腸のはたらきを助ける成分

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

腸のはたらきを助ける成分

…ゲスト…光岡知足先生

自然派健康倶楽部

2004年夏号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
光岡知足先生

東京大学名誉教授 農学博士

1930年生まれ。千葉県出身。
1953年、東京大学農学部卒。
専攻は細菌分類学、微生物生態学。同大学院博士課程修了。
「腸内菌叢の系統的研究」で1988年に日本学士院害を受賞するなど腸内細菌学の世界的権成。理化学研究所主任研究員、東京大学教授などを経て、現在、日本学会事務センター理事長、日本ビフイズス菌センター理事長。著書に『腸内細菌の話』『腸内クリーニングの驚異』『老化は腸で止められた』『健康長寿のための食生活』ほか多数。


食事やサプリメントで乳酸菌やオリゴ糖などを積極的に摂取し、「腸内環境」を改善しましょう

人間の消化活動には消化器の運動や消化酵素だけでなく、体内にすみついている細菌(バクテリア)が重要な役割を果たしています。その仕組みと腸内健康法についてお話いただきましょう。

腸内には100種100兆個もの細菌が棲息して健康状態に影響を与えている
寺下
医学で消化管について学ぶと、かつては大腸というのはあまり役に立っていないとされていました。小腸で栄養分を吸収し、大腸では水分を吸収するだけと。ところが、光岡先生をはじめとする研究者のおかげで、そうではないことがだんだんわかってきました。
光岡
大腸内には種類にして約100種、数にして100兆個もの細菌が棲息し、これは小腸の100倍~1000倍の数になります。腸内細菌のひとつで、乳酸菌(善玉菌)の一種であるビフィズス菌はオリゴ糖や乳糖といった消化しにくい糖類を好んで食べて分解し、乳酸と酢酸を作る。つまり、大腸では、水を吸収するのと同時に、そうした乳酸や酢酸などの栄養分も吸収されるわけです。ただし、腸内細菌の中には腐敗物質や発ガン性物質などはたらき方によっては身体に有害な物質を作り出してしまう細菌(悪玉菌)もいます。年齢を重ねるとビフィズス菌などの善玉菌が減り、ウェルシュ菌など悪玉菌が増える傾向があります。健康を保つためには腸内細菌のバランスを取ることが大切ですね。
寺下
光岡先生のおっしゃっている「腸内年齢」「腸内環境」というのは、主に大腸のことですか。
光岡
そうですね。「腸内環境」がよくなるというのは、腸のPHを下げ、弱酸性に保つということ。それを日常生活で判断するのに最も重要なのが便の色や固さなんです。腸内のPHが低いほど便は黄色っぽく、高いほど黒っぽくなります。赤ちゃんの便はPH4.5~5.5(酸性)なので、黄色い。健康な大人はPH5.5~6.0くらいで、黄土色をしている。7.0(中性)を越すと茶色っぽくなり、8.0(弱アルカリ性)くらいになると黒っぽくなります。大腸菌、ウェルシュ菌などの腐敗菌、いわゆる悪玉菌は、アルカリ環境を好んで発育し、PH6.0以下だと発育しにくい。逆に、いわゆる善玉菌のビフィズス菌が増殖すると腸内のPHが0.5くらい下がり、それにより悪玉菌が少なくなるんです。
「腸内環境」をよくする乳酸菌、オリゴ糖、食物せんいを摂取しましょう
寺下
おなかの健康のために、たとえばヨーグルトをたくさん食べたり、オリゴ糖を摂ったりするとよいといわれますが、摂取した乳酸菌がそのまま腸で活躍するわけではないそうですね。
光岡
はい。ヨーグルトの中の乳酸菌が腸内で増殖して腸内環境をよくするわけではないんです。乳酸菌を摂ると、もともと自分の腸内に持っている乳酸菌が増えるんです。乳酸菌FKなどは、体内のビフィズズ菌を増殖させる効果が高い。また、よくある誤解として、食物せんいがビフィズス菌のエサになるように思われていますが、これも間違い。ビフィズス菌のエサになるのはオリゴ糖などの糖類で、食物せんいではない。消化できない食物せんいは塊となって腸への物理的な刺激になり、ぜん動運動を促すんです。つまり、食物せんいを摂ると便を早く出してくれる。すると、腸内で時間をかけてゆっくり発育するウェルシュ菌などの悪玉菌の増殖が抑制され、結果的にビフィズス菌など善玉菌が増える。逆に、便秘をして腸内に便がたまっていると悪玉菌が増え、美容にも健康にも悪い影響を与える。そういう仕組みなんですね。
寺下
腸内環境を整える食品やサプリメントには、ほかにもケフィア、大豆乳酸菌など、いろいろなものがあり、製剤はカプセル、顆粒など形状もさまぎまですね。
光岡
そうですね。願粒のものはスティックで目安となる量を摂っていただければいいでしょう。ヨーグルトなら1日に200gくらい食べるといいのではないでしょうか。
寺下
腸内細菌は医学的にも注目され、今後もさらなる研究が期待されるジャンルですね。
    

Copyright ©2013-2020 Terashita Medical Office Allrights All rights reserved.