消化器外科 NURSING

表紙

消化器疾患看護の専門性を追求する

巻頭エッセイ

消化器外科 NURSING

2005.1.1

株式会社メディカ出版


「医療の仕組みをアレンジしていくだけでも、安心で快適な医療環境をつくることができる」というコンセプトのもと、20年前、仲間の医師らと私的医学医療シンクタンク(現寺下医学事務所)を創設しました。設立当初は電子カルテや医師の相互コンサルトシステムなどの開発を行いましたが、行き着いたところがローテクノロジーの「主侍医」という考えでした。今までの「主治医」は、日本の保険システムの制限で「病気になってからの担当医」ということであるのに対して「健康なときからそばにいる医者」という意味です。まさしく皇族の「侍医」のような役割を受け持つ医師です。主侍医は、交響楽の指揮者や飛行機の管制塔のような役割を担いますが、なによりも患者さん(主侍医としてはクライアントと呼んでいます)のさまざまな医療決断を支援することがおもな役割です。

今や、日本にもアメリカより「情報開示と自己責任的医療」の波が押し寄せています。この現象は、マスコミによれば国民の要望であるとしています。私の考えでは、アメリカと日本の社会的背景は違い、本当は日本の国民は「医は仁術じんじゅつに基づくお任せ医療的安心」を望んでいるのではと考えています。その間を埋めるのが、われわれの提唱している「主侍医」なのです。何事も「決断」することには知識とエネルギーが必要です。車や家を買うときはもちろん、昼ごはんに何を食べるかを決めるのも時には迷います。ましてや命がかかった医療決断には、計り知れない知識とエネルギーと心の強さが必要です。

われわれ主侍医の専門は何かと聞かれたら「医療判断医」と答えています。クライアントの医療決断を支援するのがおもな職務だからです。この決断には医学的根拠はもちろん、心理学的情況と社会学的背景への十二分な配慮が必要です。実際的な専門医の人脈も不可欠です。専門医や治療法選びから、病気の受け入れ方、予防医学的活動などについてクライアントの方と一緒に決断していきます。今のところ実験的実践といったところであり契約人数を限定させていただいています。看護師さんの経験がある方で、われわれの考えている「医療決断支援師」を目指される人を求めています。我と思われん方はぜひ門を叩いてほしいと願っています。

    

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