。多くの場合、病原体によって薬が使い分けられます。多くの場合、病原体が判定される前に抗生物質の投与(軽症であれば内服薬で、中等~重症の場合は点滴)がなされますが、病原体によっては特殊な治療を要するため、診断が重要です。例えば、近年、循環式浴槽水やシャワー、ホテルロビーの噴水などを介した感染・発病が報告されているレジオネラ肺炎や、若年に多く集団感染としても注目されることの多いマイコプラズマなどは、通常の抗生物質では効果が得られないため、正確な診断のもとに治療をしなければ悪化してしまうことがあります。
過敏性腸症候群
カルテ16 内科・心療内科 過敏性腸症候群 |
NKH「健康ライフ講座」 2004.10 日本機械保線株式会社 社内報 |
過敏性腸症候群は、レントゲンや内視鏡などの検査で腸の炎症や腫瘍など、異常が無いにもかかわらず下痢や便秘といった便通異常を繰り返す、腸が正常に機能しない疾患です。現在のストレス社会で増加が注目されています。
原因
身体的な疲労や精神的ストレスが引き金となり、腸の運動機能や分泌機能が高ぶって下痢や便秘が起こると考えられます。
症状
下痢、便秘、腹痛、膨満感などで、主となる症状によって下痢型、便秘型、便秘と下痢を繰り返す下痢便秘交替型に分類されます。症状は、精神的要素が強く排便によって軽快する強い腹痛が特徴で、朝起きてすぐや朝食後、出かける前、電車の中などで頻回に便意があります。1回の便の量は少なく、残便感や不快感が残ることもあります。女性にやや多く、男性には下痢型、女性には便秘型が多い傾向があります。また、不安、過敏、抑うつなどの精神症状が出ることもあります。
診断
癌や潰瘍性大腸炎といった他の病気が腸に無いこと、下痢や便秘、排便により軽快する腹痛の症状があること、症状が3ヶ月以上繰り返し起こるといったことから診断されます。
治療と対策
もっとも重要なのは、生活環境やライフスタイルの改善です。過労や精神的ストレスを避けて、規則的な食事や生活リズムを整え、じっくりとセルフコントロールしていくことが必要です。
症状のかいぜんには時間がかかりますが、症状の完全な消失を求めるよりも症状があってもやっていけるという受け入れが大切です。下痢、便秘、腹痛などの症状に対しては、対症療法として消化管の運動を調整する薬や漢方が使われます。うつ病やパニック障害を合併していることもあり、抗不安薬なども併用されます。自律訓練法の指導により不安、緊張を軽減させたりカウンセリングにより原因となっている精神的ストレスの解消を試みることも有効で、1人で抱え込まずに相談相手をもつことが重要です。
慢性肝炎
カルテ17 内科 慢性肝炎 |
NKH「健康ライフ講座」№65 2001.7 日本機械保線株式会社 社内報 |
現在200万人以上の患者数とも推定される慢性肝炎ですが、肝癌の原因ともなる肝硬変へ進行するおそれもあるため、非常に注目されている病気です。厚生労働省は平成14年度から、総額600億円の予算を投入して40歳以上のすべての成人にB型、C型肝炎の検査を実施するという対策をとっています。肝炎とはあらゆる原因による肝臓の炎症の総称で、その原因も様々です。
今回は肝硬変の原因の90%を占めると言われている、慢性のウイルス肝炎の概論を説明します。
原因
一般的にアルコールが原因と思われがちですが、日本での原因はほとんどがウイルスです。ウイルス性肝炎の中でも特に、肝硬変や肝臓癌といった重い肝臓疾患への移行率が高いのは、B型・C型肝炎です。感染源としては、ウイルスに汚染された血液の輸血を受けることや、薬物乱用者の間での注射器の回し打ち、出産時の母子感染、性行為感染などが挙げられますが、ウイルスの種類こよつて感染経路は異なります。
最近10年以内に発見されたウイルスもあり、今後の解明が必要です。病態が明らかになるにつれ、献血用血液から感染血液を除く検査が採用されて輸血後肝炎が大幅に減るなど、感染予防のための対策が進められています。
症状
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、特に慢性肝炎についてはほとんどが症状なく進行します。そのため肝癌死亡者の7割以上を占める慢性C型肝炎も、末期になるまで感染に気付かず手遅れになるケースもあります。
症状は食欲不振や疲労懲、腹部の不快感、痛れ、膨満感などです。
治療と対策
肝炎の原因によって治療方法は異なりますが、ウイルスを駆除できる、またはウイルスの増殖を抑制できる抗ウイルス剤が最新の治療として注目を浴びています。また研究の成果により、治癒率も改善されてきました。
感染経路は血液や性行為を介することが主ですので、家族への感染が心配される場合も、同じカミソリや歯ブラシを共有するなどのことがなければ、日常生活における接触で感染することはないと考えられています。
PTSD
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ20<精神科・心療内科>PTSD
2005/10/15
大地震やテロや大事故が起こるたびに、このPTSDという病気がマスコミなどで取り上げられ、言葉だけはなんとなく知っている方も多いと思います。日本語では「外傷後ストレス障害」と言います。大きな恐怖や破局的な出来事を体験した後、時間がたっても病的な心身の反応が長く続く状態です。出来事のショックが余りにも大きい場合と、個人のストレス過敏性が強い時にこの状態になりやすくなります。
(原因)
異常で怖い出来事を体験すると、誰でも心身が乱れ不安定になります。そして時間の経過と共に心身の安定を取り戻していくものです。しかし、出来事が脅威的であったり個人の感受性が高すぎる場合、恐怖の体験記憶が固定化され、心身の不安定が持続します。記憶や恐怖を感じる脳に障害が起き、脳内ホルモンの分泌や作用の異常が起きるために生じるとされています。
(症状)
フラッシュバックといわれる恐怖の出来事をありありと思い出したり悪夢でうなされるなどの再体験症状、睡眠障害などの覚醒亢進症状、類似する体験を避けたり恐怖を体験した場所などに近づけない回避症状などが主な症状です。こういった症状が一ヶ月以上続く場合この病気が考えられることになります。体験直後は症状がなく、数週間後に症状が出現することもあり、後者のほうが治療が困難になる場合が多いようです。
(診断)
症状の経過をみながら診断することになります。マスコミなどでこの病気が有名になりすぎたために、過剰な診断を招くこともあり慎重な経過観察が望まれます。他の精神疾患を既に有していたり、社会活動に支障が無い場合は本疾患の診断は除外されます。
(治療)
薬物療法と心理療法が主な治療法です。対症的に抗不安薬や睡眠導入剤を用います。またSSRIと呼ばれる一群の薬物が第一選択剤となっていますが、PTSDとしてはまだ日本の保険の適用になっていません。心理療法としては支持的カウンセリング、認知行動療法などがありますが、最近ではEMDRと呼ばれる眼球運動による脱感作と再処理法が試みられています。
五月病
カルテ18 精神科・心療内科 五月病 |
NKH「健康ライフ講座」№66 2005.5 日本機械保線株式会社 社内報 |
新入生が新しい環境の変化に馴染めずに、知らず知らずのうちに自分の殻の中に閉じこもり心のスランプになってしまう状態は5月病としてよく知られています。近年、学生の五月病は減り、代わって、職場環境の激変する現代を反映するように社会人に同様の症状が多く認められるようになりました。
原因
五月病は医学用語ではないため、決まった概念や定義があるわけではありません。
医学的には「適応障害」と診断され、新入生や新入社員に限らず、また五月に限った病気でもありません。例えば初めての1人暮らしや、新しい人間関係についていけない、期待していた仕事や新生活と現実のギャップについていけないなど、新たな環境に適応できずに、そのことへのあせりが強いストレスとなって生じると考えられます。
新しい生活に夢中に取り組む間はよいのですが、それがひと段落する5月・6月頃lこ、緊張感からの解放や新生活への失望などがきっかけとなり、知らず知らずに蓄積された心身の疲れが出て無気力な状態を認め、重症の場合にはうつ病へと進展することがあります。
本人の性格も大きな因子で、同様のストレスに対して負担になってしまう人と、うまく乗り越えられる人とがいます。
症状
精神的には、やる気が出ない、なんとなく気持ちが落ち込む、イライラする、不安感などが認められ、身体的には睡眠障害、疲労感、頭痛、めまい、動悸などが挙げられます。疲れているのに眠れず、意欲や食欲が減退し、人間関係もうまくいかずに自己嫌悪に陥り、何とかしなければと焦る程に悪循環にはまり、放置して重症化すると最後には死んでしまいたいなどと考えてしまうこともあります。
診断
自覚症状からほとんどの場合は診断が可能です。中には消化器症状(食欲不振、下痢、腹痛など)や感染症(長引く風邪症状など)といった身体症状が前面に出てストレスが原因であることの判断が遅れてしまうこともあります。
治療と対策
もともと真面目で几帳面、完璧主義な人がかかりやすいと言われています。ストレスの管理はもちろんですが、ライフスタイルや価値観、夢などについてゆっくり見つめ直し、新たな目標や関心を見つけることが気持ちの切り替えになります。それでも症状が改善しない場合は、早めに医師に相談しましょう。躊躇することの多かった精神科の受診(メンタルケア)も、現代では知的な社会人の常識となっています。
食中毒
カルテ19 内科 食中毒 |
NKH「健康ライフ講座」№19 2005.7 日本機械保線株式会社 社内報 |
暑さの厳しくなるこの時期から秋にかけて、食中毒の発生しやすい季節です。食中毒の感染者数は30年にわたってあまり減少する兆しがありません。毎日の食事でも発生する機会は意外と多いものです。基本を押さえた正しい予防により、食中毒の被害に遭わないように心がけましょう。
原因
食中毒とは食品、その添加物あるいは食器などに起因する中毒のことです。原因物質としては、サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原大腸菌、ブドウ球菌などの細菌のほかにも、化学物質やフグ等の自然毒などがありますが、8割以上は細菌です。
昨今、小型球菌ウィルス(ノロウィルス)による食中毒が多く報告され、注目されています。原因となる食品としては、サルモネラが肉、卵、乳製品などからの感染が多く、学校の食中毒としても頻度が高く認められます。腸炎ビブリオは生魚介類やまな板に付着した様々な食品等、病原大腸菌はサラダや肉(特にひき肉、レバー)等、ブドウ球菌はおにぎり、サンドイッチ等からの検出が報告されています。
症状・診断
細菌性食中毒は、嘔吐、腹痛、下痢といった急性胃腸炎の症状を呈することが多く、脱水の改善を目的とした十分な補液が治療の中心となります。持続する発熱、血便、意識障害などの重症化のサインを認めた場合には速やかに医療機関を受診し、入院経過観察や抗菌薬投与が推奨されます。
診断には便や推定原因食品からの培養による菌の検出が原則です。
予防と対策
厚生労働省では、家庭でてきる食中毒の予防ポイントとして以下の6つのポイントを挙げています。
- 食品の購入時(生鮮食品は新鮮なものを購入。消費期限の確認。肉汁などの水分を漏らさない。速やかな冷蔵・冷凍保存)
- 家庭での保存(冷蔵庫に詰めすぎず、目安は7割。冷蔵庫の温度は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下)
- 下準備(調理前、生肉や魚の扱い後の手洗い、包丁やまな板の衛生、速やかな解凍)
- 調理(十分な加熱~中心の温度が75℃で1分間以上)
- 食事(手洗い、調理前後の食品を室温に長く放置しない)
- 残った食品(清潔な器具、皿に小分けして冷蔵庫へ、温め直しも十分な加熱、怪しい時は食べずに捨てる)
“細菌をつけない、細菌を増やさない、細菌を殺す”を三原則に、基本をしっかり押さえた食中毒の予防に努めましょう。
代謝症候群(メタボリック症候群)
カルテ21 内科・生活習慣病科 代謝症候群(メタボリック症候群) |
NKH「健康ライフ講座」№69 2006.1 日本機械保線株式会社 社内報 |
肥満、高血圧、脂質代謝異常(高コレステロールなど)、耐糖能異常(糖尿病)などの病気が複数重なり、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中など重い動脈硬化症の病気に進む危険性が高くなった状態を総称した概念です。それぞれの疾患の程度が軽症であっても、それらが重なってしまうと重い病気を引き起こす可能性が急激に高くなるのでこのような病気を引き起こす可能性が急激に高くなるのでこのような概念が提唱されるようになりました。
原因
主な原因として、内臓脂肪の蓄積がこういった疾患の元になると考えられています、
代謝症候群の兆候を把握していれば、動脈硬化性の疾病の効果的な予防につながると期待されています。
症状・診断
自覚的な症状が少ないので、医学的な診断基準が示されています。その診断基準は「ウエストが男性85cm以上、女性90cm以上、空腹時血糖が110以上、収縮期血圧が130以上又は拡張期血圧が85以上、中性脂肪が150以上又はHDLコレステロールが40以下」の5項目中3項目以上が該当すれば代謝症候群と診断する、となっています。この基準に従うと日本国内では1000万人以上が該当する、と推定されています。
治療
それぞれの疾病に対応した治療が必要です。特に高血圧や糖尿病などは軽症のうちに発見し生活習慣病の改善と最低限の薬剤により疾病のコントロールをすることが肝要です。
予防
予防策としてはカロリーや脂肪が多い食事を見直し、運動不足を解消するような生活習慣の改善ということに尽きます。日頃から体重を自己管理し、腹囲なども時々測定するような心構えが大切と言えるでしょう。かかりつけ医に定期的な検診をしてもらうことも重要な予防策となります。
前立腺肥大症
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カルテ22 泌尿器科 前立腺肥大症 |
NKH「健康ライフ講座」№70 2006/4/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
