これからは、代替医療も視野に人れた健康相談ができるドクターが必要

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

これからは、代替医療も視野に人れた

健康相談ができるドクターが必要

…ゲスト…鈴木信孝氏

自然派健康倶楽部

2002年冬号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
鈴木信孝氏

金沢大学大学院医学糸研究科・補完代替医療学講座 研究室長 医学博士

香川l県出身。
1981年防衛医科大学卒業。。
1987年金沢大学医学部大学院修了。。
アメリカをはじめ海外で栄養補助食品として広く用いられているデヒドロエビアンドロステン(DHEA)の基礎研究で医学博士を取得。
恵寿総合病院産院院長等を経て、1994牛に金沢大学医学部講師(産婦人科)となり、2002年3月から補完代替医療学講座研究室長を兼務し現在に至る。
2001年より日本補完代替医療学会理事長。
ハルピン医科大学客員教授を併任。
補完代替医療分野でも特に、機能食品群の臨床応用や基礎的研究を行なっている。


これからはさまざまな分野がカを合わせて研究を重ねることが大切です。

寺下
鈴木先生は「日本補完代替医療学会」の理事長をされていますが、私はこの 「補完」という言葉が素晴らしいと思いました。
鈴木
最初は「日本代替医療学会」だったんですが、この 「代替」という言葉が、「取って代わる」というイメージがあるようで、一般の医師の方達から敬遠されてしまうことがあるんです。代替医療の目的は、サプリメントを利用して現代西洋医学を補いながら治療効果を高めていくことですから、お互い連携を取りながら進んでいかなくてはなりません。
最近のアメリカでの調査結果で、成人の約4割が代替医療を利用していることがわかりました。そのうち約半数が医師に相談せずに利用しているということです。日本でもほぼ同じような割合で代替医療を受けている患者さんがいると思われます。この現実を見ますと、われわれ医療従事者が、医師の立場で適切なアドバイスが出来るような態勢をつくる必要があります。そのためには、一般の医師の方にも受け入れやすい名称の方がいいということで、「補完」という言葉がつきました。
寺下
専門的に研究する機関も増えてきたようですね。
鈴木
アメリカでは現在ホワイトハウスで代替医療政策委員会というものをつくり、全米規模で調査を開始しています。日本でも厚生労働省の主導で、ガンと代替医療について調査を始めましたし、多くの学会も開かれるようになりました。金沢大学の方で 「補完代替医療学講座」 というものをつくっているのですが、そちらへの問い合わせも多くなっています。しっかりとした研究が必要な時期に来ているということです。
寺下
先生はハト麦の研究をなさっているそうですが。
鈴木
10年くらい前から研究を始めました。興味深いのは、ハト麦に限らずですが、ひとつの成分だけを抽出して薬をつくったとしても、決して同じような効果は得られない。その食品の持つさまざまな成分が相互に影響しあって、より高い効果が生まれるのです。これが自然の食品の優れたところではないでしょうか。
寺下
他の学会や研究者の方とも幅広く交流されているようですね。
鈴木
これからは、いろいろな視点から研究することが必要です。うちの講座でも農学系や統計学など、多彩な分野の研究者が参加しています。分野横断型の研究が大切なのです。そこで今、注目されているのが大豆です。
寺下
女性の更年期で大豆イソフラボンが注目されていますね。
鈴木
そうです。HRT(ホルモン補充療法)という治療法が医療現場で行なわれています。これは、エストロゲン(女性ホルモン)を投与することによって、更年期障害を抑えるというもので、現在広く普及して効果も出ています。しかし最近、逆に乳ガンや脳卒中などの発生率が増加するという報告もありました。
 一方この大豆イソフラボンですが、これに含まれ成分の一部が、女性ホルモンと同様のはたらきを持つことがわかっています。エストロゲン(女性ホルモン) と同じように更年期障害の緩和に効果があるとされています。更年期障害の独特の症状として、ほてり (ホット・フラッシュ) があります。これは真冬でも扇風機が欲しくなるくらいに顔がほてったりするのですが、大豆イソフラボンは、このほてりを抑制するはたらきがあることが報告されています。また、骨密度を増やすはたらきもあるので、骨折や骨粗しょう症の予防にも役立つでしょう。かつ、HRT(ホルモン補充療法)のように乳ガンなどの危険率が上昇することはないとも考えられています。また動脈硬化を予防するはたらきも報告されています。
欧米に比べてアジア人の乳ガンや前立腺ガンの発生率が低いのは、大豆をはじめとする豆類の摂取量が多いからではないかと考えられています。またアルツハイマーの予防や美肌・美白にも効果があるのではないかと、現在研究が進められているところです。
寺下
まさに 「現代西洋医学を補完する」研究ですね。今後の代替医療はどういう方向に進むとお考えでしょうか。
鈴木
「分野横断型」の研究を促進し、さまぎまな見地からサプリメント等を分析していく。それにより患者さんに対して、専門家としてしっかりとアドバイスができるようになるわけです。そのような態勢をつくっていくことが、まさに 「補完代替医療」ではないでしょうか。
    

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