正しい生き方から美しい生き方へ⑤ モラルール

 

1998.4~1999.4

正しい生き方から美しい生き方へ⑤
モラルール

ばんぶう

1998.9

日本医療企画


タイトルの『モラルール』は私の造語である。
 この言葉が生まれたいきさつをお話ししたい。先日、後輩でもある友人の奥さんと世間話が高じて「臓器移植の話」になった。というのも、「最近、不安や不満を訴える人が多い。」という話題からである。医療の現場で言えば、高度な医療が整ってきたのにも関わらず、現代人は昔の人にはないほど医療に対する不安や不満があるのは何故だろうか。「人の心臓をもらってまで生きたいと思うようになったからだよ」と私が言うと「先生、臓器移植に反対なのですか?」と真剣に驚いて聞かれた。「医師も患者も人間として道理にはずれないという保証があれば、そりゃあ臓器移植も我々人間の知恵の結晶の一つとして恩恵を享受できるけれどね。僕でさえ、最愛の女房や子供たちが移植によりのみ助かるとなれば、道理を守れるかどうか不安だよ。心臓移植はある意味では核技術と似ているんだよ。人間は神様のような絶対的な判断ができるものしか持ってはいけない技術をもはや開発してしまった気がする。パキスタンの核実験もそうだろう。」「そうですね。やはり使う人間の条件が必要ですね。パキスタンのようにならないためにも、力のある国が抑止しなければならない気がするけど…だから、ルールが必要ですよね。」「そうね、ルールという人が決めた規則も大事だけど、それは何が正しいか、ということになる。僕は最近思うのは正しい以前に美しいかどうかが大切なんだ。人間のモラルというか。そうそう、『モラルール』というのがぴったりかもしれないね。」…といったいきさつで『モラルール』という言葉ができた。
 政治家のみなさんにも是非使っていただきたいと念願している。

    

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