前立腺は膀胱の真下にある尿道を取り巻くようにあるクルミくらいの大きさの器官で、精液の液体成分を作っています。この前立腺が年齢と共に次第に肥大してくることがあります。肥大するため尿道が圧迫され尿がでにくくなる病気が前立腺肥大症です。
○原 因○
約3割の人では50歳代から前立腺肥大が始まります。原因は明らかではありませんが、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの乱れによるものが一因ちお考えられています。
○症状・診断○
排尿後、尿がまだ残っている感じがする(残尿感)、尿の回数の増加(特に夜間に3回以上)、尿が間に合わない、尿がすぐに出ない、尿の勢いが弱い、排尿中尿が途切れる、排尿時お腹に力を入れる必要がある、我慢できず尿が漏れてしまう(尿失禁)などがみられます。
肥大が進むと、膀胱に尿が残った状態が長くなり、感染症を起こしたり、腎臓の機能が悪くなる場合があります。
自覚症状の程度、触診(肛門から指を入れて前立腺の状態を観察します)、尿流検査(排尿開始から終了までの時間当たりの尿の勢い測定します)、超音波検査(肛門から機械を挿入し、前立腺の大きさを観察します)で診断されます。超音波検査で、正常人では前立腺は平たい形ですが、前立腺肥大症では球状に肥大し、膀胱に突出して見えます。
○治 療○
症状の程度と、前立腺の肥大の程度をあわせて治療されます。初期の段階であれば、薬物治療が効果的ですが、症状・肥大の程度が進むほど手術の必要性がでてきます。薬物治療では尿の出を良くする薬、肥大した前立腺を小さくする薬があります。また頻尿を改善する薬が併用される場合もあります。胃腸薬や喘息薬などでは膀胱の力を弱めて尿閉を起こすものがありあmすので、注意が必要です。進行した状態では、外科的な手術が必要です。尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺を削る方法が広く行われています。肥大が大きい場合には開腹する場合もあります。その他温熱療法がありますが、軽度の場合には有効ですが、進行例では効果はあまり期待できません。
○生活習慣での注意・予防○
尿は我慢せず、下半身を冷やさないよう、入浴などで血液の循環を保つよう心がけます。過度の飲酒は控え、適度な運動をしましょう。また便秘は尿道を圧迫するため注意が必要です。前立腺肥大は癌を合併している率が高いため、検診が大切です。また、人間ドックでは、血液検査で前立腺がんの発見に有効なPSA(前立腺抗原)を含む施設も見られますので、前立腺がん早期発見にも有用です。
胃食道逆流症(逆流性食道炎)
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カルテ23 内科 消化器内科 胃食道逆流症(逆流性食道炎) |
NKH「健康ライフ講座」№71 2006/8/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
食道内へ胃の内容物が逆流することにより引き起こされる症候群をいい、専門的にはGERDと略されて使われることがあります。胃酸を含んだ胃の内容物が食道に逆流することにより食道に逆流することにより食道粘膜に炎症をきたし、胸やけや胸部の痛みや不快感をきたす逆流性食道炎が本症の大半を占めます。
○原 因○
本来胃から食道への逆流を防止するため、食道と胃の間を締める筋肉があります。しかし、その筋肉がうまく働かず胃酸の逆流を起こしてしまうことが考えられます。食道の粘膜は胃のように酸に強くないために炎症が起こりやすいのです。また、食道裂孔ヘルニアといって胃の粘膜がこの境を越えて食道にはみ出していることがあり、本症を助長する傾向があります。この状態は日本人に多いとされています。また、内視鏡的には食道に炎症が無いのにもかかわらず同様の症状をきたす場合があり、症候性GERDと呼ばれています。
○症状・診断○
胸焼け、胸痛、胸部不快感、ゲップ、嚥下障害、のどの違和感、食欲不振、吐き気などさまざまな症状が起こりえます。 胃食道逆流症は、上述のとおり内視鏡と症状により診断されます。慢性的に炎症が続くと食道の粘膜に変化をきたし(パレット食道と呼ばれます)、発ガンの危険性も増した上体となります。
○治 療○
プロントポンプ阻害剤やH2受容体拮抗薬と呼ばれる胃酸分泌抑制剤が特効薬ととなります。ただ、本症は再発をきたしやすいので投薬時間についても医師の指導を守り、自らの生活管理も大切です。また、難治例では内視鏡的手術がなされることもあります。
○生活上の注意○
食べすぎ飲みすぎにならないようにし、喫煙も制限します。また、食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすいので寝る前の食事は控えるようにしたいものです。炭酸飲料、香辛料、酸味の強いものも控え、よく噛んで食べるように心がけることが大切です。
痛風(高尿酸血症)
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カルテ24 内科生活習慣病科 痛風(高尿酸血症) |
NKH「健康ライフ講座」№72 2006/10/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
体内に過剰の尿酸が蓄積する病気のことを高尿酸血症と呼びます。高尿酸血症の患者さんの1割くらいが、関節の中に尿酸の結晶が生じて、強い痛みを伴った発作を引き起こしますが、この発作を痛風と呼んでいます。まさに風が吹いても痛みを感じるという意味です。
○原 因○
尿酸が高くなるメカニズムとしては、大きく分けて排泄が悪くなることと生産が過剰になることがあります。 いずれも遺伝的素因が関与していますが、環境因子として尿酸の原料となるプリン体という物質を多く含む食品やアルコールの取り過ぎがあり、生活習慣病の代表のひとつでもあります。
○症 状○
高尿酸血症そのものには、特に自覚症状はありません。痛風発作は、多くの場合足の親指の根元の関節に発症しますが、突然の激痛と患部の発赤、発熱が生じます。ひどい場合は歩けなくなるほどです。 足首や手首など他の関節に生じることもあります。また、高尿酸血症があると尿中の尿酸が結晶しやすくなり、腎臓や尿管などに石ができることがあります。その石がつまるとお腹や背中に激痛発作が起こることがあります。
○診 断○
高尿酸血症jは血液検査が診断のすべてと言えます。一般的には7.0㎎/㎗以上ほ本症と診断します。痛風の診断は、症状からほぼ判断できますが、確定診断には関節液を採取し尿酸の結晶を調べることになります。腎臓結石などは、超音波検査にて診断されます。
○治 療○
後述する食事療法が何よりも優先されますが、薬剤としては、尿酸の生成を抑制するものと排泄を促すものがり、どちらも効果的です。痛風発作に対しては、痛みと炎症を抑える治療を行います。
○生活上の注意○
食べすぎ飲みすぎに注意することに尽きます。特にプリン体を多く含む食品を制限することです。プリン体を多い食品としては、レバー、うに、白子など内蔵系の食品とビールなどです。鶏卵はそれほど多くはありません。ビール以外のアルコールでも飲みすぎると脂肪肝になり尿酸を上げる原因となりますので注意が肝要です。
うつ病
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カルテ25 精神科 心療内科 うつ病 |
NKH「健康ライフ講座」№73 2007/1/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
統合失調症(旧称:精神分裂病)とともに躁うつ病、うつ病が従来から精神病の代表とされてきました。特に内因性うつ病として脳腫瘍など脳の器質的病変や、過度のストレスによる心理因子が働いて生じる心因性うつ病などと区別されていましたが、最近では気分障害という大きな分類としてまとめられるようになる傾向がありあmす。WHOの調査によれば、有病率は人工の3~5%となっています。また、生涯のうち5~25%の人がこの症状を体験するとも言われている頻度の高い病気といえます。
○症 状○
抑うつ気分、意欲の低下、生活の活動の低下、悲観的な思考障害、心理的要因による身体障害などに分類されます。具体的には憂鬱感、喜びの消失、判断力の低下、不眠、食欲低下、自殺念慮などがあります。
○診 断○
病状頚経過や症状から診断されます。精神科専門医の間で使われる診断基準があり、その項目をどの程度満たすかによって客観的に診断されます。程度が軽度な場合は「気分変調性障害」と診断される場合もあります。
○治 療○
一般に日本の外来診療では、抗うつ薬を中心とした薬物療法が中心となります。従来からの三環形四環形抗うつ薬に加えてSSRIと呼ばれる新しいタイプの薬も使用されるようになり、うつ病治療の幅が広がりました。また、睡眠導入剤や抗不安薬(安定剤)なども適宜組み合わされて処方されます。
重症な場合は電撃療法という治療が行われることもあります。また、認知療法という心理療法が再発防止も含めて注目されていますが、治療に多大な時間を要し、訓練を受けた専門家も未だ少なく、日本の保険医療の中ではまだ一般的ではありません。
○生活、予防上の注意○
癌と同じく早期発見・早期治療が重要だと考えます・また、予防行動として、物事に固執せず、オーバーペースにならないように日頃の生活をコントロールすることが大切です。認知心理学の勉強をするのも良いことだと思います。
高血圧
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カルテ26 内科、循環器科 高血圧 |
NKH「健康ライフ講座」№74 2007/5/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を圧迫する力のことで、心臓の収縮時にその圧力が最も高くなった時を収縮期血圧(最高血圧、上の血圧などとも呼ばれます)、拡 張時に圧力が最も低くなった時が拡張期血圧(最低血圧、下の血圧)といいます。一般にカルテなどには、2つをまとめて「130/80」のように記載されるととが多いようです。この2つの血圧がある程度以上高い状態(高血圧)が長年続くと、動脈の壁が厚くなったり硬くなったりする動脈硬化と呼ばれる状態になりやすいということが分かっています。高血圧は、生活習慣病の代表格でもあります。
症状
特有の症状がないことが特徴といえます。たまに頭痛や肩こりなどを訴える方もいます。時間をかけて動脈血管を傷害することが一番の問題であり、心筋梗塞や脳卒中の原因となります。「静かなる殺し屋」と呼ばれる所以です。
診断
判定基準は、時代や国によって変化します。現在のところ、日本高血圧学会の2004年度に定めたガイドラインでは、最高血圧が140、最低血圧は90がボーダーラインとなっています。血圧は常時変動し、就寝中の午前3時ごろ最低となり、起床後しばらくして最高になるというのが一般的ですが、この日内変動にも個人差があります。診察時は正常だが、職場などで高くなるような「仮面高血圧」や逆に診察時に緊張して高くなる「白衣高血圧」などもあり、診断にはある程度の期間を観察する必要があります。
治療
肥満があれば減量や減塩、適度な運動などの生活習慣の改善がます基本となりますが、中等度以上の高血圧が認められる場合は薬物治療が中心となります。現在は長期服用を視野に入れ、糖尿病や高脂血症を合併している患者にも使いやすい降圧剤が開発されています。また、1日1、2回の服用で済むことも多く、生活への負担も少ないので、きちんと医師に管理してもらうことをお勧めします。
注意
メタボリツクシンドロームが注目されていますが、高血圧もその仲間と考えています。糖尿病や高脂血症、肥満、高尿酸血症などとセットにして治療を考えていくことが大切です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
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カルテ27 内科、消化器科 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 |
NKH「健康ライフ講座」№75 2007/8/1 日本機械保線株式会社 社内報 |
口から肛門までの聞を消化管と呼んでいますが、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門という順序でつながっています。それぞれは食べ物を消化し吸収するために役割を分担しています。胃の中では、食べ物を消毒し消化するために胃液が分泌されます。胃液の中には胃酸とペプシンが含まれ、タンパク質を分解します。そのため、胃の壁自体が破壊されないように、自己を守るための仕組みが備わっています。前者を攻撃因子、後者を防御因子と呼んでいますが、さまざまなストレスによりこのバランスが崩れ、攻撃因子が優位に立つと胃の粘膜が溶けて欠損を生じます。この状態を「潰瘍」と呼びます。胃でも十二指腸でも同様の機序で起こります。最近の研究では、こういった攻撃因子と防御因子のバランスを崩す主な原因は、ヘリコパクターピロりという細菌であるということが分かりました。
症状
主に空腹時にみぞおちの辺りが痛みます。また、胃酸が出過ぎることにより胸やけや酸っぱいゲツプがでます。進行すると、 吐血といって血を吐くこともあります。その他、吐き気、嘔吐、食欲不振といった症状もあります。
治療
多くは、臨床症状で見当がつきますが、確定診断には内視鏡が必要です。特に、ガンとの鑑別診断のためには内視鏡による生検 (細胞を採取して顕微鏡でみる) が必要となります。
その他
この病気は体質やピロリ菌感染が主な原因ですが、過剰なストレスや喫煙、暴飲暴食などの生活の乱れが引き金となります。再発を繰り返す人は、生活習慣の改善とピロリ菌の除菌を推奨します。ピロリ菌とガン発症の関連性も論議されています。現在では、この治療法は保険で行うことが可能になりました。
貧血
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カルテ28 内科、血液科 貧血 |
