少数精鋭主義⑨ 1人の敵と10人の味方(その1)

 

2000.5~2001.4

少数精鋭主義⑨

1人の敵と10人の味方(その1)

ばんぶう

2001.1

日本医療企画


よく「一人の敵は十人の味方に匹敵する」と言われる。この言葉にはいろいろな意味が含まれているものと解釈される。文字通り、「せっかく十人の味方を作っても、一人敵ができてしまうと自分への援助の力としては打ち消しあってしまう。」という意味合いで使われることが一般的であろう。また、日本のように減点主義を基調とする国民性を持った国では、「十個の成功をしても一つの失敗が命取りになる」という意味合いをも感じさせる。
実際、日本の会社での社員や国の官僚、政治家をみてもそうである。減点が怖いから、無難なことしか出来ない。それで、大勢の流れがはっきりしてから自分の態度を決めるという、ヒト呼んで「付和雷同型人間」が圧倒的に多い。「私は自分の意見を本来持っているのだが、みんながそうだから仕方ない」と豪語弁解する御仁も多い。まさに悪循環になる。
事と場合によるが「十個の失敗をしても、一つの成功を収めたもの」を評価することも結構重要だと私は考えている。分かりやすく言えば「たいしたことがないことを10個やるより、これは、と思うことを一つやる」ことの重要性である。我々、医師の世界での学会の数の多さと、それに年間何度も発表して忙しがっている大学病院の臨床系の医師が多すぎることもこの一つである。くだらない点数稼ぎの研究は止めて、ライフワークとなるような研究をするか、もっと日常の診療に熱を入れるかすれば、日本の医療レベルももっと上がるはずである。
この過激な意見に団体として反論できる人はたくさんいても、個人的には賛同してくれる医師が多いことも私は知っている。政治や教育の世界も同様であろうと容易に推察されるのだが。

    

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