常識に照らす⑤ 易しい専門知識と難しい常識

 

2001.5~2002.4

常識に照らす①

易しい専門知識と難しい常識

ばんぶう

2001.9

日本医療企画


「専門バカ」という言葉がある。 大きく分けて2通りのシチュエーションで使われるようである。専門知識は一人前だが常識に欠ける人を非難して「専門バカ」と呼ぶ場合と、専門知識に溢れている自分を半分は自負、半分は謙遜で 「私は専門バカなもので…」というふうに使う場合がある。 いずれにしろ、専門知識は豊富だが常識や幅広い知識には欠ける という意味で使うことが多い。
この「専門バカ」という言葉の裏には専門知識は難しいもので、それを充分に身に付けるためには多少の常識の欠如には眼をつむるしかない、というような意味合いが含まれているようにみえる。 しかし、私はそれは逆ではないかと考えている。というのは常識を身につけることこそ本当は最も難しく、それに較べると専門知識を習得するのは人並みの努力さえすればなんとかなると思っているからである。
例えば、未だなお後遺症を引きずっている日本経済のバブル現象を思い起こして欲しい。日本人1億総経済専門家になったかのように、株式や土地の売買などの専門知識を学ぶ類の本は書店の店頭を賑わしたあの時代を思い起こして欲しい。土地や株式の値段を決めるための指標をあれこれ作り出し、高騰した価格の妥当性について無理やり納得していた。誰も、「常識に照らして」考えられなかったのである。普通の家が3億円もするようになったり、東京の土地の値段だけでアメリカを丸ごと買えると思い込んだりというのは、常識的に考えればおかしいと誰でも気が付く筈。しかし、大方の人はその常識を働かすことができなかったのである。  
今、わが国の政治もそうであろう。 「常識を働かせて、当たり前のことをする」という(一見評価は低そうに見える)難業を成し遂げる政治家が、日本を豊かな国に再建させてくれると期待している。

    

Copyright ©2013-2020 Terashita Medical Office Allrights All rights reserved.