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第4回 「主侍医」という制度
第4回 「主侍医」という制度 |
NIKKEI NET 2007.2 日本経済新聞社 |
「自分は的確な治療を受けているのか?」そんな患者の疑念を一掃するため、「治療ガイドライン」をつくろうと尽力し続ける寺下謙三医師。そんな思いのもとに監修した『家庭のドクター 標準治療』(日本医療企画刊)は、既存の家庭医学書とは一線を画す本となっている。「主侍医」制度と理想の医療を追求し続ける寺下医師に、「標準治療」を知る意味と、患者が持つべき意識を聞いた。
天皇陛下の健康を見守る「侍医」を範に、私は仲間たちと「主侍医倶楽部」を設立しました。今から16年前のことです。平時からクライアントの健康管理をすることと、決断のサポートをするのが「主侍医」の役割。病気になってから初めて出会う主治医と患者さんの関係に比べ、健康時から接している「主侍医」とクライアントの関係は、ずっと近いと言えます。会社における会計士さんと考えていただければ、イメージしやすいのではないでしょうか。
主侍医制度は理想的に見えますが、一般化は難しいでしょう。私がものすごく高給取りだったら、後に続く人も出てくるんでしょうが、どう考えても、保険診療で数をこなした方が経営効率はまだましです。それに24時間束縛されるため、体力的にも精神的にも大変です。
クライアントの立場から言えば、通常の保険診療と比べてかなり高額の会費を支払うことにもなります。でも、それで24時間医師と連絡が取れるわけですから、本当は値打ちがあるんですけどね。万が一、何かあった場合には、クライアントのために電話当直の医師を確保したり、紹介先の専門医との生きた人脈作りは、そう簡単にはできません。
つまり、医師にとってもクライアントにとっても、コストが合わないのでビジネスになりにくいのです。まだ実験的な意味合いが強いですね。それでも、例えば、F1カーの技術が普及車に恩恵をもたらすように、主侍医制度も何らかの形で日常的な医療にフィードバックできればと考えています。
一般化できる形としては、自分が信頼する医師に第2、第3の主侍医役を務めてもらうことを考えています。これもコスト問題に加え、混合診療の問題もあってなかなか難しいんですが、そんな中で始めたのが、医師と患者さんの橋渡し役を育成するための「医療決断支援師」の育成です。講座を受けた医師や看護師に、主侍医的役割を担ってもらおうというもので、これは患者さんにとって心強い存在となるでしょう。