温故知新⑨ 「温新知新」と「温故不知新」

 

1997.3~1998.3

温故知新⑨

「温新知新」と「温故不知新」

ばんぶう

1997.11

日本医療企画


「温故知新」の話を書き綴っているが、これが通じないこともある。
先日、親しくしてもらっている銀行の方にゴルフに連れていただいた。IさんとKさんと言う。その銀行の顧客サービスの一貫として行っている定期健康セミナーの講師をさせていただいている関係上お付き合いをするようになった。Iさんとは夫婦でテニスをする仲にもなっている。Iさんはテニスの方がゴルフより熱心なようで、使用しているゴルフクラブは結構旧い。Kさんのゴルフクラブは更に旧い。「温故知新」派の私だから「クラシック」でプレーするのは優雅でもあり、新しい技術も覚えるものだ、と主張するところなのだが、ご存知のようにゴルフクラブもテニスラケットもこの数年格段の進歩を遂げ、我々素人には、最新の道具は必需品となってしまっているのである。
旧いクラブで苦戦しているI氏をみて、「Iさん、ゴルフクラブもラケットと同じで、新しいタイプのものにすると楽ですよ」とアドバイスした。
内心、I氏は「旧いクラブできたえるのがいいんですよ」と言うに違いないと思っていたら、さすが研究熱心なI氏、「実は新しいクラブを買って、練習をしていたんですが、そのまま忘れてきたんです」と。
古い技術や考えにしばられると、新しい発想や新しい技術を得られないことも多い。新しい技術を駆使し、新しい考えにも心を聞くことによって、更に新しい道も開けてくることも事実である。
「温故知新」より学ぶことも多いが、「温新知新」「温故不知新」にも注意を払わねばならない。
「伝統」と「革新」はまさに表裏一体なのかもしれない。
柔軟性、広い視野こそコンピュータには出来ない人間の特技だ。

    

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