常識に照らす④ メリット・デメリット2者択1論

 

2001.5~2002.4

常識に照らす④

メリット・デメリット2者択1論

ばんぶう

2001.8

日本医療企画


先日、母校の医学部同窓会の理事会に出席した時の話である。
どこの大学でも、医学部は比較的人数が少なく同窓会組織がしっかりしている。私の母校でも同様で、鉄門倶楽部という特別な名称までついている。卒業生は自動的に、この鉄門倶楽部に属することになる。主な活動は、卒業者名簿の発行と毎月の機関紙の発刊である。年間5000円の同窓会費を納めることが暗黙の了解となっているが、理事会では、その会費の納入率が60%と低いことが問題になったのである。 
学生の運営委員から、「鉄門倶楽部から脱退したい。いったい会費を納めて何のメリットがあるのか?」という卒業生が時々出現するが、どのように対応したらいいのか、という質疑が理事たちに投げかけられた。それに対し、ある大先輩の理事は「世の中にはメリットとデメリットでは分けられないことが時々あるのよ、とでも言っときなさい」と見事に答えられたのである。今の世の中の流れは「メリット・デメリット二者択一分類」傾向にあるのではと最近感じていたから、この話には興味を持った。会費を払う行為は、理論的に考えれば、まさにメリット・デメリット二者択一分類の範疇である。
会費を払うメリットがなければその組織を脱退するという人も現れるし、それは仕方の無いことのように映る。そこで「常識に照らした」判断が出動することになる。同窓会は、卒業生の集まりであり、誰かがその運営をやらなければ成り立たないし、それには費用が発生するということは常識的に理解できる。メリット・デメリット理論では判断が難しいが、常識的にはおぼろげに理解できるのである。それでも同窓会を脱退したい人には、はなはだ非常識的であるが、その権利も認めてあげることが大切である、と私は考える。

    

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