少数精鋭主義⑤ 仕組みで変わるものと、仕組みで変わらないもの

 

2000.5~2001.4

少数精鋭主義⑤

仕組みで変わるものと、仕組みで変わらないもの

ばんぶう

2000.9

日本医療企画


「より安心の出来る医療の体制を作るには、なにも新しい画期的な技術はいらない。今ある技術をうまく機能させる仕組みを作ることが先決である。」という考えが私の持論である。
この信念に基づいて、医療のシステム作りの仕事やアドバイスを行うことが私の「医学事務所」のメインの仕事なのである。勿論、遺伝子技術はこれからの医療のシステムを大きく変えていくだろうし、人工臓器の研究も大切ではある。しかし、日本では医療技術上は臓器移植や遺伝子診断が可能であるが、日常的な医療は安心どころか不満だらけであると嘆き不安に感じる御仁は多い。今の医療に携わる人々だけで、特に新しいメンバーを加えなくても、また、画期的な医療技術が発見されなくても、全体的な仕組みを変えるだけで医療はシステムとして大進歩を遂げて結構理想に近い医療システムを作ることは可能だと私は考えている。
これと正反対にあるのが今の日本の政治事情ではないだろうか。近年、私たち一般人がともすれば混同するくらい、新しい政党が生まれたり解体したり合併したりしている。いろいろ試行錯誤の努力をしているようだが、単なる勢力争いに過ぎないように私には見える。理念やそれを実行しようという情熱や使命感の欠如した政治家が、同じ顔ぶれなのに政党の名前を変えたり政党の組み合わせを変えたりしているだけでは、変わりようがない。
今ある技術で結構十分な日本の医療界では、移植や遺伝子技術を偏り気味に渇望し、メンバーの総入れ替えが必要な政治界では、同じメンバーで仕組みをあれこれと工夫しては挫折を繰り返している。なんとも皮肉なことではないだろうか。

    

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