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温故知新⑫ 美しい生き方
1997.3~1998.3 温故知新⑫ |
ばんぶう 1998.2 日本医療企画 |
「温故知新」を題材に書き始めて、早いもので1年経ってしまった。最初に書いたが、私は年の始めに一年のテーマを決めることにしている。平成9年は「温故知新」であった。
今年は何かというと「正しい生き方から、美しい生き方へ」というパラダイムシフトである。
どういう意味かと疑問に思われる方も多いであろう。成熟社会を迎えた日本にとって、本来すべての国民は心豊かに生活を送れる筈なのに、実際はどうであろうか。経済はずたずたに引き裂かれ、政治家にしろ医者にしろ教師にしろ大会社の社員にしろ、いちいち枚挙するときりがないくらい、本来信頼されるべき人々が不信を買っている。我々、大人だって心が乱れる、不安になる。子供たちが目標を見失うのも無理はない。「悪いことはいけない」「法律に反してはいけない」「正しければ何をしてもいい」「正しく見えれば何をしてもいい」「つじつまさえ合わせれば」とだんだんと拡大解釈がされていく。それが一気に剥がれ落ちたのが昨今の出来事ではないだろうか。
私はこれからの価値基準は「美しさ」ではないかと考えている。「正しくても美しくないこと」は結構ある。また逆に「正しくなくても美しいこと」もある。ネズミ小僧もそうだし、大名から高額の治療費を取り、貧乏人をただで見た赤ひげ医者もこの部類であろう。「美しさ」の判断は自分自身にある。つまり、しっかりとした価値基準を持ち、自分自身で判断できる能力をつけることが、これからの成熟社会を豊かに生きるコツだと考えている。新聞紙上を賑わしている様々な事件。司法当局はどう判断するかは別として、「美しくない」ことは事実だ。