NKH「健康ライフ講座」№76 2007/10/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態を貧血と定義しています。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶための役割をもつ蛋白ですが、血液が赤色であるのはヘモグロビンの色です。 このヘモグロビンの合成のためには鉄分が必須であり、貧血のなかで最も頻度の高いもの は「鉄欠乏性貧血」と呼ばれるものです。一般的に混同されがちですが、「低血圧と貧血」は別物です。鉄欠乏性貧血の原因は、出血と鉄分の不足 (摂取不足や吸収低下) です。胃や大腸などの消化管からの出血が原因となっていたりします。女性の月経によってもおこります。その他、溶血性貧血や再生不良性貧血、悪性貧血など専門性の高い病気の可能性もあるので専門医の診断が必須です。
症状
全身への酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなるための症状で多彩です。また、慢性 に経過すると、身体が慣れて症状が意識されない場合も少なくありません。動惇、息切れ、めまい、全身倦怠感などが代表的な症状です。また、貧血が進むと素人目にも皮膚が青白く見え、顔色が蒼白となります。
診断
血液検査でほとんど診断がつきます。また、熟練した医師の診察でおおよその判断がつきます。原因究明のためには、胃や大腸の内視鏡や婦人科的検査なども必要となる場合があります。
治療
原因としての出血が存在する場合はその治療が優先されます。月経過多などによる貧血は鉄剤の服用のみで大丈夫なことが多いです。極度の貧血の場合は輸血も必要となりますが、日常的にみられる鉄欠乏性貧血の治療は、鉄剤を適切に服用することで 治療がうまくいくことが多いようです。
その他の複雑な貧血の治療は血液内科の専門医の診療が不可欠です。
その他
ある程度の鉄欠乏性貧血が診断された ら、なかなか食事だけでは鉄分を補いきれ ないことが多いので、初期だけでも鉄剤の 投与を受けるのが賢明と思われます。貧血 気昧の人は普段から食事の鉄分を意識するとよいでしょう。
白血病
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カルテ29 内科、血液科 白血病 |
NKH「健康ライフ講座」№77 2008/1/1 5 日本機械保線株式会社 社内報 |
白血病は「血液のガン」として知られていますが、正確には骨の中心部にある骨髄中に存在する造血幹細胞と呼ばれる細胞がガン化する病気です。造血幹細胞とは血液中に存在するすべての細胞の元になるものです。また、ガン化とは細胞分裂が制御できず、コントロールを失いながら増殖してしまう細胞の状態と考えれば理解が容易です。
診断:血液中の白血球の数や性質を調べます。1μlにつき、正常では数千個くらいの白血球が数万から時には数十万に増加します。確定診断のためには骨髄を採って調べます。 CML の原因であるフィラデルフィア染色体やbcr-abl遺伝子が検出されればほぼ診断は確定されます。
ドライアイ
カルテ30 眼科 ドライアイ |
NKH「健康ライフ講座」№78 2008/4/20 日本機械保線株式会社 社内報 |
ドライアイとは涙(涙液るいえき)の量が減ったり、その機能が低下することにより眼球の表面部分である角膜(黒目の部分)や結膜(白目の部分)になんらかの障害が生じている状態を総称した病態です。病態の理解のために、涙の役割の主なものを列挙してみる。角膜や結膜の乾燥を防ぐ。角膜の表面を滑らかにして光の屈折を整える。角膜や結膜への栄養を運んだり異物や不要物を洗い流す。感染を防ぐ。涙はこのよな重要な役割を果たしています。「たかが涙、されど涙」といったところでしょう。
症状
症状は前述の涙の機能が損なわれるために出ることになります。最も多い自覚症状は、角膜の乾燥によるものです。眼が乾く、ゴロゴロした違和感がある、痛むなどです。感染しやすくなり、目やにが多い、かゆい、充血するといった症状も比較的多いようです。長く続くと眼がかすむといった視力異常を訴える方もいます。
診断
問診による自覚症状の評価が大切ですが、眼科では、涙の量の測定と角膜の表面の観察が確定診断として行われます。涙の測定法には、シルマー試験、フェノールレッド綿糸法、涙液層破壊時間測定法と呼ばれる方法のいずれかもしくは組み合わせで行われます。角膜結膜の観察は細隙灯(さいげきとう)顕微鏡と呼ばれる眼科診察器具にて観察します。涙液量が少なく、角膜結膜の表面に障害を認めれば確定診断となります。
治療
涙の分泌を増加させるような根本的治療はまだ確立されていないため、人工涙液と呼ばれる点眼薬で涙を補充していく治療法が主となります。他の病気が原因でドライアイをきたしている場合は、原因となる病気の治療を行います。角膜や結膜の感染を合併した場合は抗生剤の点眼を行います。
その他
根本的治療ではなく、対症療法を続けなくてはなりませんので、根気が必要です。生活環境が影響している場合もありますので、その場合は改善が必要です。
特定健診
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カルテ31 特定健診 |
NKH「健康ライフ講座」№79 2008/8/1 日本機械保線株式会社 社内報 |
もうすぐ当社も定期健康診断の季節がやってきます。今回は、今年度から導人された「特定健康診査』について寺下先生に解説していただきました。メタボの診断に内心ドキドキしていらっしゃる方もいるのでは?
○メタボリック症候群○
現代社会において、食文化の変化、運動不足などの生活環境の変化に伴って、いわゆるメタボリック症候群(内臓脂肪症候群:内臓脂肪の蓄積により肥満、高血圧、高脂血症、耐糖能異常(糖尿病)を引き起こすと考えられている。巷でほ、メタボと略して呼んでいるようです)が国民の健康および医療経済に大きな脅威となってきました。実際、その予備軍も含めると2000万人にも及ぶと推定されており、社会的にも低カロリー食品や、運動グッズが流行するなど健康に関心が集まってきています。しかし、目標が明確でないことや、個々人の関心や努力によって成果に大きなばらつきが生じるため、個人レベルでの健康対策には限界があります。
○特定健診とは○
これに対して、平成20年4月から厚生労働省によって打ち出された注目すべき対策が「特定健康診査(特定健診)」です。この健診の特徴は、40歳から74歳の家族を含めた健康保険加人者全員を対象にしていることと、健診結果により必要がある者(有所見者)に対して行われる指導(特定保健指導)を義務化していることです。 また、内臓脂肪蓄積の判定に「腹囲」を採用していることも特徴的です。判定の結果、リスクごとにそれぞれクラス分けして、リスクに見合った指導(特定保健指導)を行うことによって、メタボリツク症候群の延長線上にある生活習慣病や、さらに深刻な脳梗塞、心筋梗塞などの発生を末然に防ぐことが可能と考えられています。
○大事なのは疾病予防○
この保健政策に対しては、肥満者の社会的不利益、健診脱落者へのぺナルティーの適正性、医療費削減の可能性、メタボリック症候群の診断基準・医字的意義の未確定性など様々な間題点が指摘されております。さらに特定健診でほ、メタボリック症候群に重点を置くあまり、禁煙の重要性などが強調されていないところが気に掛かります。新しいことに批判はつきものですが、疾病予防の対策として責重な税金を投入して国民の健康を維持しようというメタボ対策ながら「太っ腹な」政策は前向きに評価し、成果を大いに期待したいものです。せっかくの国をあげた保健政策に皆さんも真剣に取り組んでみませんか。
インフルエンザ
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カルテ32インフルエンザ |
NKH「健康ライフ講座」№80 2008/11/4 日本機械保線株式会社 社内報 |
秋の深まりとともに、朝晩は冷え込む日も目立ってきました。気温が下がるにつれ、インフルエンザの流行に関する二ュ一スを目や耳にする機会も増えてきます。
○インフルエンザとは?○
インフルエンザは普通の風邪と同様ウイルス感染が原因で、特徴的な症状は、38度以上の高熱や寒気・筋肉痛、強い咽頭痛などです。冬は、乾いた冷たい空気によりのどや鼻の粘膜が乾燥して免疫カが落ちる一方で、ウイルスの活動が活発になる季節のため、例年12~2月頃に流行します。 ところで、現在東南アジアを中心に高病原性の鳥インフルエンザが発生していますが、それがヒトに感染し、ヒトの体内で増える事ができるように変化し、さらにヒトからヒトヘ感染するように変異して発症する病気が新型インフルエンザです。今後の流行の可能性が懸念されていますが、基本的な予防や治療は通常のインフルエンザと同様、ワクチンの開発も進められています。
○予 防○
インフルエンザウイルスは感染カが強いため、咽頭粘膜とウイルスとの接触を防ぐことが重要となり、予防で一番大切な事は、「うがいと手洗い」により・ウイルスを洗い流すことです。人ごみでほ、マスクの着用でウイルスの侵人を少しでも防ぐ事が効果的です。家の中で暖房をかける際は空気の乾燥に気を配り、加湿器などをうまく使ってください。十分な栄養や睡眠をとり免疫力在高めることも重要なポイントです。 また、ワクチン接種も有効な予防法です。その年に流行するウイルスのタイプによって効果は違いますが、発症するリスクを半分程度に抑えることができるようです。効果が出るのに2週間から1カ月程度かかるので、本格的な流行シーズンが来る前に早めに接種するのがポイントです。
○治 療○
まず確定診断は、のどや鼻の粘液を採取する検査で行います。治療はタミフル、リレンザなどの抗ウイルス薬がありますが、発症後48時間以内の服用開始でないと効果が期待できません。また若年者でほ重篤な副作用の可能性が指摘されており、医師と充分に相談する事が大切です。さらに、発熱や咽頭痛等の症状緩和には、解熱鎮痛薬なども処方されます。多くは1週間以内に症状は改善しますが、高齢者や幼児では肺炎の合併にも注意が必要です。
心室細動
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カルテ33 救命救急・循環器内科 心室細動 |
NKH「健康ライフ講座」№81 2009/01/20 日本機械保線株式会社 社内報 |
最近、公共の場所などで見かけることの多くなった「AED」。
一刻を争う心臓のトラブルに、一般の人でも応急処置ができる装置です。
でも、まずそれがどんなときに必要になるのか、知っておきましょう。
○解 説○
心臓突然死のほとんどがこの心室細動という不正脈が最終的な原因として起こります。心室細動を引き起こす原因で、最も多いのは心筋梗塞です。心筋梗塞は、日本人の死因ワースト3に入るもので、欧米では最大の死因であることから、日本でもこれからの増加が気になる病気です。そのほかに心筋症という病気が原因にもなりますし、胸を強打するという衝撃でも心室細動を起こすことがあり、原因不明のものも少なからずあります。
○症 状○
突然心臓がけいれんを起こし、ポンプとしての機能を失うことになります。脳をはじめとする全身への血流が途絶えますから、意識を失いいわば仮死状態になります。
○診 断○
正確には心電図により判定が必要になりますが、突然の意識消失、呼吸停止、脈拍の触知不可(手首や頸の動脈の脈拍を指で感じることができないこと)などにより判断することになります。
○治 療○
緊急時は、心マッサージ、電気ショックによる蘇生術がなによりも優先されます。その上で、原因となる疾患に対処することが必要です。心筋梗塞なら、動脈カテーテルにより詰まった血管をバルーンという風船のようなものやステントというストローのようなもので広げたり、ときにはバイパス手術をします。不整脈そのものに、薬物治療をしたり、ペースメーカーを使用することもあります。
○AEDなど○
本症は、発作が起こってから電気ショックによる治療を行うまでの時間が、一番の決め手となるために、救急隊や病院搬送が間に合わない場合があります。そのために一般人でも間違いなく使えるような、オートマチック仕掛けの電気ショックの器械が普及し始めました。自動体外式除細動器(英語で略してAED)と呼ばれるもので、駅構内や空港、スポーツ会場などにも設置されるようになりました。この機会に使い方を学んではいかがでしょうか?
新型インフルエンザ
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カルテ34新型インフルエンザ
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NKH「健康ライフ講座」№83 2009/8/14 日本機械保線株式会社 社内報 |
この春、メキシコに端を発して世界中に広がった新型インフルエンザ。日本では夏場にいったん勢力を弱めたものの、秋以降にはより強力なインフルエンザとして流行するのではないかともいわれています。今回は「新型インフルエンザ理解のポイント」をQ&A方式で教えていただきました。
Q.従来のインフルエンザとどう違うの?
A.新型と区別するために、従来のインフルエンザを季節性インフルエンザと呼んでいます。
新型インフルエンザは、新たに人から人へと伝染する能力を持つようになったインフルエンザウイルスが感染して起こる疾患です。
一般的に、ウイルスは変異といって変身するのが得意です。特にインフルエンザウイルスのA、B、C型のうちA型は変異する傾向が強くさまざまな種類のものが見つかっています。今回の原因ウイルスは、そのA型ウイルスの一種ですが新たに発見されたものであるために、「新型」と呼ぱれています。
Q.感染力が強いが弱毒とはどういうこと?
A.今回の「新型インフルエンザ」は、ご存知のように感染力が強く、感染者から周囲の人に伝染する確率が高いようです。しかし、一般に重篤になる率が、季節性とあまり変わらない低さです。
また、弱毒か強毒かを決定する要素に、ウィルス増殖が呼吸器系に留まるか全身の臓器まで広まるかがあります。今回の「新型インフルエンザ」はほぽ呼吸器系に留まり弱毒性と判断されます。
しかし、インフルエンザウイルスは変異しやすく、強毒性に移行すると感染力、毒性ともに高い脅威のウイルスになる恐れがあるので関係者は慎重になっているのです。
Q.温暖な気候でも何故、流行するの?
