常識に照らす⑥ あなたの常識みんなの非常識

 

2001.5~2002.4

常識に照らす⑥

あなたの常識みんなの非常識

ばんぶう

2001.10

日本医療企画


「あなたの常識はみんなの非常識だ」。こういう表現で人を非難する時がある。結構強い響きである。まさに「あなたのやることはほとんど非常識だ」といっているわけである。こんな言い方をされると相当頭にくるものだ。「私は唯我独尊だから、そんなこと言われても平気」と胸を張っていられる御仁はなかなかいらっしゃらないであろう。それだけ「常識」という見識は大切と考えられているのである。
ここで「常識」という言葉の定義を確かめるために、広辞苑を引いてみたい。「普通、一般人が持ち、また、持っているべき知識」とある。どの程度が普通で、普遍的と言えるのか。アメリカの常識とイタリアの常識では若干違うだろうし、現在の常識と100年前の常識もずいぶん違うところがあるであろう。そういう普遍的でないものは常識とは言わないという考え方もある。つまり言葉の定義の問題である。
 前回、常識と専門知識についてお話したが、例えば私が医学専門知識をいくら豊富に持っていても、決して「教養ある人」とは評価されない。一方、難しい漢字を手書きすることが出来たり、クラシック音楽の知識が豊富であると「教養ある」と評価される可能性は高い。確かに、昔ながらの教養3種の神器に「英語力(語学)」「字がきれい」「芸術への造詣」がある。
一番のポイントは、教養ある人には常識が備わっているものだという暗黙の了解である。しかし、英語に堪能な人や、英会話の先生が常識を素養として持っているかというと、当然答えは『ノー』である。逆は必ずしも真ならずなのである。こういったこともあるので私は常識をもった教養人に対して「品位ある教養人」という特別な呼び方をしている。

    

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