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魂を売らないということ④ 再度、オセロ型 敵対反応とは
2005.5~2006.3 魂を売らないということ④ |
ばんぶう 2005.8 日本医療企画 |
以前、このエッセイのシリーズで「オセロ型心理反応」と題した文章を書いたことがある。共感したり、同情したり、親しく接していた人が、何かのきっかけで一旦敵対したとたんに、今までの共感とは裏腹に「あいつはこんなことを言っていた」などと正反対の反応をすることがよくある。オセロゲームで一つの駒を白から黒に変えるだけで、ぱたばたと周辺の白い駒が、一気に黒に変化するのと似ていることから私が命名した心理学的反応であるが、人の心が傷つく大きな要因の一つである。
親友同士や夫婦や親子の間でこの反応が起こるとしばしば致命的になる。また、それに介すると「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」という格言どおり痛い目に遭うことになる。なぜこの反応が起きるかと考えると「結果よければすべてよし」の反対の心理反応であり、今現在、信頼を裏切ったり意見が対立することにより、過去同じ考えであったり、賛同したことまでも否定してしまいたくなる気持ちの表れである。「坊主憎けりや袈裟まで憎い」に近いがもっと醜悪なものである。この反応を起こす人には「演技性性格」の人が多く、迫真の演技をすることが多く、周囲の人は騙されやすい。恥ずかしながら心理医学の専門と自称する私も何度か騙されて落ち込んだ経験がある。裏を返せば、人から信頼される人間になる最低の条件は、このオセロ型敵対反応を少なくとも自分自身は起こさないことである。人と意見が対立したり、友達も嫌いになることもあろうが、過去の共感同意したことまでひっくり返すことはしないことである。対立する自分の意見をはっきりと表明するのとこのオセロ反応とは似て非なるものである。
オセロ反応を示す人の口癖であるが「自分に正直になって考えると…」と前置きして、平気で過去を覆すのであるから怖い。こういった人々とは距離感を置くことが大切である。私の経験では、つくり笑いが得意な人に多く、一見優しそうで無害に見えるから注意が肝要である。常設の
魂バーゲンセールに近づく無かれ。