質実剛健⑪ 感謝オンデリバリー

 

1999.5~2000.4

質実剛健⑪ 感謝オンデリバリー

ばんぶう

2000.3

日本医療企画


ゴルフ仲間である(といっても大先輩なのだけど)工学部の名誉教授から、「タイと日本の学術交流のため、バンコクのオフィスに長期出張しているので遊びにおいで」と招かれて、友人と突如バンコクに行くことになった。
三泊のせわしない旅行であったが、ゴルフと美味をたっぷり堪能できた。そのゴルフであるが、タイ出身者による東京大学の同窓生のコンペという企画がたまたまあり、そこに飛び入り参加となった。一緒に回った人は、タイで会社を経営している方で、勿論日本語はぺらぺらである。その人の話のなかに、非常にためになったことがあるので今日はそれを紹介したい。
 「私、日本のしきたりに慣れたために、タイに帰ってきて戸惑ったことがあります。タイでは、例えば、部長は課長の給料の何倍もありますし、社長は何十倍も違います。その代わり、一緒に食事に行ったり、飲みに行っても、必ず上の者が支払います。そして、部下は勿論『ありがとうございます』と言います。ところがその人と翌日会ったとしても、『昨日はどうも』とか『この前はどうも』とかは決して言いません。最初は失礼なやつだと驚きました。そういったいわゆる一宿一飯の恩義は翌日以降に持ち越さないのです。」
日本人には「あれだけ…してやったのに」ということが、会社の中でも、親子の間でも多いのではと思う。人の面倒をみることはそれが快感で、ましてやその時感謝の言葉を貰ったら、お釣りがくるほどである。子供の面倒を見るのは、可愛いからで、その時その時元を取っているのであり、人にご馳走するのは気持ちのよいことで、その時に利を得ているのである。「あれだけ…してやったのに」がもたらす人間関係のもつれは意外と多い。我々日本人が見習うべき習慣だと痛感した。まさに「キャッシュオンデリバリー(料金引き換え払い)」ならぬ「感謝オンデリバリー」である。あとあと過度な期待をしないことが原則である。もちろん「鶴でも恩返し」。恩を受けたほうは忘れてはならないのだが。

    

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