家族の一人ひとりが尊重される快適な空間作り

 

ユビキタス社会の快適居住空間

家族の一人ひとりが尊重される快適な空間作り

 

2007.6

THE MONTHLY MITSUBISHI №499


家族の一人ひとりが 尊重される快適な空間作り

ユビキタス社会に求められる心と身体にやさしい快適な居住空間とは?

医師と建築士の意見を聞いた

寺下  建築士と医師には、共通する部分がありますね。注文主 や患者さんの状態を判断し、要望に応えていくという点で。

月田  確かに、そうです。まず、間取りを考える以前に、何のために新築されるのか。例えば、家族が増えるからなのか、夫婦ふたりで静かに暮らされたいのか。建築士として、そこを把握していないと設計の方法が決まりません。ただ、皆さんに共通するのは、健康で快適に楽しく暮らしたいという思い。この要望は、着実に増えています。

寺下  快適さには温度・湿度・ 広さなどが関係します。このうち、温度・湿度はユピキタス社会では快適に保たれますが、問題は広さでしょう。なぜなら、心の平穏と広さは密接に絡んでいますから。

月田 といいますと?

寺下 部屋の広さと夫婦ゲンカは相関関係にあります。狭いとケンカの回数が多いという統計が示されているのです。でも、ただ広ければいいというものではありません。問題は家族問のコミュニケーション、要は距離の取り方です。

月田 リビングと個室のバランスですね。個室は、比較的設計しやすいのです。でも、リビングは家族が集う場だけに総意を得るのが難しい。できるだけ広く、家の一番いい場所にと、皆さん、おっしゃるのですが…。

寺下 リビングに対する考え方も変化してきでますからね。

家族の気回を感じる 家の在り方

月田 7年前に新築されているんですよね。

寺下 はい。リビングに対する 私の要望は家族全員で何かをするだだっ広い空間より、子どもがゴロ寝してTVゲームをでき るコーナーがあれば、妻が読書にふける場所もある。そして、私が遅い夕食をとるテーブルもあるという、小さな空間の組み 合わせでした。個々が好きなことをしながら、目の届く範囲にある。つまり、家族の気配が感じられる家にしたかったのです。

月田 よく分かります。私も、家族が集まるリビングやダイニングを窓越しに見ることができる位置に、書斎コーナーを設けたことがあります。好評ですね。家族の気配を感じることが安心、快適につながっていくようです。

寺下 常に家族全員で何かをするとなると、それがストレスになることがあります。このストレスだけはユビキタス社会でも、どうにもならない。ですから、ストレスを感じない居住空間というのが、とても大事になってきます。ストレスは胃・十二指腸潰蕩、抑うつ症など、あらゆる病気の遠因になっていると言っても過言ではありませんから。

月田 家の敷地面積や規模にもよりますが、どうしても家族全員に個室を用意できないケースがあります。それでも、廊下を広げて個室に近い部屋を設けたり、どこかの出っ張りをコーナー的に確保することは可能。ひとりになれる空間は、やはり必要ですし、設計士によく相談することです。

家の窓は、風の目。 重要なポイント

寺下 実は、建築士と何度も相談した部分があります。それは、家の窓。採光を考えると位置は決めやすいのですが、一方で風通し、つまり換気もよくしたい。

月田 快適に暮らすには、採光も換気も大事ですからね。

寺下 そう。ただ、風は吹く方向が一定しているわけではありません。結局、採光と換気は両立するのが難しく、採光の方を優先せざるを得ませんでした。

月田 窓は、英語でwindow。もとは“風の目”という意味で、人の目が表情を決定づけるように、窓の位置や大きさが家の外観を左右します。採光、換気だけでなく、室内の雰囲気作りの点で重要なポイントなんです。

寺下 ダニやカビなどが原因で アレルギー症に悩む人は、家の換気にかなり気を使ってます。外が寒くても窓を開け放って、空気を入れ替えたりと。

月田 開く窓は、窓の種類が限られてしまう。よく使われるのは、引き違いの窓(左右に聞く窓)。ところが、換気に縛られないと、フィックスウインドウ、パノラマウインドウなど、いろいろな種類の窓が使用できます。眺めもいいし、広がりを持った快適な空間に仕上がります。

寺下 風通しを気にせず、家作りができるものなのですか?

月田 全館を24時間冷暖房し、かつ換気まで行うシステムなら、それも可能です。1台の室内機で、各部屋や廊下に設置された小さな吹出口から冷気や暖かい空気が流れ、同時に換気もします。壁掛けエアコンのように場所を取りませんから、間仕切りのない自由な空間を設計できる。省エネで電気代も安くなります。

寺下 ユビキタスな家ですね。医療も建築も、よりパーソナルに、心と身体にやさしい環境を求める時代になりましたね。

    

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