ホームドクター“主侍医”の存在 1

表紙

Health Report

新しい医療システムが誕生

ホームドクター“主侍医”の存在 no.1

旅行読売 2002年12月号

2002.12.1

旅行読売出版社


「医者にかかる時は、いつも病気になってから」それも、今の医療システムでは当然のことだ。 しかし、事前にもっと相談できる相手がいたら…。
現代の医療システムに疑問を投げかける医師・寺下謙三氏が、“主侍医”という新たな医療制度を提唱する。

一人の医者が個々の患者に対応しきれない、現代医療の閉ざされたシステム

普段からなんとなく調子の悪い部分が、ある日突然、いてもたってもいられないほど具合が悪くなる。
そんな時、みなさんはどうするだろうか。もちろん、選択肢は一つ。這々の体で病院に駆け込むほかないだろう。 そして、病院にかかった時にはすでに病気は進行していて、担当した医者に「なぜここまで放っておいたのか」と言われる始末。
しかし、もし自分の気になる症状について日頃から医者に相談できていたら…。体が発信していたシグナルに気づいていたのではないだろうか。
体を壊した時には、昔ならかかりつけ医が往診に来て、病状を見舞ってくれたものだが、現代では診療所や病院の形態も変わり、個人の家へ往診することもなくなった。
さらに検査や治療技術が複雑化し、一人の医者がすべての分野に精通するのは難しい。つまり、今の医療システムでは一人の医者が個々の患者にきめ細かく対応するのは極めて困難なのだ。

では、病気から自分の身を守るにはどうすればよいのだろう。
そこで、医師・寺下謙三氏が新たな医療システムを提唱する。主治医ならぬ″主侍医“、ホームドクターを持つことが健康生活の最善の方策だという。寺下氏は現在、寺下医学事務所を運営し、自ら主侍医として50人の会員を砲えている。
「“主侍医”は病気を治す医者ではなく、そばにいてくれる医師という意味です。つまり、相談医や門番医といったところでしょう。病院に行って医療を受けるまでの相談役であり、今受けている医療の第三者としてのアドバイザー役(セカンドオピニオン)でもあります。日頃の健康相談や専門医を探すお手伝いをしたり、治療方針の選択なども相談できるのです」
確かに、近くにある病院の先生を“かかりつけ”と考えても、事あるごとに健康相談をするのは心苦しい。ちょっとした診察にかこつけて、あそこもここも、と訊ねるほかない。
しかし、「“主侍医”は健康に関する弁護士」の役割をしているという寺下氏の言葉通り、契約で成り立っている相談役、つまり患者はクライアントという考え方だから、体のことで因っている時、不安な時、気兼ねなく電話で相談できるのだ。そのため、寺下氏は、常にクライアント・ファイルを持ち歩いている。どんな状態でも、クライアントからの相談が受けられるようにするためだ。全会員の自宅にはセットされた薬を置き、緊急の場合、通院するのが無理であれば服薬の指示を出すこともある。

健康な状態から相談できる主侍医の存在こそが、健康管理の最善策

著訳書に『なぜ会社は変われないのか』『トヨタ式最強の経営(共著)』などを持ち、自らも経営コンサルタント会社の社長を務め、多忙なスケジュールをこなす柴田昌治氏も寺下氏のクライアントの一人だ。柴田氏は30年ほど前から、食事の後腹部に重苦しさを感じていた。しかし、胃が悪いのだろうぐらいで放置していたという。ところがある日、「ミーティング後の会食で、食べ物が全然のどを通らない。具合が悪いまま、その晩はなんとかやり過ごし、明け方に寺下氏に電話したら、手元に置いてあった○番の薬を飲みなさいといわれた。そしたらケロッとよくなった。後で診察したら胆管結石になつていたんです」
アドバイザーがいることで、思い切って仕事ができるという柴田氏。さらに「健康に関するアドバイスが日常的に入ってくる。自分自身も健康を意識するようになり、体に無理を与えないようになりましたね。今は禁煙、呑みに行ってもほどほどです」
寺下医学事務所では、10年以上の臨床経験を持つ医師を主侍医の条件としている。さらに幅広い分野で医療全般の知識を身につける研修や、専門分野の技術や知識の交換をする定例勉強会などを行い、医師としての鍛錬を常に欠かさない。信頼のおけるメディカル・ディレクター(医療判断医)を育成することも、寺下氏の仕事の一つになっている。
それゆえに、寺下氏がクライアントと主侍医契約をする前には必ず面接をし、安全・予防というソフト面に対してそれなりのコストがかかることを説明し、趣旨を十分に理解していただいたうえで、契約をする。顧問料は月額5万円、個人ではなかなか支払える金額ではないので、たいがい中小企業のオーナーが法人契約を結んでいる。経営者として、健康管理の必要性を実感しているからだ。
人生を積極的に楽しむには、まず健康であること。身近に医療専門のアドバイザーがいれば、確実に人生がより豊かになるのは間違いない。

    

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