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りす倶楽部 「共感と同情」
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りす倶楽部 「共感と同情」 |
№189号 2010/9 りす倶楽部事務局発行誌 |
医療や看護やカウンセリングの心がけの基本は「傾聴と共感」だとよく言われる。この共感に似たようなものに「同情」がある。どうも日本人は「同情」が好きなようで、選挙の際でも「同情票」というような言葉が存在するくらいである。「共感票」とは言わない。つまり「共感」と「同情」は明確に区別されている事になる。僕は。この辺りのところが医療に大切な事だと思っている。医療者として活動する際には患者の苦しみへの共感が必須であり、それを原動力として解決への努力のエネルギーが発生する。普段は、そこまでは意識していないだろうが、患者さんの病状が悪く、それに対処する医師にも相当エネルギーが必要な場合、そのエネルギーの源となるのが「患者の苦しみへの共感」ではないだろうか。
では「同情」ではいけないだろうか。一般に「同情」からはプロの判断が生まれにくい。先ほどの「同情票」のように、ともすれば正しい判断を逸脱する可能性がある。「同情」には、良い意味でも悪い意味でも感情移入が色濃く入ってしまうからであろう。
では、患者側からみたらどうだろうか。よく「患者の痛みの分かる医者は少ない」との批判を耳にする。実際そうであろう。痛みはなかなか伝えにくものであり、理解も難しく、理解したつもりでも患者から見ればわかってくれていないようにかんじるものである。痛みに対して、「同情」して欲しいと感じでいるか「共感」をして欲しいと思っているか「理解」だけしてほしいと思っているかは、かなり個人差がある。
患者と医師との関係はつくづく難しい。うまくいっていると信じていても、結果が悪くでると、こじれる事が多い。他の医師の不用意な言葉により関係の悪化は加速することもある。この嘆きは、真面目に医師業務をしている仲間からもよく聞く。商業主義的または権威主義的な医師からはむしろ聞かない。そもそも「聞く耳」「共感するこころ」をあまり持ち合わせていないからであろう。医を打算的に行うためには「聞く耳」はとても障害になるし、権威主義で名誉地位のみを追う者にとって「共感」するこころは1次試験落第につながる。
患者も医師も同じ人間。時に患者は「共感のような演技」「同情のような振り」に騙される。「プロとしての共感」を理解できず、結果に振り回され自分にとっての良医と袂を分かつ事がしばしばある。医療決断支援の仕事をしていてつくづく感じる事である。同情好みの日本人の宿命であろうか。
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