一生懸命足るを知る④ 高度な医療制度と不安と不満

 

2003.5~2004.4

一生懸命足るを知る④
高度な医療制度と不安と不満

ばんぶう

2003.8

日本医療企画


高品質で快適な医療を受けるための水先案内役が私の中心的な仕事である。人呼んで、いや自分では「主侍医」と呼んでもらっている。近年、日本の医療の発達ぶりには目を見張るものがある。しかるに、今の医療に不安や不満が続出しているという厳然たる現状がある。せっかく進化した医療技術があるのにこんなに国民が医療に不安や不満を持っていてよいのだろうか、というのが私の発想の単純な原点である。
 蓋を開けてみると、受けている医療に不安や不満を持っている人が次から次へと私の事務所の門を叩いてくる。さまざまなケースがある。本当に水準の低い医療を受けている場合もあるし、医療スタッフの誠意に欠けるような場合もある。しかし、意外と多いのが、すでに標準的にリーズナブルな治療を受けているのに不安や不満を感じて相談にくるケースである。こういう場合は、我々の対処も難しくなる。すでに相当高品質な医療を受けているわけだから、それ以上となると、医療の技術レべル、医療スタッフの人柄、病院自体の評判や患者さんにとっての利便性などを考えると、転医や転院をおいそれとは勧められない。かといって「足るを知りなさい」と現状に満足するようにと説得するだけなら、不満を助長しかねない。こういったケースを重ねるにつけ、我々の現状の医療に対するスタンスは徐々に変化してきた。現状の医療の問題点を追求することから始める考え方から、「現状の日本の医療は結構いいぞ」という認識を基本に「では、もっと良くするためにはどうするか」と考えるようにした。このちょっとした視点の変換により、我々の主侍医活動の自由度が高くなった。その結果、理想的な医療システムのモデルをつくることにより、一般の医療システムヘの還元ができることになる。

    

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