ヒートショック

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №104

 カルテ55  救急科、内科、循環器科

 2015/1/5

 


 

◯概説/症状◯

 現状では正式な医学用語とされていませんが、「急激な温度変化が原因となり、心臓や脳血管に重度な障害を起こすこと」を便宜的に総称しています。医学用語としては、細胞レベルで熱による障害を受けることをヒートショックと呼び、その時に身体を守るヒートショックプロテインと呼ばれるタンパク質が合成されることを指しますが、日本では、通常、前者の意味で使われます。

 日本では、入浴に関連した死亡数は年間1万数千人と推計されています。その多くは、冬場に起こります。日本家屋の特徴でしょうが、風呂場の脱衣室などはまだまだ十分な暖房が設備されていません。暖かな居間などから移動して寒い脱衣室で裸になり、寒い風呂場に入り、急に温かな湯船につかることになります。この間は、どんどん血圧が上昇します。ところが身体が温まり落ち着いてくると、血圧は下降し始めます。こういった急激な血圧変動に伴う血管の収縮や弛緩が引き金となり、脳血管障害や心筋梗塞を引き起こすことをヒートショックと呼んでいます。

◯診断/治療◯

 いずれにしろ発作を起こしてしまうと、意識障害が伴う重症であることが多いので、患者を安静にし、タオルケットなどで保温をし、いち早く救急車を呼ぶことです。心筋梗塞の場合は激しい胸痛、脳血管障害では麻痺や意識障害が主な症状となります。

◯予防/対策◯

 上記のように、発症してしまうと危険な状況に陥ることが多いので、何よりも予防対策が大切です。冬場に温度差がでやすい脱衣室やトイレなどを穏やかに暖める暖房の用意をしましょう。風呂場は脱衣の前に、温かいシャワーなどを出しっ放しにして暖めておいたり、湯船のふたを早めに開けておくなどして風呂場全体を暖めておきます。お湯はぬるめにして、ゆっくりと出入りするように心掛け、飲酒後や過剰な長湯を避けることです。半身浴などもよいでしょう。また入浴前後の水分補給も有用でしょう。深夜の寒い時の入浴よりも、夕食前の早めの入浴もお勧めです。老年者がいる家庭では、風呂場から家族人へ連絡する「緊急ボタン」もできれば設置したいものです。

    

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