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一生懸命足るを知る⑤ 「まあいいか」で済まされない人間関係の間合い
2003.5~2004.4 一生懸命足るを知る⑤ |
ばんぶう 2003.9 日本医療企画 |
先日、初島に行く機会があり熱海から連絡船に乗った。港に近づいた頃、別の船が対向し通過していった。その船の通った後の波が結構大きい。海上が穏やかなだけに、対向する船の作った波は大きく感じられ、「あの波でこちらの船も揺れるだろうなあ」と一瞬身構えたが、案外、少しの揺れで済んだ。こちらの連絡船は比較的大きな船であったからであろう。もし、こちらが小さなボートであったら、あの波では相当揺れただろう。小さな船を運転する時は、大きな船にあまり近づかないことが大切だなあ、などと考えていた。
常々、「人間付き合いで一番大切なことは何か?」と聞かれたら「間合いです」と答えるようにしている。なるほど、船同士がすれ違うだけでも、自ら作った波でお互い影響しあうのである。だからそれぞれの船の大きさ、スピードに応じて適切な間合いをおくことが安全快適な航海につながる。このことは人間関係の間合いに非常によく似ている。自分がタイタニックのように超大型なら、少しぐらい大きい船が作る波に影響を受けないであろうが、せいぜい大型クルーザーレベルの域なら多少なりとも影響を受けるものである。
「自分のEQ(感情能力)の大きさの足るを知り」、接する相手のリスク性と影響力に応じた相手との間合いが重要になる。心の傷は、体の傷より後遺症が強いものであるから、より一層の予防的行動に値打ちが出てくることになる。極論すれば、人間関係による心の傷は「間合い」の取り方で全て予防できるのだ。地球の裏側にどんな邪悪な人間がいてもあなたに影響は与えないし、テレビドラマの人物はどんなに険悪でもあなたのトラウマの素にならない。確実な間合いがあるからである。でも、確実な間合いだけでは人生面白くないから、どこまで間合いを詰められるか、多少痛い目に会いながらオーダーメイドの適切な間合いを研究していくことが人間関係を楽しむ秘訣ではなかろうか。