A.インフルエンザウイルスは他のウィルス同様に、単独で空気中で増殖することはできないため、
宿主である動物に感染して増殖します。増殖には30~40度の温度下で高い湿度が最適であり、
必ずしも日本でいう冬が最適環境という訳ではありません。季節性インフルエンザが冬期に流行する理由は、感染様式(ウイルス飛散)および宿主側の要因が大きいと考えられています。
また、冬期は宿主であるヒ卜の鼻腔や咽頭などの粘膜が乾燥や低温のため感染しやすい状態であることも感染拡大の大きな要因です。
今回の新型インフルエンザが、メキシコなど比較的気温の高い場所から発生し、湿度も温度も上昇してきていた時期に日本でも感染拡大して世界的な流行を見せたのは、宿主側の要因つまり、このウイルスに対するヒトの免疫が乏しいことが大きな要因であろうと考えられます。
従って、今後冬期にかけてウイルスが飛散しやすい季節になると、感染がさらに拡大する可能性は充分にあり、より一層の注意が必要です。
Q.症状や予防法、治療法は?
A.基本的には季節性インフルエンザと同じで、のどの痛み・鼻汁・くしゃみ・咳・頭痛・寒気・発熱といったかぜ症状の他に、筋肉痛や関節痛・腹痛・下痢などです。予防には手洗い・うがいの徹底、感染の拡散防止として咳・くしゃみが出る時はマスクをつけることが重要です。
治療には、抗インフルエンザウイルス薬であるタミフルやリレンザが有効です。
パニック障害
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ35<精神科、心療内科>パニック障害
2009/9/30
急に息が詰まる感じと、このまま死んでしまうのではないかという恐怖-。
「パニック症候群」の原因は過度のストレス。生き馬の眼を抜くという芸能界での羅患も多く、ワイドショー等で取り上げられることがある身近な病気です。
(概説)
不安障害と呼ばれる一群の疾患の中に位置づけられる病気です。中心になる症状は激しい不安とそれに伴う多彩な身体症状であり、循環器系の救急外来など他の専門科を受診して検査の結果異常はないというケースが多く見られます。実際、東京都などの救急出動の原因となる疾患の上位を占めていると言われています。
(症状)
ある日突然発作は起こります。動悸、息苦しさ、胸痛、発汗、ほてり、手足の震え、めまい、非現実感、狂ってしまうのではないか、死んでしまうのではないか、しびれ感などの症状が突然出現します。最初の発作以降は、予期不安といい「また発作が起こるのでないだろうか」という不安が続くようになります。これが本疾患の中心的な症状と言えます。多くの人は「地下鉄」「高層ビル」「エレベーター」「映画館」などすぐには逃げ出せないところを嫌い、ひどい場合はそこに行けなくなります。これを「広場恐怖」と呼んでいます。
(診断)
病状経過や症状から専門医の臨床経験から比較的容易に診断されます。心電図などの身体的検査でなにも異常がでないことも本疾患の診断の助けとなります。最初の発作の時に、睡眠不足などの慢性疲労があったり、元来用心深いなどの性格も影響はします。
(治療)
パニッック発作を消失させ、予期不安を解消させることが治療の目的となります。従来はアルプラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタン)というベンゾジアゼピン系抗不安薬が特効薬として使われていましたが、最近ではそれに加えて、他の抗不安薬やSSRIとよばれる抗うつ剤に属する一連の薬剤も使われます。いずれも専門医により経過を観察しながら薬の匙加減をしていくことが重要です。精神療法としての認知行動療法は、他の精神疾患と同様とても重要ですが、日本では、保険制度や経済的な理由などから普及していないのが現状です。
(生活、予防上の注意)
癌と同じく早期診断早期治療が重要だと考えています。また、予防的行動として、物事に固執せず、ストレスをためず、オーバーペースにならないように日頃の生活リズムをコントロールすることが大切です。認知心理学の勉強をするのも良いことだと思います。
くも膜下出血
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カルテ37 脳神経外科 くも膜下出血 |
NKH「健康ライフ講座」№86 2010/7/21 日本機械保線株式会社 社内報 |
人一倍健康に留意し、体を鍛えているはずの元プロ野球選手が突然、くも膜下出血で前途を絶たれたニュースはショッキングなものでした。前兆を見逃さず、慎重に対処することが重要となる病気です。
○解 説○
急激な脳血管障害の発作を脳卒中と呼びますが、その1割程度を占めるのがくも膜下出血であり、命を脅かすとても怖い病気の代表といえます。外傷や動静脈奇形というものが原因の場合もありますが、たいていは動静脈の破裂が原因となります。日本では、年間に10万人中10~20人が発症すると推計されています。また、動静脈は人口の2%~3%の人がもっていると推定されていますが、その大きさなどにより破裂の危険性は異なってきます。
○症 状○
突然の激しい頭痛で、たいていの場合は「今まで体験したことのない、金づちで殴られたような頭痛」というように表現されます。まれに軽い頭痛のみで来院されることもあります。重症の場合は、意識障害を伴い、即死ということもあります。
○診 断○
診断は症状から推定されることが多いようですが、確定診断としてX線CT検査が用いられます。軽症の場合は、腰椎穿刺という方法で髄液を採取し血液が混入されているかどうかで診断される場合もあります。くも膜下出血が診断されれば、動脈瘤の場所を調べるために、血管造影を行います。従来からのカテーテル検査に加えて、MRIを使った方法も進歩してきています。
○治 療○
治療が極めて困難な病気ですが、最近の医療技術の進歩により、救命率が上昇してきています。全身管理と再破裂防止の手術の両輪が治療の中心となります。開頭して、動脈瘤の付け根の部分にクリップをかける方法が標準ですが、血管内治療といって、動脈からカテーテルを通じて、動脈瘤の中に詰め物をして再破裂を防ぐ方法も場合により選択されます。
○生活、予防上の注意○
高血圧の管理が基本となりますが、脳ドックなどにより、破裂前の動脈瘤を発見し、予防的治療をすることが可能になってきました。2~3㎜の小さな動脈瘤は破裂の危険性が低いので経過観察となりますが、5㎜を少し超えている程度の場合の判断が難しく、専門医と納得のいくまで相談する必要があります。
肺結核
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ36<内科、呼吸器科>肺結核
2010/10/15
日本では、じつに4人に1人が感染している可能性があるといわれる肺結核。肺結核は過去の病気ではありません。空気感染することと、何年も前に吸い込んだ菌が体力の低下で活動を始めることがあるという怖さを持っています。
(概説)
結核菌という病原体による感染症を結核といいますが、その9割以上は肺に病巣がある肺結核です。かつては日本の国民病と呼ばれるほど、罹患率、死亡率も1位でしたが、治療や予防の効果が現れ、近年では死亡率が10万人当たり5人程度に落ち着いてきています。しかし、平成17年の罹患率は10万人当たり22人、年間の新規結核患者数が5000人以上と、先進諸国の中では結核発症者の多い国と言えます。
(症状)
咳と痰、微熱、進行すると血痰、体重減少などがみられます。結核菌は比較的弱い菌ですので、感染初期は症状が少なく進行してから気がつくことが多いので、長く(2週間以上)続く咳や微熱や、原因不明の体重減少があった場合は、呼吸器科や内科の医師と相談しましょう。
(診断)
胸部レントゲン撮影やCT検査とともに、痰の培養検査が重要です。培養検査の前段階にあたる、結核菌数を調べる通称ガフキーと呼ばれる検査で既に陽性の結果が出れば、すぐに専門病院での隔離入院が必要となります。それは他人への感染も心配されるためです。診断においては、特に、結核菌と同種の他の抗酸菌が原因となる非結核抗酸菌症や肺がんとの鑑別が大切となります。
(治療)
基本は入院の上、薬物治療となります。標準的には、リファジン、イスコチン、エブトール、ピラマイドという薬剤を使用します。痰に菌が排出されなくなると、外来治療も可能ですが、治療には1年程度かかる場合も多いことは念頭に置く必要があるでしょう。また、薬に対して耐性を持った結核菌の登場が問題となっています。
(生活、予防上の注意)
禁煙は勿論、規則正しい生活と十分な栄養補給が原則です。予防的にはBCGの接種が効果的ですが、平成15年から、小学校での義務接種は廃止となっていますので、各個人の判断が重要です。
加齢黄班変性症
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カルテ38 眼科 加齢黄班変性症 |
NKH「健康ライフ講座」№87 2010/10/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
成人の失明原因として欧米では1位、我が国でも生活の欧米化で4位にランクされる怖い病気。最近、早期発見すれば進行をある程度で食い止められる治療法が開発されました。
○解 説○
網膜の中央の、最も大切な部分である黄班と呼ばれる部分が、加齢により変化し傷んでくる病気です。網膜は、カメラで例えるとフィルムやCCDにあたるところですので、視力と密接に関係します。米国では本疾患が失明原因のトップであり、日本でも糖尿病性網膜症とともに最大の原因の1つとなってきました。滲出型と萎縮型に大別されますが、日本では前者が多いとされます。難病の1つですが、最近ではいくつかの治療法が開発されてきましたので早期発見・早期治療が大切です。
○症 状○
視野の中心部が暗く見えにくくなったり、ゆがんで見えるという症状が多いようです。視力も低下しますが、最初は片目から症状が出ることが多いために、他方の目でカバーし気づくのが遅れることがあります。少しでもおかしいと感じたら、眼科医に相談するようにしたいです。
○診 断○
症状から診断は推定されることが多いですが、確定診断として普通の眼底検査に加えて蛍光眼底造影検査が重要な検査の1つとなります。また、OCT検査と呼ばれる網膜の断層を見る検査や、中心視野検査等も有用です。これらにより滲出型か萎縮型かの診断まで行います。
○治 療○
滲出型に対しては、光線力学的療法と呼ばれる方法が開発され、全国の200カ所近くの施設で行われています。現時点での最も有効な治療法といえるでしょう。また薬剤を眼球内に注入することも行われます。萎縮型には、これといった決め手となる治療法はなく、ビタミン剤の投与等が試みられています。
○生活、予防上の注意○
本疾患の原因は、加齢以外に日光(紫外線)や喫煙、栄養障害、酸化ストレスなどが考えられていますので、それらに対する対策も予防的には大切いえます。そして繰り返しになりますが、なによりも早期発見・早期治療が重要です。
不眠症
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カルテ39 心療内科、精神科 不眠症 |
NKH「健康ライフ講座」№88 2011/1/14 日本機械保線株式会社 社内報 |
国民の2割以上が悩んでいると推定される「不眠症」 。原因となる疾患が潜んでいる場合もあり、軽視は禁物です。
○解 説○
睡眠に対する悩みは個人差が多く、したがって「不眠症」という定義も難しいのです。しかし、何らかの睡眠障害があると思われる頻度はかなり高く、少なく見積もっても人口の2割以上だといわれています。また、この不眠は加齢とともに多くなり、高齢化現象を抱える日本にとっても真剣に考えていかなければならない病態ともいえるでしょう。
○症 状○
不眠症のタイプは「入眠障害」「熟眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」に分けられます。「中途覚醒」と「早朝覚醒」は一緒にして「睡眠維持障害」と分類されることもあります。それぞれはその名前から容易に理解されると思います。「入眠障害」は、いわゆる寝つきが悪いと称されるもので、一番多いタイプです。「熟眠障害」は、ある程度の時間は眠れているが「眠った気がしない」と感じるものです。ストレスによる不眠に多いタイプです。「中途覚醒」「早朝覚醒」は、朝早く眼が覚めてしまい、その後寝つけないというもので、比較的高齢者に多くみられます。熟眠感があって、日中の生活に支障がなければ問題ないことも多いものです。
○診 断○
症状から診断は推定されることが多いですが、他の原因がないか探索する必要があります。他の原因としては、精神障害やアルコールや薬物依存、睡眠時無呼吸症候群などに代表される身体疾患などがあります。これらの原因があっても、「不眠症」の診断はつくことにはなりますが、治療方針が違ってきます。
○治 療○
まず、原因となる基礎疾患があれば、その治療を並行または優先させることが大切です。自律訓練法などの心理療法を併用すると効果的ですが、特に不眠で病院に来るほど悩んでいる場合は、即効性のある薬物療法を行うのが一般的です。睡眠薬は開発が進み安全性が高まっていますが、副作用や依存性の問題もあるので、主治医と相談しながら、こまめな匙加減をすることが肝要です。
○生活、予防上の注意○
何よりも規則正しい生活が重要です。我々人間は、本来の日内リズムが存在し、覚醒と睡眠のリズムをコントロールしています。脳の松果体に存在するメラトニンがその重要な役割を担っているということは有名ですね。また、最近では細胞レベルにおいても、時間をコントロールしたり時間に制御されたりするメカニズム(時計遺伝子)があるらしいことが分かり注目されています。それらを正常に機能させるためにも、規則正しい生活は必須ということになります。職業上、深夜勤務が頻繁にあったり、海外出張等で時差をさけられない方は、昼間、日光による明かりを十分に浴び、十分な運動を生活の中に取り入れ、体内時間のズレをまめにリセットするよう心掛けることが大切です。
テニス肘(使い過ぎ症候群)
NKH「健康ライフ講座」NO.89 日本機械保線株式会社社内報
カルテ40<整形外科>テニス肘(使い過ぎ症候群)
2011/4/20
○解 説○
上腕骨(いわゆる二の腕の部分にある骨)の肘に近い部分に付着する筋肉(正確には腱と呼ばれる)に慢性のストレスがかかることにより、長期にわたり継続する運動痛を生じる疾患です。テニスを日常的に行う人に多く見られたことから「テニス肘」と呼ばれますが、ゴルフによる肘のストレスから生じる「ゴルフ肘」などもあります。しかし、最近では、テニスもゴルフもしない中高年者に同様の症状を来すことも多く、いわゆる「使いすぎ症候群」とも考えられています。特にコンピュータのマウスや携帯電話の使い過ぎ等が原因になりやすいようです。
○症 状○
テニス肘に代表される、右腕(利き腕)の外側(上腕骨外側上顆と呼びます)に起こることが多く、痛みは肘の外側(親指側)から前腕部にかけての動作時に生じます。ゴルフの場合は、内側(小指側)や左腕の肘に起こることがありますが、テニス肘に比べると頻度は少ないようです。長時間のマウスの使用や不慣れな動作を継続して行うと本症を発症することがあります。
○診 断○
症状経過から診断は推定されることが多いですが、肘の特定部分に圧痛(押して痛むところ)があり、手関節伸展試験などと呼ばれる誘発試験で要請が出れば本症と診断されます。
○治 療○
痛みが出る動作を行わず、腕の徹底的な安静が最も大切な基本となります。初期の痛みが強い時期は、鎮痛消炎剤の服用や湿布を行う場合があります。また、どうしても行わねばならない日常動作をサポートするために、テニス肘専用のバンドをするのも勧められます。症状が激しい場合は、ステロイドの局所注射をする場合もあります。また、回復期には、ストレッチや筋力を増強するためのトレーニングも重要です。
○生活、予防上の注意○
本症が疑われるような痛みが出現した場合は、早めに患部の安静に努め、痛みが持続する場合は整形外科に相談に行きましょう。すっかりよくなるまでには半年から1年程度かかることが多いようです。
熱中症
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ41<救急救命科、内科>熱中症
