常識に照らす③ 医学と常識

 

2001.5~2002.4

常識に照らす①

医学と常識

ばんぶう

2001.7

日本医療企画


人間の体や病気の仕組みなどを考える時に意外と役に立つのが「常識」である。 「そんな簡単にはいかないでしょう。複雑な仕組みが色々からんでいるのでしょうから」という反論がすぐに出てきそうである。勿論、人間の体の仕組みは、研究すればするほど、その複雑さに驚かされるが、ある一定の基本原則が実は存在する。「(神様は)なんと上手く人間の身体の仕組みを作っているのだろう」と感心する。 たとえば、遺伝子や免疫などの新しい分野で研究を進める場合、何らかの仮説が必要になる。そんな時「人間の身体は上手く出来ているものだ」ということを前提に仮説を立てると、意外と適切な推論を行なえる場合が多い事に気付く。
免疫の基礎的概念は「自己以外のものを排除しようとするシステム」である。しかし、それでは生活できないので、免疫学的寛容といって、そんなに悪さをしないものには(特に食べ物では)異物との共存を許すシステムが備わっている。しかし、いったん悪さをした異物には、次回からは素早く反抗するためのシステムも用意されている。そんなシステムが混乱すると、日常的な同居物に目くじらを立てるようになってしまい「花粉症」や「ハウスダストアレルギー」などになってしまうのである。 こんなふうに考えると、小学生や中学生の知識レベルでもおおよその理解が出来る。すると、ある小学生は「癌はもともとは自分自身の細胞ではないのですか?免疫では守ってくれないのですか?」という、素朴ではあるが鋭い疑問を抱くことになる。こういった常識的疑問、発想から最先端の科学・技術が生まれていくのではないかと、私は常日頃考えている。

    

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