一生懸命足るを知る② 愛着と執着の紙一重分析

 

2003.5~2004.4

一生懸命足るを知る② 愛着と執着の紙一重分析

ばんぶう

2003.6

日本医療企画


物事に「こだわり」は大切である。

「シェフのこだわりの一品」と聞くと、お腹がグーとくるし、著名な作家のこだわりの万年筆や原稿用紙と聞くと、あやかりたいものと飛びついて買ってしまうのは私だけではないであろう。

私は、車好きである。長年乗っていると、愛着が湧いてくる。 たとえ、次にほしい車がでてきても、今の車を下取りに出すのは忍びない。という理由で、いつのまにか車の保有台数は増えてしまう。「何か愛着の持てるものを大事にすることはストレス解消になるから」。これは妻への言い訳用に考えたのだが、実際そのとおりであろう。しかし、他人から見ると「車所有への執着」と非難されるかもしれない。確かに、愛着と執着の差は非常に主観的なものだ。しかし、その両者には厳然たる相違があることは万人も認めるところであるが、時として、自分自身で混乱を招く場合も多く、ましてやその違いを簡単には説明できない。愛着の根底には「愛」があり、執着の基盤には「欲」があるということが根本的な違いだと、私は考えている。人間は誰でも自分を肯定的に考えたいものである。自己否定的に考える状態は、「うつ病」という病名がつくぐらいである。だから、傍目にはどんなに欲にくらんでいるように見えても「自分にとっては愛着」と思いたくなるのが人間の悲しい性である。

  「一生懸命足るを知る」理論からいけば、「愛着は大切にし、執着からは解放される」ことが楽に生きる方法と考える。「愛着には愛、執着には欲」という自己分析のための公式に加えて、「愛着を持てる対象には限りがあり、執着の対象には際限がない」という公式を提案したい。こうして、私の車について自己分析してみると、それぞれの車には思い出も深く愛情を持っているし、愛着を持てる車の数の限界も、少なくとも片手で十分に数えられるというぐらいの良識は持っているから、「愛着」なのだ、と断定したい、ねえ、奥様‥‥。

    

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