2011/7/22
(概説)
人間の身体は、いろいろな環境に適応できるように自動調整する機能を持っています。その一つに体温管理があります。外気温にかかわらず、体温を36度から37度程度に維持しようとする仕組みが備わっています。こういった機能を総称して「ホメオスターシス(恒常性)」と呼びます。しかし、異常な高温環境下にさらされることによりこういった体温の恒常性機能に支障が生じることがあり、それを熱中症と呼びます。
(症状)
程度により、様々な症状が見られますが、軽度の場合はこむら返りや、立ちくらみなどが生じ、中等度になると、強い疲労感、めまい、頭痛、吐き気、体温の上昇などが見られるようになり、さらに進むと、意識障害や全身けいれん等の脳神経の症状が出現するような重症となります。
(診断)
症状が起こった状況から専門医が判断します。頭部外傷や脳卒中、心因性のものなどとも鑑別が必要な場合がありますが、主には症状経過から診断がつくことが多いでしょう。
(治療)
軽症の場合は、涼しい場所で、安静にし、ナトリウムの含んだスポーツ飲料等の水分補給で改善します。中等症になると、病院での輸液等が必要になり、重症では、致死率が高くなる重症では、早急な救急救命処置を含んだ対処が必要な場合も多々あります。
(生活、予防上の注意)
高温多湿環境での長時間、強度の運動、作業中に生じることが多いので、まめな休憩と水分補給が大切です。直射日光下だけでなく、夜間でも高温で風通しの悪いようなところでの長時間作業には注意が肝要です。身体が順応していない作業の開始初日などは特に慎重にした方がよいでしょう。睡眠不足や不規則な食事や二日酔いなどは避けるようにしたいものです。予防、対処法ともに「FIRE」と呼ばれる処置を覚えておきましょう。FはFluid(フルイド)の略で水分補給、IはIcing(アイシング)で冷却、RはRest(レスト)で休息、EのEmergency(エマージェンシー) は緊急事態で、救急車を呼びましょうという意味です。
糖尿病
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ42<内科>糖尿病
2011/10/7
糖尿病はかつての肺結核のように今や日本の国民病といわれるようになりました。この欄で本病を取り上げたのは8年前になり、その診断基準や治療法に目覚ましい進歩がみられますので再度勉強したいと思います。
とはいっても基本的な考え方は変わっていません。糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が高い状態が持続する病気です。これは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが弱くなることが原因です。そのメカニズムにはいくつかのタイプがあります。インスリンは食物中から吸収されたエネルギーを体内の細胞にとりこみ、血糖が一定値以上に上昇しないように管理する役割を持っています。糖尿病になると細胞内には必要なエネルギーが取り込まれず、血液中のブドウ糖濃度は高い状態が持続し、その高血糖が血管や神経を障害するため様々な合併症を起こすことになります。糖尿病は遺伝的な要因に加え、暴飲暴食、ストレスなどの生活環境が引き金となって発症する生活習慣病の代表です。また、1型糖尿病と呼ばれる遺伝がメインの原因となる若年性の糖尿病もありますが、生活習慣病の一つである一般的な糖尿病はⅡ型となります。
(症状)
初期には自覚症状がないのが特徴です。進行すると、のどの渇き、多飲、多尿、だるさ、体重減少、目のかすみ、手足先のしびれといった症状が出現します。したがって定期的な検診(特に血液検査)が重要となります。
(診断)
診断基準も、近年変わりつつありますが、基本的には血液検査で体内の血糖値の動向をみることにより診断されます。1回の血液検査で、大まかな血糖の動向を知ることができるHbA1cと呼ばれる検査が診断のみならず経過を診るのにも大切な指標とされています。合併症の進行程度を知る検査としては、腎臓病を調べる尿中蛋白定量検査、網膜を調べる眼底検査、神経障害を調べる自律神経機能検査などがあります。
(治療)
生活習慣改善とインスリンなどの薬物療法が基本となります。薬物療法は、近年、大きく進歩してきました。インスリン療法は24時間平均して血中濃度を維持できる持効型インスリンの開発によって改善され、また経口薬として小腸から分泌されるインクレチンという血糖調節ホルモンに着目した新しく有望な経口治療薬が日本でも使われるようになり、治療法の選択肢が増えてきました。主治医とよく相談してきちんと血糖のコントロールをすると糖尿病もそれほど恐れることはありません。
(生活、予防上の注意)
糖尿病の治療は他の生活習慣病と同じく、食事療法、運動療法と生活習慣の改善がまず基本となります。糖尿病は現在の医学では残念ながら完治することはなく、進行を止める事が目標となりますので、無理な食事制限と挫折を繰り返すよりも継続性を重視した生活改善が有効です。定期的な診察、検査を受け、未然にコントロールすることが特に重要と言えるでしょう。
男性更年期障害
NKH「健康ライフ講座」NO.92 日本機械保線株式会社社内報
カルテ43<内科、泌尿器科、男性診療科など>男性更年期障害
2012/1/5
【概説】
女性の更年期障害は、疾病概念としてほぼ確立されて、診断基準や治療法も研究が進んでいます。病院でも婦人科を中心に一般的に診療がされています。一方、男性更年期障害が注目されるようになってきたのは最近であり、現時点では必ずしも医学界においてコンセンサスが得られた疾患というわけではありません。
しかし、男性も年齢とともに男性ホルモンが減少し、そのため性機能や認知力の低下がみられたり、筋肉の量も質も低下する事が分かってきました。医師の間でも研究チームがこの病態の研究調査をするようになり、今後こういった研究成果も踏まえて、男性更年期障害という概念が広がる可能性があるでしょう。専門家の間ではLOH(ロー)症候群(late-onset hypogonadism(レイト オンセット ハイポゴナディズム):加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれる事もあります。
【症状】
極めて多彩です。疲労感、倦怠感、不眠、イライラな症状を中心に、不定愁訴(ふていしゅうそ)が絡みあいます。自然な老化によるものか、病気の範疇(はんちゅう)かは今後の研究により選別されていくと思われます。
【診断】
問診テストを含めた詳細な問診が初診時に大切で、男性ホルモンであるテストステロンの血液中濃度を調べる事で診断されます。<
【治療】
男性ホルモンの補充療法が現在、効果・副作用を調べながら検討されています。その他、症状に応じた薬物治療が併用されます。
【その他】
本疾患は、新しい概念でまだまだ研究段階であるという事を理解しておきましょう。日頃からストレスをためずに、心身ともに健全さを保つような生活が予防法といえるでしょう。他の病気でもそうですが、特にホルモンが関与する病気では、過剰なメンタルヘルスが引き金となる事が多いものです。
尿路結石
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ44 <内科、救急診療科> 尿路結石
2012/4/20
○概 説○
腎臓で作られた尿が排出される尿管→膀胱(ぼうこう)→尿道までの経路を尿路といい、その経路上に石が生じると尿路結石となります。臨床的に問題になることが多いのが、腎臓の出口から膀胱までの間の尿管と呼ばれる部分に石が詰まった状態で、その状態を尿管結石と呼びます。比較的頻度の高い病気の中で、胆石や痛風とともに痛みの強い代表的病気の1つです。腎臓の出口付近の腎盂(じんう)と呼ばれる部分で生じた石が、尿管の狭い部分に詰まり、尿の流れが止まった時に激しい痛みの発作が起きます。石ができる原因は、ほとんどの場合はっきりせず、時にカルシウムの代謝をコントロールするホルモン機能の障害が認められます。
○症 状○
突然襲ってくる背中や腰や下腹部の激痛発作が典型的です。あまりに痛くて、どこが痛いのかさえ分からないこともあるくらいです。また、石が尿管の狭いところを通過してしまうと、嘘のように痛みが消失してしまうことも本症の特徴です。一般的に尿管には狭い個所が2か所あります。運が悪いと1つの石で2度痛むことになります。また、尿が濁ったり、血尿になることもあります。
○診 断○
症状と血尿の存在でほぼ診断がつきます。超音波で石を確認できる時もあります。<
○治 療○
痛みを抑え、水分を補給して石の自然排出を待つことが原則です。しかし、長時間にわたり石が詰まって腎臓の腫れる水腎症(すいじんしょう)の状態が続くと腎臓の機能が障害されますので、すみやかな対処が必要です。身体の表面から特殊な装置を用いて衝撃波を当て、石を細かく粉砕する治療が開発されており、今では一般化されています。それでもだめな時は、内視鏡や手術により石を取り出すことが必要になる場合もあります。
○その他○
本疾患は、比較的頻度が高いのですが、原因がわかっていないので、特別な予防対策はありません。偏った食事をせず、十分な水分を日頃から摂取し、適切に運動を継続することが大切です。
急性肝炎
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
「カルテ45」急性肝炎
2012/7/23
【概説】
肝臓に起こる急性(数日から数週間単位のスピード)の炎症性疾患を急性肝炎と呼びます。原因のほとんどがウイルスですが、他に薬剤やアルコール、自己免疫≦などが原因となる場合があります。原因ウイルスにもA,B,C,D,E型が確認されており、その過半数がA,B,C型で占められています。 A型は食物や水を通して感染し、B型とC型は血液を介します。A型は急性期の症状や検査データの値は激しいですが、数週間で自然治癒します。B型とC型、特にC型は慢性化して肝硬変や肝臓癌の原因となりやすいので、綿密な経過観察が必要となります。また、B型を中心として1%程度が激症型と呼ばれる重度の経過をたどり、命にかかわる場合もありますので注意をしなければなりません。
【症状】
初期は全身のけだるさなど感冒のような症状が主体となります。食欲低下も主な症状です。進行すると眼球結膜(白めの部分)が黄色くなって気がつくことが多いのですが、黄疸が出現します。激症化の場合は、出血傾向や意識障害が見られることもあり、この場合は集中治療が必要となります。
【診断】
血液検査でほとんど診断がつきます。ウイルスが原因の場合は、その型も診断士対策の計画に役立てます。超音波検査などで、腫瘍や医師などの基質的原因(目に見えた変化を伴うもの)がないかを確かめておくのも大切です。
【治療】
原則は入院した上で安静と補液による栄養管理が中心となります。上記で説明した激症化しないかどうかを観察することが重要です。またC型肝炎はで慢性化する兆候が見られた場合は、インターフェロンによる治療も選択されます。またウイルス以外の原因の場合でステロイド治療が行われる場合もあります。A型ほぼ完全に自然治癒しますが、C型は慢性化する確率が高くなります。
【予防、その他】
A型は東南アジア方面への旅行などで感染するケースが多いようです。B型とC型は輸血、針刺し事故などで感染します。またB型は性感染症の1つともされています。
アナフィラキシー
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ46<救急>アナフィラキシー
2012/10/15
特定の原因物質により引き起こされた全身性のアレルギー反応をアナフィラキシーと呼びます。専門的になりますが、アレルギー反応にかかわるIgEという抗体を介して生じる即時型アレルギーに加えて、原因物質が肥満細胞と呼ばれるアレルギー関連細胞などに直接作用して生じるアナフィラキシー様反応も含めてアナフィラキシーとして同様の治療を行なう必要があります。しばしばショック状態を起こし、命にも関連する致命的な病態です。原因物質としては、抗生物質や鎮痛解熱剤、造影剤などの薬剤や輸血、食物、ラテックスなど様々ですが、最近問題になっているのはハチ(特にスズメバチ)に刺されて起こす場合があります。また運動により誘発される場合もあり、この場合は診断が難しくなります。
(症状)
数秒から数十分以内に症状が出現することが特徴です。ほとんどの場合、紅斑(こうはん)や蕁麻疹(じんましん)のような皮膚症状が現れます。かゆみもあることが多いです。血圧も下がることが多く、気分不良、めまい、耳鳴り、冷や汗、唇のしびれ、胸の苦しみなどショックを思わせる症状が出現します。また、死因の一つである気道の狭窄(きょうさく)による息苦しさやゼーゼー感、更に重症になると意識障害も生じます。
(診断)
症状経過から迅速に診断しなければなりません。たいていの場合は診断がつきますが、心筋(しんきん)梗塞(こうそく)や肺(はい)塞栓(そくせん)などと見分けないとならない場合もあります。
(治療)
とにかく救急治療が第一です。原因となる物質を避けて、ショック症状に対処しなければなりません。状況にもよりますが、気道確保、輸液とともに、アドレナリン(ボスミン)を投与します。1度軽快しても、数時間後に悪化する場合もありますので、最低でも24時間の厳重な観察が必要となります。
(予防、その他)
アナフィラキシーを起こしたことのある人は、自己注射用のアドレナリン製剤を携帯する事が急場をしのぐ方法となります。いずれにしろ、本疾患が疑われた場合はすぐに救急病院へ搬送する事が大切であると、知っておくことが重要です。
潰瘍性大腸炎
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ47<内科・消化器科・胃腸科>潰瘍性大腸炎
2013/1/7
○概 説○
大腸の粘膜に原因不明の炎症が起こる病気であり、この数十年間は新たに発症する患者が増加しています。最近の日本での患者は10万人を超えています。一般には、若年者に多いのですが、中高年の発症も増えてきています。現在のところ、原因は特定できていません。免疫や食生活環境の変化が関与しているのではと推定されています。
完全に治す特効薬はありませんが、症状を抑え、普通の生活ができるようにコントロールする事は可能になってきましたので、独特の症状がある場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。
○症 状○
繰り返したり、持続する腹痛、下痢、血便が主な症状です。重症になると発熱や全身倦怠感、体重減少、貧血などが出現します。
○診 断○
問診テストを含めた詳細な問診が初診時に大切で、男性ホルモンであるテストステロンの血液中濃度を調べる事で診断されます。
○治 療○
軽症では、従来から行なわれている「サラゾピリン」「ペンタサ」「アサコール」などの薬を服用することで、多くの場合、日常生活に支障がない程度にコントロールされます。重症度が高い場合は、副腎皮質ステロイドの内服が基本であるが、最近ではタクロリムスなどの免疫抑制剤や血液成分除去療法などが行なわれます。それでも効果が無い場合は、外科的に大腸の切除術が必要となります。また、この病気には大腸がんが併発することがあり、その場合も手術が必要となります。
○予防、注意点など○
不規則な生活やストレスが症状を悪化させますので、規則正しい生活が肝要です。また、効果のある薬の休薬(薬を飲まない)のタイミングが重要ですので、主治医とよく相談しながら服薬を続けることが大切です。勝手に服薬を止めるのは危険です。
ギランバレー症候群
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ48 神経内科
2013/4/22
※今回「Terra Letter」3号を皆様に配信しましたところ、鉄門同級生でこの「ギラン・バレー症候群」のガイドライン作成委員長でもある 楠 進 先生(近畿大学医学部神経内科教授)が、この記事に関して加筆訂正コメントをお寄せ下さいました。おかげで最先端の内容を網羅でき、校正も叶いました。2016年5月18日より、文章を差換えています。この場を借りて楠先生にはお礼申し上げます。鉄門仲間、ありがたい!!!
