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- 性善説ルネサンス② 果たして人間の良心は脳科学で解明されるか
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性善説ルネサンス② 果たして人間の良心は脳科学で解明されるか
2006.4~2006.11 性善説ルネサンス② |
ばんぶう 2006.5 日本医療企画 |
「脳科学」ブームである。マスコミではその一部分だけを面白おかしく取り上げて、一部の専門家を猿回しの猿のごとく扱っているから、大衆はなんとなく理解した気分になっている。毎度のことである。私も売れない猿になったことがあるからよくわかる。
確かに、世界中の研究者たちにより脳の機能について細部にわたり研究が重ねられ、膨大な研究成果が次々と明らかにされている。脳のどの部分がどのような機能を持っているのか、また、脳内の神経伝達物質はどのように働いているのかなど、分析的な視点での学問進歩には驚くべきものがある。また、心理学者や精神医学といった臨床系の専門家たちは、最先端の認知行動心理学などを中心に人間の心についての研究を進め、多くの知見を発表している。こちらは、脳全体の総括的な視点での学問である。
こういった脳サイエンスの力により、いずれは「性善説か性悪説か」という永遠のテーマに思えるこの課題に終止符が打たれるのであろうか? タイムマシンがあれば未来を覗いてみたいと思う私の、好奇心をくすぐる最大の関心事の一つである。
少なくとも現状では、脳科学者だからといって自分自身の心の解明・制御ができている人など見たこともない。私自身、「医療決断における心理学」ということを一つの研究テーマとしているが、「意思決定の迷い」は日常茶飯事である。高名な占い師でも、自分の運命は変えられないのと同じである。でも、「なかなか思い通りにならないこと」こそが、人間にとって面白いことでもある。「ゴルフボールやパチンコの玉」「増えゆく体重」「人の気持ち」「着実に進む老化」などに私たちは莫大なお金や時間を割く。たいていはうまくいかないし、うまくいったよ
うに見えても長続きしない。
最近、あまりにも気になったので『良心をもたない人たち』というタイトルの本を購入してしまった。次回はこの本の書評を脳科学の観点から行いたい。人間の良心は哲学的には解明されても、脳科学では解明されないという見解を私は持っているのだが、果たして。