質実剛健⑨  ニュース俗報

 

1999.5~2000.4

質実剛健⑨  ニュース俗報

ばんぶう

2000.1

日本医療企画


先日、帰宅すると、妻や子供たちがテレビで「金八先生」を見ていた。一緒に見ながら「金八先生も現代版になって変わったな」と思った。不良学生が登場した家庭内の暴力場面があり、私が顔をしかめると「これは超特別な過激な場面」と子供たちが言い訳めいて言う。
そんな話をしながら見ていると、画面に「ニュース速報」のテロップが現れる。『どこかで地震かな?』と思っていると[文京区音羽幼稚園の行方不明園児が遺体で発見される]という報道であった。
 実は、我が息子二人とも同幼稚園のO.B.である。人ごとではなく身につまされる事件である。妻も「〈自由に子供たちを育てよう〉と、頑張ってられた園長先生が気の毒に」と事件の酷さと、「お受験ムード」のせいにしている報道に落胆している。
私はどうも違和感を感じた。何だろうと考えると、この「ニュース速報」である。まだ、この被害者が生存していて、全国の皆に捜索の協力を至急お願いするならいざ知らず、このような人の不幸を他のテレビ番組を見ている人にいち早く知らせる必要があるのだろうか。報道されれば、多くのひとが興味を持つことは事実である。
 人間の本能のなかに「知識欲」というものがあり、これは結構「強力」である。良い意味で発揮すれば学問の探究になるが、ゴシップ好きの人間も同じ心理の仕組みで出来ているのである。後者の欲望にかこつけて商業主義に走ったのが、現代のマスコミの行き過ぎた部分だと思う。こうなれば他の欲望産業と同じである。インターネット、衛星通信など情報通信はこれからの人類の核になる分野であるだけに、関係者はプライドとともに深い哲学、倫理観を持って臨まないと、原発事故以上の恐ろしい副作用を人類にもたらすのではと危惧している。マスコミを含めた情報関連のプロたちにも「質実剛健」に値する仕事を望みたい。

    

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