消化器系や呼吸器系の感染症の1〜3週後に急激に発症する末梢(まっしょう)神経性(しんけいせい)運動障害をきたす病気です。専門的には脱髄(だつずい)型(*1)と軸索(じくさく)型(*2)という分類がありますが、運動障害が中心で感覚障害が軽微であることが特徴です。ウイルスを中心とした感染症がきっかけとなり、免疫(めんえき)機構が障害される事により自分自身の神経が破壊されていく自己免疫疾患の1つと考えられています。発病の頻度は10万人に1人程度で、50歳以上に多いものの幅広い年代で発症し、やや男性に多い(約3:2)という疫学(えきがく)的報告があります。
多くの場合、下肢(かし)の筋力低下や麻痺(まひ)が出現し、次第に上方に広がり上肢(じょうし)の麻痺や呼吸筋の麻痺まで進行する場合もあります。感覚障害は軽微な事が多いですが、痛みや痺れ(しびれ)感がみられることがあります。自律神経障害は生じやすく、頻脈(ひんみゃく)、徐脈(じょみゃく)や血圧異常、発汗異常などの自律神経失調症状もみられます。時に、目を動かす筋肉や顔面を動かす筋肉の麻痺、飲み込みにくさやしゃべりにくさ、上肢の筋肉麻痺症状から発症する場合もありますので、注意が必要です。
特徴的な臨床(りんしょう)症状と神経伝導検査などの電気生理学的検査により、ほぼ診断は確定されます。最近では血液中の抗ガングリオシド抗体測定も診断に使われます。髄液の細胞数が増えないにもかかわらず、タンパク量が増加する「髄(ずい)液(えき)蛋白(たんぱく)細胞(さいぼう)解離(かいり)」は有名な現象ですが、病気の初期には蛋白量が正常な場合が多いので、初期診断には注意が必要です。いずれも経験深い専門医は熟知していることですので、神経内科医の受診が必須です。
○治 療○
急性期を乗り切れば良好に回復することが多いので、初期治療が重要になります。おおよそ2割弱程度が呼吸筋の麻痺を伴うので、人工呼吸器装着や急性期合併感染症管理などを含めた集中治療室での治療が重要となります。病気そのものへの治療としては免疫グロブリンの点滴と血漿(けっしょう)交換などの血液浄化法が2大治療法となります。ステロイドは単独では効果がないことが示されていますが、ステロイドの大量療法と免疫グロブリンの点滴の併用については意見が分かれているところです。
風疹
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №98
2013/7/22
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №99
2013/10/21
○ 概説 ○
慢性閉塞性肺疾患の英語名の頭文字をとってCOPDという名称が日本ではよく使われています。口からつながる気管が枝分かれして細い気管支になり終点は肺胞と呼ばれる小さな袋のようなものになりますが、肺はその気管支と肺胞からできています。COPDは、その細い気管支に炎症が起きて、気管支が細くなり空気の通りが悪くなる病気ですが、その炎症のほとんどの原因はタバコです。また、いったん細くなった気管支は回復しにくいので、予防やリハビリが大切となります。また、肺胞が破壊されると肺気腫という病気になります。
○ 症状 ○
階段昇降など運動時の息切れ、咳、痰、呼吸困難などですが、特に息を吐きづらい呼吸困難が特徴となります。症状はゆっくり進行するので、初期は気づかないことも多いですが、喫煙者で階段昇降時の息切れがあった場合は早めに受診することが、病気を進めないために大切となります。
○ 診断 ○
喫煙状態や症状の経過でほぼ診断は推定できますが、確定診断のためにスパイロメーターという器械を使って、呼吸の状態を測定して診断します。「大きく息を吸ってー、はい、思いっきり吐いてください」と技師さんが補助してくれる検査です。その他の病気との鑑別のために、CTや胸部レントゲン写真を撮る場合もあります。
○ 治療 ○
根本的な治療法はなく、自覚症状を軽くしたり進行を抑えるために、気管支拡張剤などの吸入薬や飲み薬を用います。禁煙は必須で、呼吸困難がある場合は呼吸リハビリが有効です。重症になると持続的酸素吸入が必要となります。
○ 生活上の注意 ○
まず「禁煙」の一言につきます。この病気になると、風邪やインフルエンザから重症の肺炎に移行しやすくなるので、普段の風邪予防的行動が大切になります。病気の程度にあった、適切な運動により呼吸に関連する筋肉を日ごろから鍛えることも重要です。
脂漏性皮膚炎
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №100
2014/1/6
○ 概説 ○
脂肪の分泌が盛んである頭皮や顔面や腋の下、股などに湿疹が生じる皮膚の病気です。皮脂の分泌が盛んな乳児期と青年期以降に多く見られます。青年期以降の原因として皮脂分泌に加えて、マラセチア菌というカビの一種が関与しているという説が有力です。頭皮にできると一般に「フケ症」とも呼ばれます。よくある皮膚炎の代表の1つと言えるでしょう。
○ 症状 ○
頭皮や顔面、腋の下、股などにフケのようなものを伴った赤いジュクジュクした皮膚変化(湿疹)が生じます。軽いかゆみを伴うことがあります。
○ 診断 ○
特徴的な皮膚症状とその部位からおおよその診断がつくことが多いのですが、アレルギー性皮膚炎やその他の皮膚炎との鑑別が困難な時もあります。治療経過を診てもらいながら、診断が確定することもあります。こういった治療を先行させて、その効果をみることにより診断することは医療の現場では少なくありません。「診断的治療」と呼んでいますので、この際に知っておくとよいでしょう。
○ 治療 ○
乳幼児の場合は、石鹸でよく洗うことが基本的な治療となります。それでも改善しない場合は、弱いステロイドローションなどを使う場合があります。
成人の場合も、洗うことが基本ですが、抗真菌剤の外用薬を比較的長期的に使用します。それでも治癒しなかったり、かゆみなどの症状が強かったりする場合は弱めのステロイドなどの外用を行います。
○ 生活上の注意 ○
まめに先発、洗顔をして清潔にすることが基本となります。成人の場合は抗真菌剤入りのシャンプーも勧められています。冬場の低温、低湿度も悪影響があるといわれています。生活の乱れやストレスも本疾患との関連があるといわれていますので、規則正しい生活はやはり大事です。
大動脈解離
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №101
2014/4/28
◯概説◯
心臓から体中に血液を運ぶ最初の太い血管を大動脈と呼んでいます。大動脈を含めて動脈の壁は内膜、中膜、外膜の3層構造でできており、弾力を保ちながらも強度も高く保たれています。動脈硬化や高血圧などの影響や、遺伝的に中膜が弱い場合に内膜に裂け目が生じて、中膜内に血液が入り込むことがあり、この状態を動脈解離と呼びます。主に大動脈に起こることが多く、それが大動脈解離です。本来の血液が流れる腔(真腔)以外に
内膜と中膜の間に血管腔ができることになり、そちらを偽腔と呼びます。放置しておくとその偽腔が広がり、各臓器への血流に障害が起きたり、動脈瘤になったりし、破裂の可能性が高まる危険な状況に陥ります。
◯症状◯
突然の激しい胸痛や背中の痛みが最も多い症状です。場所により腹痛となる場合もあります。時には意識を失ったりする反面、まれに痛みが少ない場合もあります。破裂などを起こすとショック状態となります。急性の心筋梗塞と似た症状と言えます。
◯診断◯
心筋梗塞や肺梗塞との鑑別診断が重要になります。心電図などだけで診断がつかない場合は、CTやMRIなどにより偽腔を確認することが確定診断となります。治療法の選択上、どの場所まで偽腔が広がっているかの確認が重要となります。
◯治療◯
非常に致死率の高い病気で、初期の診断と対処が運命を分けます。偽腔の場所が限定されている場合は内科的に血圧を低めに管理し、偽腔内が血栓で固まる時期を待ちますが、緊急手術が必要となることも少なくありません。極めて専門性の高い手術となりますので、対応できる病院を選ぶことも大切です。偽腔の場所や広がりで手術方法が異なりますが、基本的には人工血管に置き換える手術となります。
◯生活上の注意◯
自然に、または手術により偽腔が閉じれば死に至る危険性は低くなりますが、偽腔が存在している場合は厳重な血圧管理が必須です。
てんかん
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №102
2014/7/28
◯概説◯
突然のけいれんや意識消失で自動車事故を起こし、社会問題として報道されることがあり、「てんかん」という言葉を知っている方も多いと思います。脳に明らかな病変が特定できる「症候性てんかん」と、原因がはっきりしない「突発性てんかん」に大別できます。人口の0.5%から1%くらいの有病率と言われ、比較的頻度が高い病気です。症候性の原因として、頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、髄膜炎、代謝障害などがあります。突発性は大体20歳前に発症することが多いようです。脳の神経細胞の過剰興奮により症状が出ることは共通した現象です。
◯症状◯
部分発作、全般性発作、それ以外などに大きく分かれ、さらに細かく分類されていますが、けいれんと意識障害が主な症状となります。突然けいれんや意識消失が起こるので、周囲にいる人は驚くことが多く、また、交通事故などにつながることが少なからずあり、病気の認識自体が大切となります。軽い意識障害から完全な意識消失、部分的なけいれんから全身のけいれんまで多彩であり、また症状継続時間も異なります。
◯診断◯
特徴的な臨床経過ですので、経験豊富な専門医はそれだけでおおよその診断がつきます。脳波検査によりほぼ確定しますが、症候性てんかんの原因については、MRIやCT検査などの画像検査が有用です。
◯治療◯
症候性てんかんの場合は、まず原因疾患の治療が基本となります。それとともに各種の抗けいれん薬を使用します。突発性の場合は、薬物が治療の中心となります。いずれの場合も、薬物はかなり有効で、ほとんどの場合、発作は抑制された状態を維持できます。問題は、服薬の中止や減量のめやすをたてることが困難なことです。急に薬をやめると、発作をぶり返すことがよくあります。主治医と相談しながら長期的にゆっくり減量することが望まれます。また、あまり一般的ではありませんが、脳神経外科的治療もあります。
◯生活上の注意◯
発作を抑制することが治療の目的ですが、過労や睡眠不足、アルコール、光刺激などが誘引となることが多いので注意が必要です。基本的には自動車の運転は禁止されています。抗けいれん薬は、催奇形性があるので妊婦の場合は注意が必要です。発作そのものは命に直接関わることがありませんが、併発する事故には注意が必要です。長期間にわたる主治医との共同作業が重要です。
腸閉塞
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №103
2014/10/20
◯概説◯
何らかの原因により腸管の通過障害が生じた状態を言います。イレウスとも言われます。その原因により、機械的イレウスと機能的イレウスに大別されます。前者は、癒着や腫瘍などで物理的に腸管の内腔が閉塞されることが原因となります。後者は、腹部の手術や他の病気などによる炎症などが原因で腸管の運動に障害(麻痺性イレウス)が起きることにより通過障害をきたします。両者は病態によりさらに分類されますが、重要なことは、虫垂炎などと同様に「緊急手術が必要かどうか」の判断を必要とする「急性腹症」という一連の病気の仲間であるということです。
◯症状◯
腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、排便排ガスの消失が主な症状です。腹痛は激しく、初期では持続的ではなく間欠的なことが多いようです。
◯診断◯
特徴的な症状に加えて、腹部単純レントゲンで特徴的なガスの貯留像が見えるという昔ながらの検査で、たいていの場合は診断がつきます。さらに原因などを探索し、緊急手術が必要かどうかの判断をするために、超音波やCTスキャン、血液検査なども重要です。
◯治療◯
この病気のポイントでもありますが、緊急手術が必要か、保存的治療(外科的治療以外の安静や薬物治療)でよいかの判断が重要です。いずれにしろこの病気が疑われたら、安静の上、絶飲絶食となります。閉塞部位より口側の圧を押さえるために、胃にゾンデ(治療用の細い管)を挿入することもあります。点滴で水分、電解質、栄養の確保をしながら様子を見て、状態が改善しなければ手術を検討することになります。たいていは保存的治療で改善しますが、時に緊急手術を選択せざるを得ない場合がありますので、担当医とよく話し合っておくことが肝心でしょう。
◯生活上の注意◯
以前に腸閉塞になったり腹部手術の経験者は、この病態に陥りやすい傾向があります。普段から規則正しい生活習慣を心がけ、特に快便を維持できるようにヨーグルトの常用など食べ物にも配慮することが予防の秘訣でしょう。
ヒートショック
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №104
2015/1/5
◯概説/症状◯
