大動脈解離

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №101

 カルテ52  心臓血管外科、循環器内科

 2014/4/28

 


◯概説◯

心臓から体中に血液を運ぶ最初の太い血管を大動脈と呼んでいます。大動脈を含めて動脈の壁は内膜、中膜、外膜の3層構造でできており、弾力を保ちながらも強度も高く保たれています。動脈硬化や高血圧などの影響や、遺伝的に中膜が弱い場合に内膜に裂け目が生じて、中膜内に血液が入り込むことがあり、この状態を動脈解離と呼びます。主に大動脈に起こることが多く、それが大動脈解離です。本来の血液が流れる腔(真腔)以外に

内膜と中膜の間に血管腔ができることになり、そちらを偽腔と呼びます。放置しておくとその偽腔が広がり、各臓器への血流に障害が起きたり、動脈瘤になったりし、破裂の可能性が高まる危険な状況に陥ります。

 

◯症状◯

突然の激しい胸痛や背中の痛みが最も多い症状です。場所により腹痛となる場合もあります。時には意識を失ったりする反面、まれに痛みが少ない場合もあります。破裂などを起こすとショック状態となります。急性の心筋梗塞と似た症状と言えます。

 

◯診断◯

心筋梗塞や肺梗塞との鑑別診断が重要になります。心電図などだけで診断がつかない場合は、CTやMRIなどにより偽腔を確認することが確定診断となります。治療法の選択上、どの場所まで偽腔が広がっているかの確認が重要となります。

 

◯治療◯

非常に致死率の高い病気で、初期の診断と対処が運命を分けます。偽腔の場所が限定されている場合は内科的に血圧を低めに管理し、偽腔内が血栓で固まる時期を待ちますが、緊急手術が必要となることも少なくありません。極めて専門性の高い手術となりますので、対応できる病院を選ぶことも大切です。偽腔の場所や広がりで手術方法が異なりますが、基本的には人工血管に置き換える手術となります。

 

◯生活上の注意◯

自然に、または手術により偽腔が閉じれば死に至る危険性は低くなりますが、偽腔が存在している場合は厳重な血圧管理が必須です。

    

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