『標準治療2004・2005』のポイント

表紙

正しい治療へ導く水先案内役

『標準治療2004・2005』のポイント

ホスピタウン

2004.9

日本医医療企画 発行


正しい治療へ導く″水先案内役″

医療決断を支援する機能に期待大
  • ご挨拶
  • 『ガンなどの大きな病気になった時の主侍医の活動』
  • 『病院で行なわれる検査』
  • 『医療判断・医療決断支援外来』
  • ご購入・ ご質問

自分が受けている治療は標準的で適切なものか? という疑問に答えるべく、2002年4月に発刊された家庭版ガイドラインとも言うべき『標準治療2002・2003』(日本医療企画発行)。2年の時を経て今年8月に、さらにスケールアップした改訂版『標準治療2004・2005』が上梓される。総監修者の寺下謙三氏に、同書発刊の意義と改訂のポイントを聞いた。

あふれる情報のなかから必須のエキスを抽出

…『標準治療2004・2005』は、どのような狙いをもってつくったのですか。

寺下
 患者さんが求めているのは安心・納得できる医療ですが、あまりにも情報が氾濫していて、どれを選んだらよいのかわからないのが現状でしょう。治療方針に納得するためには、いくつかの要素が必要だと思います。特に大切なことは、まず詳しい情報を知ること。もう一つは、たくさんある情報のなかからエキスを取捨選択することです。たとえば、本書の「受診のコツ」の部分はとても簡略に書いています。詳しい情報も確かに必要ですが、それよりも大事なことはエキスの抽出だと思い、ポイントが一目でわかるように工夫しています。今回の改訂では、「世の中にあふれている情報のなかから、必要な情報を抽出すること」に、初版以上に気を配りました。
また、「あなたの『医療決断』を支援する本」というサブタイトルを付けたのは、「患者さんが受けている治療は安心できる標準治療ですよということを知って、納得してもらいたい」という理由からです。決して、「その治療は間違っていますよ」と脅かすのではなくて、「今受けている治療は正しいんですよ、安心してよいのですよ」ということを、本書を通して伝えていきたいと思います。
現場で実際に行われている「事実上の標準治療」がわかる

…医療決断というものが、どうして今、必要なのでしょうか。

寺下
 私たちは何かをする時、「納得」して「決断」してから「行動」しますよね。これは医療に限ったことではなく、たとえば食事をする時も、どのくらい費用をかけて、どんな物を食べようかということを決めてから行動するわけです。もしその食事が失敗だったら、次は食べなければいい。
しかし、医療の場合は命にかかわりますから、そのような試行錯誤はなかなか難しい。ですから、医療を受ける場合は決断が非常に重要になります。たとえば、手術をして切るか切らないかという決断だけではなく、医者に行くべきか、何科に行くべきかなど、さまざまな決断の連続なのですね。そうした決断を正しくするための道具として、この本を有効に活用してほしいと思います。
本書では、執筆陣である第一線の専門医が現場で一般的に行っている治療を「標準治療」と位置づけています。厚生労働省や学会主導で作成される「公的標準」ではなく、「デファクトスタンダード=事実上の標準」ということになります。患者さんにしてみれば、「今、この病気については、日本の優秀な専門医にかかれば概ねこのような治療が受けられる」ということがわかるわけです。
また、これは完成品ではないので、今後、現場の意見を吸い上げて、必要な意見は次回改訂時に、本書に反映させたいと思っています。ですから現場の医師で、自分の医療標準はこのようなものだという意見があれば、ぜひ教えてほしいのです。
充実した執筆陣と掲載内容話題の疾患項目や別冊も

…初版の『2002・2003年版』と比べて、どのような点が充実していますか。

寺下
 まず、執筆陣の専門医が66人から116人に増えたことです。
その選定についても、患者さんをアクティブに診ている医師を中心に、私自身が患者になっても安心して診てもらえる医師ということを条件にしました。
また、掲載項目も増やしました。たとえば「話題の疾患」という項目を新設し、心原性脳梗塞、低髄液圧症候群、BSE、心臓突然死などを取り上げています。それから、読者の皆さんが医療に接する時の水先案内と決断の支援をするために「医療決断支援科」という項目を設けているのも特徴です。本書のエキスともいうべき部分なので、購入されたら最初に読んでほしいですね。あと、「最新の検査」や「医療専門用語」に関する別冊も付けました。
最後に強調しておきたいのは、私が常日頃の診察の時から気をつけていることでもあるのが、「アカデミック=学術的」、「プラクティカル=実践的」、「カンファタ ブル=人にやさしく」 の3つをバランスよくかみ合わせて本書をつくったということです。この3つが揃っていることが納得診療のコツとも言えます。

…医療者にはどのように使ってほしいですか。

寺下
 本書は専門書に比べるとコンパクトにまとめていますから、短時間でその病気のことがわかります。
自分の専門外のことを調べるには非常に役に立ちます。ですから患者さんに説明する時に非常に参考になると思います。「受診のコツ」は、これを基本にして、この順番どおりに説明すれば、患者さんは納得するのではないでしょうか。「受診のコツ」に掲げる項目は、患者さんが聞きたいことだと思いますので、アレンジして読み替えて説明してあげるとよいと思います。
私自身もかつて、「医者が本を調べたら、患者さんからこの医者は信用できないと思われるんじゃないか」と思っていました。だから、薬の説明をする時など「念のため薬の名前をチェックしましょう」と、言い訳をして調べました。ところが、患者さんからは「あの先生はわざわざ自分のために本で確認してくれている」というように評価されるようになって驚いたのです。きちんとした態度で本を調べて確認するということは悪いことではないと気づきました。患者と会話をするツールとして利用してほしいですね。
    

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