活性酸素による酸化ストレスが引き起こすアレルギー疾患

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

活性酸素による酸化ストレスが
引き起こすアレルギー疾患

…ゲスト…倉島一浩氏

自然派健康倶楽部

2002年春号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
倉島一浩氏

山王病院耳鼻咽喉科医長

1965年東京都生まれ。慶應義塾大学病院、国立栃木病院、東京都済生会中央病院などに勤務後、平成10年より山王病院勤務。
平成12年より現職。
専門は神経耳科。


活性酸素による酸化ストレスもアレルギー疾患を引き起こします。

寺下
免疫とアレルギーを 一口で説明するとどうなりますか。
倉島
たとえば花粉が侵入すると、生体はそれに反応して抗体という蛋白質をつくります。この抗体が生体を守るように働く場合を免疫といい、免疫が過剰に働きすぎて障害をもたらす場合をアレルギーと呼んでいるわけです。
寺下
実は私も花粉症に悩まされているのですが、花粉症になる人が最近急増しているようですね。
倉島
確かに花粉によるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎は増えており、しかも重症化と低年齢化が進んでいます。
寺下
なぜ増えたのでしょうか。
倉島
それは、日本で盛んにスギの植林が行われ、その成長がピークに達したことに加え、デイーゼル車の排気方スなどによる大気汚染が関係しています。花粉の飛散量が多い田舎より、都会にいる人の症状が悪化しやすいのは、都会の大気が汚れているからでしょう。
寺下
花粉と窒素酸化物などによる「複合アレルギー」というわけですね。
アレルギー薬が効かない鼻詰まりはレーザー治療がおすすめ
寺下
花粉症に対して、どのような治療が有効ですか。
倉島
通常は薬物療法が行われます。
内服薬としては抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬、外用薬としては抗アレルギー薬とステロイド薬が多く用いられます。ステロイドホルモンを点鼻薬として使うこともあり、局所的に働くため全身的な副作用が起こりにくいと言われています。また唯一、根本的な治療法と考えられているのが「減感作療法」です。これは感作された(過敏になった)体質を減らす(改善する)治療法で、アレルギーを起こすスギ花粉のエキスを注射で体の中に入れていきます。
寺下
外科的治療はありますか。
倉島
鼻の粘膜にレーザー光線を照射し、アレルギーの起こる場所自体を切除するという手法があります。薬物治療でも鼻詰まりが取れないという方にはおすすめです。
おなかに寄生虫がいれば、花粉症にはならない!?
寺下
花粉症を予防するためには、どういう方法がありますか。
倉島
いったん花粉症が発症すると、鼻粘膜の過敏性を抑えるために強い薬を使わなければならなくなります。そこで、花粉の飛散開始前(1月下旬~2月上旬)から飛散がなくなるまで、抗アレルギー薬を服用してもらう「季節前投与」が有効です。
 また生活上の工夫として、風の強い日には外出を控えるとか、帰宅時は服についた花粉をはたいて落とすとか、洗濯物を室内で干すということも予防効果があります。
寺下
花粉症はコップの水があふれた状態にたとえられますね。花粉に対する抗体があふれると発症し、それが続くというわけです。すると、まだ発症していない人も安心してはいられないし、花粉症になれば一生つき合っていかなければなりませんね。
倉島
老年期になると花粉症の症状は出にくくなるようです。しかし、逆に温度差に対する過敏性は老年期で出てくるので、アレルギーを起こす物質に過敏であれば、一生のつき合いになりますね。
 昔、寄生虫の感染が多かったころは、こういうアレルギー疾患は少なかったということですので、変な話、おなかにサナダムシでもいると、免疫の働きがそちらに集中し、花粉症などの症状は出てこないかもしれません。
寺下
今、世の中は清潔になり過ぎて、免疫の出番が少ないから、花粉やダニに目クジラを立ててしまうということですね。
アレルギー症状を起こす酸化ストレス
寺下
ゴルフ場で発見したことですが、調子よくプレーしているときは花粉症の症状は出ないのに、OBを打ったとたんにくしやみが出たりするのです。これはどういうことでしょうか。
倉島
体調とアレルギーは大いに関係があります。前の晩、寝不足だったり、すごくストレスがたまっていたり、疲れている時期は、アレルギー症状が強く出るということがあるのです。これには、ストレスによる自律神経の問題やホルモンバランスが関わっていると思われます。
寺下
ストレスで動脈硬化が促進されますが、アレルギーにもストレスが関与しているわけですね。
倉島
たとえば喘息では、活性酸素による酸化ストレスによって粘膜の障害を来して、過敏性が惹起されます。同じアレルギー疾患であるアレルギー性鼻炎でも、患者さんの呼気中の一酸化窒素濃度が上がっていることがわかっています。一酸化窒素が毛細血管の拡張を引き起こし、それが鼻詰まりにつながっていると考えられます。
寺下
「活性」と付くと、いい酸素みたいな気がしますけど、英語では「ラディカル」ですから、「過激な酸素」と言ったほうがいいかもしれませんね。
倉島
そうですね。ただ、活性酸素には組織を障害するという悪い面がある一方、殺菌という良い面もあるわけです。いわば両刃の剣の働きをしていますから、バランスよく活性酸素の濃度がコントロールされているというのが一番いいのではないかと思います。
寺下
しかし現代人はそのバランスを崩す食生活をしていますね。
倉島
インスタント食品は、活性酸素を非常に発生しやすいと言われており、それがアレルギー性疾患を生み出す状況をつくっています。ですから、そういったものは余り食べ過ぎない方がいいと思います。
寺下
抗体があふれないように、日頃から花粉に接しにくい生活をし、ストレスを避け、体を酸化しすぎない食生活を心がけることが大切ということですね。
    

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