ストレスを感じさせない、家づくり

 

ストレスを感じさせない、家づくり

PURE Style book

2007.4

三菱地所ホーム


み心地のいい家とは、どういうものなのか。家族が生活する場だけに、誰しも健康で快適に暮らしたいと願うもの。 ここでは、住宅が心身に与える影響について、 7 年前に住宅を新築 された寺下先生に、自らの体験を交え語ってもらう 。

--以前から、社会的衣食住を提唱されてますね。 

 ええ。キーワ ードは「快適」「安心」「満足」の 3 つ。これらを住宅に限定して考慮すれば、「快適」には温度・湿度・広さなどが、 「安心」はセキュリティーというより心の平穏が、「満足」にはイン テリアや趣味・晴好などが大事になります。また、広さと心の平穏 が密接にからんでいるように、これらは微妙につながっています。

--具体的に説明してください。

 部屋の広さと夫婦ゲンカは相関関係にあります。狭いとケンカの回数が多いという統計が示されているのです。でも、ただ広ければ いいというものではないでしょう。問題は家族問のコミュニケーション、要は距離の取り方です。たとえば、家族が集うリビング。一堂に会して何かをする広い空間もいいですが、子どもがゴロ寝して TV ゲームをできるコーナーがあり、夫が遅い夕食を摂る小さなテーブルがあり、妻が読書に耽るコーナーも設けてある。個人的には、 そうした小さな空間を組み合わせ、変化を持たせた方がいいと思います。常に家族全員で何かをするとなると、それがストレスになる 場合がある。個々が好きな事をしながら、目の届く範囲にある。そ して、少々狭くても、ひとりになれるスペースもある。家族の一人ひとりを尊重した、いわば心のバリアフリーを念頭に置くことです。

--基本的に、ストレスのない家が大事だと ?

 そうです。職場のストレスなら、グチを言ったり、お酒で紛らわ すことができます。ところが、家族におけるストレスは発散しにく いものです。まさか妻や夫、子どもの悪口を、他人に言いふらすわ けにはいかないでしょう 。

--ストレスにさらされると、どのような行動を取るのでしょう。

 通常、ヒトは 2 通りの行動をとります。 FIGHT か FLIGHT 、闘争か逃走です。しかし、現代人はどちらの行動もとれないのが実情。
ストレス解消の行き場がなくFREEZE 、つまり固まってしまう。結果、心身の健康がむしばまれるのです。胃・十二指腸潰傷、ぜん息の発作、抑うつ症など、ストレスは、あらゆる病気の遠因になっていると言っても過言ではありません。

--ストレスを受けやすい状況は ?

 頭文字をとって HALT中でも、Lonely につながる無視が一番 きつい。心理学用語で、人との触れ合いをストロークと呼びますが、これには、良いストローク ( 褒められる ) と悪いストローク ( けなされる ) があり、無視は悪いストロークの最たるもの。ですから、玄関に入って個室に直行できる作りではなく、その前に家族の誰かの目に触れる、声を掛けられる、そうした空間を作るのが、家族問のコミュニケートの面でも、家作りには必要なのだと思います。

--温度や湿度もストレスの原因に ?

 ヒトは恒温動物ですから温度差を調節するのに、大変なエネルギ ーを必要とします。大量のエネルギーを消費するということは、ストレスにつながります。ですから、屋内全体を一定の温度に保っておくのが理想。ある部屋は暖房をガンガン効かし、別の部屋は寒いというのは、健康にはマイナス。うつ病は冬の寒い時期に発症しやすく、また心筋梗塞や脳血管障害は冬の早朝、暖房の効いてない風呂場やトイレで発症する例が少なくありません。


<増えている不眠症とアレルギー症>

--最近、不眠を訴える人が多いと聞いてますが…。

 私の所にも、不眠症の患者さんが多く来られます。不眠症は入眠障害、途中覚醒、熟睡感の欠如に大別され、加齢現象のひとつとも 考えられています。寝るにも、エネルギーが必要なんです。ただ、最近は若い方でも不眠を訴えられる人が増えてきていますね。

--どこに、原因が ?

 多くは職場でのストレスが原因になっています。その人に応じたアドバイスなり処方をしますが、一度、寝室の環境を考えることも 必要でしょう。睡眠には音と温度と明るさが関係します。冷暖房を効かせ過ぎて、エアコンの音が耳に入っているようでは、いい眠りとは言えません。睡眠のリズムを作るのに、一番大事なのは光です。 何時に寝ようとも起きる時間を決めておき、日々実践する。そして、起きたら、まず日の光を浴びる。この習慣が、いい睡眠のリズムを作ります。それを家作りで生かすには、窓の配置をどうするかです。

--アレルギー症の人も増えている ?

 年々、増加傾向にあります。原因は家庭内のホコリやダニ、大気汚染、花粉などさまざまですが、どれかひとつが原因になっているのではなく、それらが複合的にからまっています。

--できれば、家の換気をよくしたい ?

 それは、私も考えました。ホコリやダニを吸って、体にいいわけ ありませんからね。ただ、できるのは窓を開け放つなり、こまめに掃除することぐらい。難しいのは、換気用の窓と採光用の窓が、必ずしも両立しないこと。太陽の動きは一定ですが、風の流れは季節によって、あるいは日によって違います。もし、窓を開けなくても 一般家屋で常時、換気できるシステムがあるなら便利でしょうね。

--これから住宅を建てられる方に、どのようなアドバイスを。

 家族や仲間と何気ない会話、いつもの食事をするのが家。一見刺激のない生活だが、そんな日常の楽しみを演出してくれるのが住宅だと思います。そのことを念頭に、機能や利便性を追求するだけで なく、家族全員の心のバリアフリーに配慮されるのがいいでしょう 。

    

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