少数精鋭主義⑪ スモールメリット

 

2000.5~2001.4

少数精鋭主義⑪

スモールメリット

ばんぶう

2001.3

日本医療企画


私は契約制の相談医なるものを生業としている。そのクライアントの一人が、年賀状の中で「スモールメリットをいかしたお店作り」を心掛けていると、書かれていた。私は思わず独り言で「まさにそのとおり!」と拍手喝采したのである。今の日本の世の中、アメリカ的経済感覚でスケールメリットを利点にした商売が横行している。コンビニでも衣料品メーカーでも薬品会社でも、スケールメリットを獲得したものがその業界を制覇している。かく言う私もその恩恵にあずかり、廉価版フリースを愛用はしている。私は、車愛好家でもあるが、今の車業界、世界的に見ても、マニア的な車を作っていた会社はどんどん倒産したり大きな会社に呑まれていっている。かのポルシェやローバーも同じである。頑固に車作りに徹していればよかったのかもしれないが、アメリカ主導の「大量生産、大量販売、売上前年度比向上」を経済学の常識とする飽くなき商魂のもとに、ポルシェさえも大量販売の魅力に負けて、結果、いつまでもそんなことが続かず今や職人気質の一族は経営陣から消えつつあると聞く。大きく胸を張って「スモールメリットを生かした商売をしている」と言える人の商品に私は魅力を感じるのだが、皆さんはいかがであろうか。そういった観点で考えると、「IT時代を単純に喜んでいると、人間本来の快適性、幸せ感を見失うことになるかもしれない」と危惧を感じている人は私だけではないようだ。選択肢が増えることは、確かに豊かな感じがするが、玉石混交の1万個よりも、確かな10個のほうが豊かなのではないだろうか。

    

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