現状では正式な医学用語とされていませんが、「急激な温度変化が原因となり、心臓や脳血管に重度な障害を起こすこと」を便宜的に総称しています。医学用語としては、細胞レベルで熱による障害を受けることをヒートショックと呼び、その時に身体を守るヒートショックプロテインと呼ばれるタンパク質が合成されることを指しますが、日本では、通常、前者の意味で使われます。
日本では、入浴に関連した死亡数は年間1万数千人と推計されています。その多くは、冬場に起こります。日本家屋の特徴でしょうが、風呂場の脱衣室などはまだまだ十分な暖房が設備されていません。暖かな居間などから移動して寒い脱衣室で裸になり、寒い風呂場に入り、急に温かな湯船につかることになります。この間は、どんどん血圧が上昇します。ところが身体が温まり落ち着いてくると、血圧は下降し始めます。こういった急激な血圧変動に伴う血管の収縮や弛緩が引き金となり、脳血管障害や心筋梗塞を引き起こすことをヒートショックと呼んでいます。
◯診断/治療◯
いずれにしろ発作を起こしてしまうと、意識障害が伴う重症であることが多いので、患者を安静にし、タオルケットなどで保温をし、いち早く救急車を呼ぶことです。心筋梗塞の場合は激しい胸痛、脳血管障害では麻痺や意識障害が主な症状となります。
◯予防/対策◯
上記のように、発症してしまうと危険な状況に陥ることが多いので、何よりも予防対策が大切です。冬場に温度差がでやすい脱衣室やトイレなどを穏やかに暖める暖房の用意をしましょう。風呂場は脱衣の前に、温かいシャワーなどを出しっ放しにして暖めておいたり、湯船のふたを早めに開けておくなどして風呂場全体を暖めておきます。お湯はぬるめにして、ゆっくりと出入りするように心掛け、飲酒後や過剰な長湯を避けることです。半身浴などもよいでしょう。また入浴前後の水分補給も有用でしょう。深夜の寒い時の入浴よりも、夕食前の早めの入浴もお勧めです。老年者がいる家庭では、風呂場から家族人へ連絡する「緊急ボタン」もできれば設置したいものです。
坐骨神経痛
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №105
2015/4/27
「坐骨神経痛」は病名というよりも、いろいろな原因による症候名として使われています。本来は「なになにという病気が原因の坐骨神経痛」というふうに使用されるべきなのですが、原因が特定されない坐骨神経痛症状が出現することが多く、慣習として病名のように使われます。「神経痛」という言葉自体が症候名であり、痛みの起こる神経の部位により、「三叉神経痛」「肋間神経痛」などというふうに使用されます。
「坐骨神経痛」の原因としては、席椎間板ヘルニアや変形性脊椎症や外傷など脊椎の多彩な病気があります。まれに癌の骨転移などが原因のこともあります。原因が特定されるもの以外は「特発性」と呼ばれます。
〇症状〇
主に、椅子に座った時に座面と接するお尻の部位に痛みが発生することが多く、その痛みは太もも背部まで放散することもあります。またその部位をおさえると痛みがまします。ひどくなると歩行にも影響を及ぼします。立っているだけでも痛かったり、長時間座ることも辛くなります。
〇診断〇
特徴的な症状と、専門医の診察による圧痛の確認などで診断がつきますが、その原因の特定には、MRIなどによる脊椎の検査が必要となります。
〇治療〇
原因となる疾患が特定できれば、その治療が根本的であるのですが、痛みに対する対症療法も重要となります。最近では、単なる消炎鎮痛剤以外にも抗鬱剤や神経障害性疼痛専用の薬剤が使われるようになり、効果が確認されています。また、症状が強く持続する場合は、ペインクリニックや麻酔科、整形外科などで、対症療法の一環として、神経ブロックなども行われます。
〇生活上の注意〇
運動不足や肥満やストレスが、原因となったり、症状を悪化させる要因となることもありますので、医師と相談して生活習慣の改善にも努めましょう。
多汗症
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №106
2015/7/27
〇概要〇
精神的負荷や温熱、辛い味などの負荷がかかった時などに、生活に支障をきたす程度の大量の発汗が手足や腋の下、顔などに生じる状態を原発性局所多汗症と呼んでいます。感染症や内分泌や神経の病気で起こる続発性多汗症と区別されます。一般に汗が多くて困っているという方は前者の状態と言えます。原因ははっきりしませんが、自立神経の過敏な反応と考えられます。
〇症状〇
軽症の場合は、単に「汗かき」という程度ですが、症状が強い場合は、生活に支障が出る程度の大量の発汗が生じます。その結果ワキガやあせもが生じてしまうこともあります。
〇診断〇
病状では診断は容易につきますが、基礎疾患が存在する続発性多汗症ではないかどうかの鑑別が必要です。疑われる病気があれば、血液検査やCTやMRIなどの画像検査が必要なことがあります。
〇治療〇
「原発性局所多汗症診療ガイドライン」という標準的な治療の指針があります。第1選択として、20%塩化アルミニウム水溶液を塗布することが推奨されています。また手足に対しては患部を水道水に浸した状態で微弱電流を流し、水素イオンで細胞へ働きかける「イオントフォレーシス」という治療もされています。第2選択肢としボトックス( A型ボツリヌス毒素製剤 )の局所麻酔も保険適用となりました。最終的手段としては交感神経遮断術も試されることがあります。
〇生活上の注意〇
常にタオルを携帯し、まめに汗をふくことになります。また精神的負担をなるべく軽減するように生活設計を行い、各種リラックス法なども取り入れるとよいでしょう。
男性の冷え性
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ59 診療科 東洋医学科、内科
2015/11
(概説)
「冷え性」は、いわゆる病名ではなく、手足を中心に体の一部に冷たい感じが持続的に生じている状態を総称して使われている言葉です。女性の多くの人は何らかの冷え性に悩んでいるとも言われ、東洋医学の考えでは、大切な症状の一つです。最近では、男性にも同様の症状を感じる人が多いことが報告されるようになりました。
(原因)
冷え性を理解するためには、体温のメカニズムを理解しないとなりません。我々人間は、体温を36度から37度程度に保つ必要があるために、熱を作ったり(産熱)、熱を逃がしたり(放熱)する仕組みを持っています。産熱の代表が筋肉で、放熱の代表が皮膚からの熱の放出です。体が冷えた場合、内臓の保温のために手足への熱の供給を減らすために特に四肢末端に冷えを感じることが多いのです。女性は男性に比べて筋肉が少なく冷えたら温まりにくい性質の脂肪が多いために、冷え性が多いとも言われますが、その他ホルモンの作用など複雑なメカニズムがあると思われます。男性にも冷えが増えてきた理由に、筋肉量の減少に加えて、ストレスや喫煙なども原因の一つでしょう。
(対策)
継続的な運動で筋肉量を増やすことは根本的に良いことですが、運動により体の末端の血流が改善し、ストレス発散にもつながります。体を冷やさない服装やゆったりとした入浴なども心がけたいものです。筋肉量を増やすためにも、十分なタンパク質を含んだ食材を摂取するように心がけ、冷たい飲み物をとりすぎないことも大切です。
(注意)
四肢(特に足)が冷たくなる症状で、動脈が閉塞する怖い病気があります。足が冷えるのを単なる冷え性と決めつけずに、異常な冷えを感じた場合はまずは医師への受診をお勧めします。
紫外線アレルギー
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №109
2016/4/25
アレルギーは、人間が外界の異物から身を守る仕組みである免疫反応が過剰に出現した状態であると理解しても大きな間違いではありません。抗生物質や造影剤などの薬物アレルギーや蕎麦アレルギーや卵アレルギーなどの食物アレルギーや花粉アレルギー(花粉症)などみなさんご存知だと思います。アレルギーの原因として、寒暖や光線や運動などもあり、それらを総称して物理アレルギーと呼んでいます。そのうちの光線アレルギーを日光アレルギーや紫外線アレルギーと呼ぶこともあります。
〇原因〇
はっきりしたメカニズムは分かっていませんが、原因となる物理的刺激が神経の伝達路を介して免疫に関する細胞(肥満細胞)を刺激して活性化を促すことによりヒスタミンやロイコトリエンといった物質を過剰に分泌し、いろいろな症状を起こします。またある種の薬剤と光線の症状作用により起こることもあります。
〇症状、診断、治療〇
かゆみを伴ったじんま疹様の発疹や皮膚が腫れてむくむというような典型的な症状の発現の仕方から診断がつきます。また服用している薬剤とも関連することがあり、その場合は、一時的に服用を中断すると症状が軽減することにより診断がつきます。日光は完全に避けることはできませんので、なるべく日光に長時間さらされないような行動パターンや服装を選びつつ、逆に、短時間の日光浴などにより耐性をつけていくことも試みられています。薬剤としては、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などを用います。
〇対策〇
早めに診断をつけて、アレルギーの悪循環を断ち切ることが大切です。疲れなども症状に影響するようですので、暴飲暴食、睡眠不足などにも留意しましょう。
秋バテ
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ58 <内科>
2015/8
(総論)
夏バテに呼応して秋口に体調を乱すことを「秋バテ」といつしか呼ばれるようにになりました。いずれも正式な医学病名ではありませんが、よくみられる病状を表している言葉でもあります。夏バテは暑さによる体温調節の乱れや交感神経の乱れから特に胃腸障害や熱中症という形で現れます。秋バテは、秋口の気候の変化に順応できずにさまざまな体調不良を感じる状態を指します。
(原因)
さまざまな理由が考えられますが、夏バテにより体力が弱っていることとと、急激な気温の変化や気圧の変化(主に低下)により自律神経がスムーズに対応できずに不調をきたすことが原因と考えられています。また学生は夏休みであったり、会社なども夏休みモードであったのが、本格的に稼働し、秋は一年中でも活動が活発な時期であり、そういった環境の変化にもついていけないことも原因の一つと考えられるでしょう。
(症状)
夏バテは食欲低下を中心とした胃腸障害やだるさ、疲労感が中心となりますが、秋バテも同様な症状があります。それに加えて、自律神経の乱れによる、めまいやのぼせ、不眠、気力低下など多彩な症状がでます。
(診断)
他のはっきりした疾患による症状でないかどうかの鑑別診断が大切になります。安易に「夏バテ」「秋バテ」で片付けてしまうと、ガンや糖尿病など重大な病気が隠れていることを見落とすことがありますので、じっくりと経過を見てくれる医師と相談しながら様子を見ることが大切です。
(治療)
症状が進まないうちに、十分な休養と栄養補給を中心に養生をすることが大切です。放置していると胃腸障害の悪化や肺炎など本格的な病気に発展してしまうこともあります。
(生活上の注意)
基本的なな健康管理として、快食快眠快便を保つように心がけ、暴飲暴食、夜更かし運動不足に特に留意することが大切です。いつもとは違った症状が長く続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。
偏食
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ62 <偏食外来、総合診療科、心療内科など>
2015/10
(総論)
今回は「偏食」というテーマを頂きました。いつもの医学的病名ではありませんので記載方法が異なりますが、健康管理においてよく使われる言葉ですので、解説にチャレンジします。多くの辞書を調べてみましたが、平均した意味合いは「好き嫌いにより特定の食品を食べなかったり、または特定の食品ばかりを多量に食べるなどの偏った食生活様式」となります。子供の頃のしつけや生活環境や時にトラウマなどにより形成される場合が多いのですが、最近では大人になってから形成される偏食も問題になっています。偏食は、文字通り偏った栄養摂取につながり、様々な病気の原因や引き金にもなりえます。テレビなどのマスコミで、ダイエットや健康増進や病気治癒のための極端な食事法が紹介されると、街のスーパーではその食材が売り切れることもあります。幸い長続きしないので、偏食に進むことは少ないのですが、中にはそのことを信奉するあまり偏食状態となります。社会的要因による偏食と言えるでしょう。「炭水化物を取らないダイエット」など、専門家の間でも意見が対立する食に対する考え方があり、結論が出るのにまだしばらくの年月がかかりそうです。
(対処)
総論でも述べましたが、「病気の原因となるようなほどの偏った食生活」であるのか「好き嫌いが多少あるが、栄養バランスは取れている食生活」であるのかの見極めが大切です。前者の場合は、もちろん補正していくべきでしょう。原因に精神疾患が関与している場合は、精神科医の指導が必要になるでしょうが、成長期に形成された偏食では、家庭での調理などにもまめな工夫が必要でしょう。専門家に相談できる場所や機会が用意されていないのが現状ですが、管理栄養士などが常駐する病院に相談するのも一法です。
