少数精鋭主義④ 3人寄れば文殊の知恵、10人寄れば猿の知恵

 

2000.5~2001.4

少数精鋭主義④

3人寄れば文殊の知恵、10人寄れば猿の知恵

ばんぶう

2000.8

日本医療企画


昔、脳外科医をしていたころ暴走族風の連中が交通事故で運ばれてくる場面によく遭遇した。さぞかし病院の中でもうるさくて迷惑を振りまくに違いないと思ったわけだが、意外に意外、結構おとなしくて従順なことが多かった。見舞いにくる連中もこれまた意外と礼儀正しかったりする。人の考えは間違いも多く、複数の人の知恵を合わせることは大切という意味で「三人寄れば文殊の知恵」という。しかしその反面、人は集団になるとその知能は急激に低下し、時には暴徒と化す。
井戸端会議の奥さん方の集団も、医師も政治家もそうである。一人一人の医師は結構使命感を持って医療活動をしているのであるが、医師会や医局の一員となると医師としての本来の良心が引っ込み、大義名分の元に自己の欲望が見え隠れするようになる。
心理医学の立場で言わせてもらえば「赤信号みんなで渡れば怖くない」的心理が働くのも一因であろうかと思う。前回書いたIT革命の世の中、ますます大衆心理が働きやすい世の中になることが予想される。
政治の世界もそうであろうが、もっと個人個人の意見をはっきり持ち、それをきちんと表現できるような世の中のシステムというか雰囲気が必要と思われる。勿論、裏を返せば、人の意見もきちんと聞き、受け入れていく心の寛容さが必要ということである。
みんな同じ格好をするのをよしとしたり、個人では何も言えず肩書きでしかものを言えなかったりといった大衆心理の横行と、人の事はお構いなし、自分だけが正しいという病的自己愛現象を示す人たちの二極化をマスコミやIT革命が助長しなければと願っている。

    

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