少数精鋭主義⑦ 偽少数精鋭主義

 

2000.5~2001.4

少数精鋭主義⑦

偽少数精鋭主義

ばんぶう

2000.11

日本医療企画


「しっかりしたものなら数は少なくてもいいのではないですか?」という意味で「少数精鋭主義」をテーマに話を進めている。ここで誤解を防ぐために、「偽物の少数精鋭主義」について言及しておきたい。 
時に、世の中のもの何にでも反対を示して、「我こそは反骨精神の塊なり。世の中には偽物を平気で認めてしまう馬鹿な人が多くて困る。」と豪語している人がいる。人と違うことをすることが自分の優れた証と信じているのである。これは私の言う少数精鋭主義とは似ても似つかぬものなのである。野球で言えば、多くのファンがいる巨人が嫌いだから、ファンの少ないどこどこを応援する、みたいななんとも哲学がない思考なのである。「わざと少数になり自己を主張する」のと「たとえ少数でも自己を主張する」のとはむしろ正反対の考え方なのである。こういったタイプは、それでも認めることができる人間はわずかにいるようで、例えば「ボブデュランは最高にいい、しかし、日本のフォークソングのYやIなどは単なる悪質な物まねで許せないし、それを好きだというやつが多い日本人は偽物が多くて困る。」などと言う。とにかく自分の思い込みによりほとんどの事を否定することを信条としているのだから始末が悪い。そのくせこういう輩は意外と権威に弱いのであるから面白い。「自分に味方する権威」にはめっぽう弱いのである。
皆さんの周りにもこういった人間が少なからずいるのではないだろうか。要注意である。一見、「権威に負けない頑固一徹な性格」というように映るこの性格の持ち主は、精神医学で言うところの「自己愛パーソナリティ」を中心とした境界型人格障害の一種なのである。いつかは必ずや貴方を不快な思い、時には不幸に陥れることになるであろうから、「触らぬ神に祟りなし」「君子危うきに近寄らず」を実行してほしい。心理医学の研究をしている筆者の痛い経験に基づいたアドバイスでもある。

    

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