アクティビティ手工芸士

 

介護予防カタログ

アクティビティ手工芸士

グラファージ

vol 25 2007/9

グラファージ株式会社



脳のなかの名医
 
近年「脳科学」といわれる分野の研究がとみに進歩している。単に、頭の良し悪しや運動を制御する 仕組みや喜怒哀楽との関係などについて表層的にとらえるだけでなく、脳の奥深い神秘にまで科学のメスは切り開こうとしている。
しかし、切り開けば開くほど、その奥に更なる神秘が潜んでいることを発見することになる。科学の神秘を探求する場合、意外と役に立つのが常識的発想である。
「神様はどのような意昧でどのように作り上げたか?という「神様の常識」を意識して発想すると案外正解に行き着くものである ( と私は考えている )。

心療内科医、そして新しい分野である医療判断医としての経験を重ねる中で、人間の脳の働きの凄さには驚かされるばかりである。しかし、その凄さには良い凄さもあれば良くない凄さもある。この「良い凄さ」を治療医学や予防医学の分野で活用した例は数多い。

脳は最強最大の処方薬局
「名医にもらう薬は小麦粉の粒でもよく効く」とは 誰もが知っている話ではないだろうか。その逆もありそうだから、我々医師は自己を戒めなければならないのだが、このことは科学的にも証明されている。
「プラシーボ効果」別名「偽薬効果」と呼ばれる。
医師や薬のことを信じることにより、その薬本来の 薬理効果だけでなく、心理的効果が加味されるのであり、統計的には平均しておおよそ 20%くらいの「プラシーボ効果」があるとされている。
まさに「信じるものは救われる」という神懸かり的な話であるが、これもまた科学的に証明されつつあるのである。
我々人間の体の中は、ホルモンとよばれる様々な伝達物質が駆け巡っている。休中のホルモンがお互い影響し合っているが、特に脳のなかではホルモンの動きが活発である。脳から出るホルモンだけに頼って全身麻酔の手術が出来ることは、「針麻酔」の話でご存知であろう。
「脳は最大の処方薬局」といわれる所以である。 

脳ヘ届ける処方箋
それならと考えることは、その素晴らしい脳ヘ届ける「処方箋」をどのように書こうかということになる。
脳卒中で片手や片足や発語が麻揮したときに行う リハビリや精神疾患に対する各種の心理精神療法 はそれらの代表的なものであろう。最近では「笑う ことにより免疫をあげる」試みなどもされている。
みなさんの常識的感覚からも納得できる話ではないだろうか。逆に、悪いストレスは「毒薬の処方箋」 であることも容易に推論できる。

優良処方箋としての 「手工芸」
脳卒中などの患者さんのリハビリとして、単に運動をサポートするだけでなく、麻雀をしたり囲碁将棋やカラオケをしたりすることにより効果を上げている。 今回、「介護現場を想定したアクティビティ手工芸士」を育てることの意義について相談を受けた。 正直、「これは面白い」 と直感的に思った。
なぜなら、脳の処方薬局をいろいろな角度から活用することになるからである。作業療法的に細かい手の運動が脳を刺激するし、行う作業が単なる繰り返しではなく、物を作り上げていく楽しみを有している。
創造力と達成感を刺激する。また、先生としての手工芸士と生徒としての被介護者との触れ合い、作品を通しての生徒同士の触れ合い。熟練してくると作品を通して社会への触れ合いを復活できるという喜びをもたらしてくれる可能性がある。
もちろん、「手工芸」に限ったことではないだろうが、 介護現場の高齢者への手工芸指導ということに的を絞ったアクティビティ手工芸士という発想は、社会的意義を持ちながらそれ自体が自立性を持つという安定感を兼ね備えた事業だと考える。
心から応援したい。

 

    

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