「好き嫌いにより偏る」
のも、人間らしい行動なのでしょうが、「バランスをとる」というのも人間らしい行動となることを認識してはいかがでしょうか。
鼻血(鼻出血)
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №112
2017/1/4(火)
〇総論〇
鼻出血は、ありふれた症状の一つです。子供や高年者に比較的多いようです。大抵は、鼻中隔前下方からの出血で、医学的には前鼻出血と呼ばれるものです。鼻ほじりや鼻かみによる機械的刺激が原因で、微細な血管が集中するキーゼルバッハと呼ばれる部位からの出血です。その他、出血部位により鼻の奥の動脈から出血する後鼻出血や上鼻出血などがあります。
〇原因と対処方法〇
機械的刺激による前鼻出血の場合、大抵は自然に止血します。止まりにくい場合は、頭をやや前に傾け鼻の両脇を強くつまみ圧迫します。また冷やしたタオルなどで鼻を冷やすとより効果的です。
それでも止血しないときは、動脈性の出血も疑われますので耳鼻科を受診してください。また、出血傾向を来たす血液などの病気や脳梗塞や心筋梗塞の予防薬として使われる薬(血液サラサラにする薬と形容される薬)などを服用している場合なども、止血が困難な場合が多く、早めに耳鼻科受診をしましょう。繰り返し鼻出血を起こす場合は、高血圧、腫瘍、肝硬変や出血傾向をきたす全身の病気が隠れている場合もあります。耳鼻科や内科への受診をお勧めします。頭を強く打った後の鼻出血の場合は、脳底骨折などの心配もありますので、緊急的な受診が必要です。
〇緊急時の注意〇
大量の鼻出血の場合は、ショック状態になったり意識が低下する場合もあります。その場合は患者さんを横向きにねかせ、血液や血の塊を誤嚥しないように注意して、すぐに救急車を要請してください。
〇普段の注意〇
「上を向き、首の後ろを叩く」とよく言われますが、これはむしろ逆効果です。また、血液サラサラ系の薬を服用している場合は、身近な人たちにその旨を知らせておきましょう。
下肢静脈瘤
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №113
2017/4/24(月)
〇総論〇
一般に静脈は動脈と違い、心臓のポンプ機能や血管自らの収縮弛緩などによる強い血流はなく、心臓へ吸い上げる弱い力と、周囲の筋肉の収縮による圧迫や重力による流れが血流の原動力になっています。それでも逆流がしないように、静脈の中には弁があります。この弁の調子が悪くなったり、血栓ができ静脈の流れが滞るとその抹消側の静脈にコブができ蛇行します。肉眼的にも分かるようになりますが、主に下肢に生じやすく、それを特に下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と呼びます。
〇原因〇
妊娠や長時間の立ち仕事が原因となりますが、生まれつきの静脈走行の異常が原因となる場合もあります。
〇症状〇
目で見える静脈のこぶのような腫れ、むくみ、だるさ、かゆみ、疼痛、こむら返り、進行すると皮膚潰瘍などを起こすこともあります。
〇診断〇
ほとんどが視診、触診で診断がつきます。
〇治療〇
自覚症状も少ない軽症の場合は、弾性ストッキングによる圧迫療法と下肢の挙上や筋肉のポンプ作用を促すような運動指導で経過を見ます。外科的治療として、血管内に硬化剤を入れて閉塞させる方法と原因となる静脈を除去する方法があります。後者には従来からのストリッピング手術という血管を外科的に抜去する方法に加えて、レーザーにて焼灼する比較的低侵襲の治療法も近年保険適用になりました。
〇生活上の注意〇
長時間の立ち仕事を避けて、下肢を挙上させたり、下肢の運動をしたり、軽症のうちから弾性ストッキングを着用し悪化を防ぐことも大切です。レーザーを使った治療も進歩してきましたので、気になる症状がある場合は、専門医と早めに相談しましょう。
人畜共通感染症
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №114
2017/7/24(月)
〇総論〇
WHOの定義によると「脊椎動物と人との間で自然に移行しうるすべての感染性疾患」となっている。動物は家畜のみではないため、人獣共通感染症と呼ばれる傾向にあります。動物から人へ、だけでなく人から動物へ感染する場合もあります。原因となる病原体の種類は数百種類もありますが、感染の大量発生の可能性や重篤になりやすいという意味で、鳥インフルエンザなどが最近注目されています。近年では、SARSやエボラ出血熱や狂牛病などが世間を騒がせたことは記憶に新しいですし、ペストのように歴史に名を残す怖い病気もあります。
〇主な病原体〇
細菌:結核、サルモネラ、ペストなど
ウイルス:狂犬病、SARS、日本脳炎、鳥インフルエンザなど
寄生虫:アニサキス、マラリア、アメーバ赤痢、マダニなど
真菌:カンジダ、アスペルギルスなど
プリオン:狂牛病(クロイツフェルトヤコブ病)など
その他、クラミジアやリケッチア(猫ひっかき病)などに分類される病原体があります
〇感染経路〇
感染動物と直接接触、糞や尿などからの間接的接触、ノミや蚊などにより媒介される場合などがあります。
〇予防、生活上の注意〇
多種多様な病原体、感染経路があるために、確実な予防は一筋縄ではいきません。流行の兆しなどがある場合に、ニュースや政府、保健所などから発信される勧告に注意するように心がけることです。海外渡航の場合は情報収集を行い、推奨されている予防接種などをきちんと受けることが不可欠です。
ヒアリについての豆知識
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №115
2017/10/23(月)
〇総論〇
2017年7月3日、ニュースで「東京都大井埠頭で猛毒を持つアリが発見された」と報道され、身近に存在するアリに対して恐怖を感じている方も多いと思います。「知識は最強のワクチン」を合言葉にしている私としても、この欄をご愛読の皆様に、東京都の環境局などで発表している内容を簡単にまとめてみます。
(日本での存在、生息地)
2017年5月に兵庫県尼崎市で国内で初めて発見され、その後立て続けに東京、愛知、大阪、神奈川、福岡、広島など(9月1日現在)全国各地で確認されるに至っています。もともと南アメリカに生息していましたが、アメリカや中国、オーストラリアなどでも生息しています。
(形態)
体長は2~6mmで、赤茶色から褐色。
(毒)
主にアルカロイド系の毒素で、刺されると激痛とともに患部が水ぶくれを起こします。毒素に含まれるタンパク成分によりアナフィラキシーショックを起こした場合は命に関わることもあります。スズメバチに近いイメージを持っていただけると理解しやすいでしょう。
(治療)
スズメバチの場合と同様に医師の受診が必要です。特に呼吸困難や意識低下など重度の障害と思われたときは、虫刺されによるショック状態かもしれないということを救急隊に告げて、その対処ができる病院での治療を受けることが必須です。
(国内での蔓延の可能性)
現状では、水際での駆除を徹底していますので、心配は少ないですが、一旦広まると駆除は大変困難になります。在来のアリがヒアリの繁殖を阻害してくれることもあり、「対象を特定しない広範なアリ退治」を安易にできません。今後の報道にも注目しておいてください。
口内炎
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №116
2018/1/4(木)
(総論)
口の中の粘膜に炎症が起こった状態の総称が口内炎です。多くの方が、一度は経験しているのではないでしょうか?口の中の傷や炎症は、唾液の作用により修復されますので、大抵の場合、市販薬や自然経過で治ってしまう場合が多いので、軽く考えられがちです。しかし、ヘルペスなどのように治療が必要なウイルスが原因の場合や全身の病気として口内炎が発生する場合があるので、2週間以上も治らない場合などは専門医に相談した方がいいでしょう。
(原因)
ウイルス、真菌、細菌などの感染性、アレルギー性、自己免疫性、悪性腫瘍などのほか、貧血、ベーチェット病、エイズなど全身性の病気の症状の一つとして発生する場合もあります。また、原因が特定できないまま治癒していく場合も多いのが現状です。
(症状)
最初は、粘膜が発赤するカタル性口内炎の状態になり、さらに粘膜が腫脹してびらん性口内炎に進み、中央が凹んで潰瘍になった状態をアフタ性口内炎と呼び、最もよくみられる状態です。食べ物がしみることが最大の症状です。
(診断)
経験豊かな専門医による視診と経過観察だけで済む場合が多いのですが、難治性の場合は、組織生検や菌培養などによる検査が必要なこともあります。また、全身性の病気の検索が必要な場合もあります。
(治療)
口腔内を清潔にし、刺激性のある香辛料などを避けるようにします。ステロイド含有の軟膏を使用すると治癒が早まります。特殊な原因による場合や、全身性の疾患の場合は、それぞれの治療を優先させます。
(生活上の注意)
いずれの原因にしろ、体の免疫力が低下している場合に発生しますので、規則的な生活、十分な栄養という日頃の基本的な健康管理が肝要です。歯磨きやうがいを励行し口腔内を清潔に保つことも大切でしょう。
右心不全
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №117
2018/4/24
(総論、原因)
心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれています。全身から心臓に戻ってくる血液は、右心房、右心室を経て、肺に送られ、酸素を取り入れ左心房、左心室を経て、再び全身に送られます。この4つの部屋のうち、右側、特に右心室の機能が低下している状態を右心不全を呼びます。一つの病態を指し、肺疾患や弁疾患などにより、肺高血圧という状態になることが原因であることが多いです。多くは慢性の経過をたどりますが、急性肺塞栓症(エコノミー症候群で有名)などにより急激に右心不全症をきたし、致命的になることもあります。
(症状)
下肢に多く見られる浮腫、腹水貯留による腹部膨満感、全身倦怠感、悪心、息切れなどが慢性的、進行性に見られます。肺塞栓症の場合は、いきなりショック状態となり、意識の低下、呼吸困難など致命的な状況となります。
(診断)
専門家による病状聴取と特徴的な理学的初見(頸動脈の怒張、肝臓の腫大、右室拍動の亢進、下肢の浮腫など)、血液のBNPの上昇などにより、本病態を推定し、その原因探索のための検査が組まれます。
(治療)
安静、酸素吸入、減塩などを行いながら、重症度に応じて、利尿薬、強心剤などの薬物療法を考慮します。重症の場合は、体外循環による補助が必要になることもあります。原因疾患がはっきりしている場合は、心不全に対処しながら、その治療を行います。
(生活上の注意)
原因となる疾患を持病としている場合は、心不全の初期の段階で治療が開始できるように定期的な検査が望まれます。また、エコノミー症候群で有名になった肺塞栓症予防の注意事項は、飛行機搭乗時のみならず、足を動かさない状態が長時間続くときなどには、普段から励行するように心がけましょう。
スマホネック
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №118
2018/7/24
「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉が、昔のテレビの歌謡番組で司会者の決まり文句となっていました。「スマホネック」という言葉を聞き、「病気は世につれ世は病気につれ」と思わず口ずさんでしまいました。病気も世情を反映するものですね。
(概説)
「スマホネック」は、現状では医学的病名ではなくて、一般用語として使われているようです。言葉から推察される通り、「スマホ画面を見ながら操作する姿勢を連続して長時間続けることにより、首周りの筋肉が硬くなり、慢性の肩こりや頭痛、めまいなどの症状が出現する状態」と定義して良いでしょう。
(原因)
その姿勢を続けることにより、「ストレートネック」と呼ばれる状態を自ら人為的に作ってしまうことが原因と考えられています。人間の脊椎は、頭の方から7個の頚椎(けいつい)、12個の胸椎(きょうつい)、5個の腰椎(ようつい)と仙骨(せんこつ)から成り立っています。頚椎は前方に凸、胸椎は後方に凸、腰椎は前方に凸の状態に湾曲(わんきょく)することにより、体全体の重さをバランスよく分散して受け止めています。
スマホを見る姿勢は前かがみで頭を前下方に向けた状態で、この姿勢が常態化すると頚椎の本来の前湾(前方向への湾曲)が消失し、まっすぐ伸びてきます。それが「ストレートネック」です。その結果、近辺を通る血管や神経を圧迫し、様々な不快症状を引き起こすことになります。なお、「ストレートネック」は従来の医学でも知られている病態です。
(対策)
スマホを長時間使い続ける、いわゆる「スマホ依存」の状態を避けるよう生活習慣を改めることに尽きます。スマホ依存は、スマホネックだけでなく、薬物やアルコール、ギャンブル依存症に近い精神障害を引き起こす可能性もあるということをしっかり認識したいところです。スマホは使いようによってはとても便利な道具ですが、諸刃の剣となりえます。