性善説ルネサンス(最終稿) 筆を折る

 

2006.4~2006.11

  性善説ルネサンス(最終稿) 筆を折る

ばんぶう

2006.11

日本医療企画


突然のタイトルに驚かれた方もいらっしゃるでしょう。継続して読んでいただいていた読者の方にご説明とご挨拶をいたしたいと思います。当欄のシリーズエッセイはまもなく10年目を終えようとしていたところでした。担当の編集の方も3代目になる長期連載となりました。10年間もお読み続けていただいた方は本当に数少ないと思いますが、長らくのご愛読に心から感謝申し上げます。

このエッセイでは「医者」という立場を離れて、自由に思いのたけを書いてよいというお許しを頂き、毎年ひとつのテーマを決めて、そのテーマに基づいたエッセイを12回一区切りとして書いて参りました。この毎年のテーマは、私自身にとっての「一年の計」どころか「一生の計」ともいえる言葉を考え、選んだり造語したりしたものです。私にとって最終的に大切なものは「こころ」である、という思いは募る一方で、昨年は「魂を売るということ」、今年は「性善説ルネサンス」をテーマに、人間心理の微妙なところに踏み込んできました。勿論、実体験に基づいたフィクションというものもあり、私自身も編集者も気を遣いました。実在する人物の中傷になったり、政治的宗教的批判になったりすることは本意ではないからです。このエッセイを書くために、日頃思いついたことを常にメモをし、マンネリ化しないように努力をしてまいりました。

前号は「扇動と洗脳」という難しいテーマを選んだため、新しい編集者と見解の相違が顕在化してしまいました。後ほど、話し合い「文章の内容をより引き立たせたい」という編集者の熱意であったことが分かりましたが、厳しいタイトルに挑戦し、魂を込めて書き大切にしてきたこのエッセイシリーズであっただけに、再び書き続ける情熱を呼び戻すことはできませんでした。今は、書きためた10年分のエッセイをまとめてみることと、別の場で続編を書かせていただくチャンスを待ってみようと考えています。

はなはだ回顧主義的になりますが、この10年間のタイトルのみをここでご紹介させてください。「温故知新」「正しい生き方から美しい生き方へ」「質実剛健」「少数精鋭主義」「常識に照らす」「吹っ切りのち復活」「一生懸命足るを知る」「グローバルより顔馴染み」と昨年、今年となります。読者の方には、本当に申し訳ありません。また、別の機会でお会いできることを楽しみにしております。

    

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