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一生懸命足るを知る⑦ 挑発的攻撃・非挑発的攻撃
2003.5~2004.4 一生懸命足るを知る⑦ 挑発的攻撃・非挑発的攻撃 |
ばんぶう 2003.11 日本医療企画 |
この夏に家族で行った沖縄の水族館に、いわゆる人食いザメと呼ばれる凶暴な鮫が飼育されていた。その説明に「人食いザメとはあまり正確な呼び名ではない。人間を食べることが本来の習性ではなく、たまたま争ったりして血を流すと、それに刺激されて攻撃してくるのである」というようなことが書かれてあった。なかでも面白かったのは、鮫の攻撃には「挑発的攻撃」といって、他の生物がなにか仕掛けてくることにより反撃する場合と、なにもしなくても攻撃してくる「非挑発的攻撃」との二通りあるという説明である。
最近、物騒な傷害殺人事件が目立つが、そのなかには単なる強盗殺人以外に、犯人の精神鑑定を要するような事件も多い。精神異常で心神喪失状態なら刑事責任を問わないという現在の法律に疑問を投げかける声は多い。そういえば、誰かが「このような事件の犯人には、切れた奴と、もともと精神異常の者の2種類あるのでは」とコメントしていたことを思い出した。この論でいくと、いわゆる切れた奴が行う犯罪は「挑発的攻撃」で、精神異常の者の犯罪は「非挑発的攻撃」というふうに分類できるのかもしれない。
これは防犯や安全の心得でもあろうが、一般的な人間関係にも応用が利く法則ではないだろうか。自分が攻撃を受けた時、まず、この「挑発」にあたる行動をしていないか自問してみる。信念に基づく自己主張が生んだ挑発と推定されれば、その攻撃は受けなければならないし、誤解に基づく「挑発」と判明すれば、その誤解を解き攻撃を避けなければならないだろう。挑発行動らしきことに覚えがなければ「非挑発的攻撃」の可能性が高いということになる。その場合は「闘争」か「逃走」のどちらかをすみやかに決断することが身の安全上必須である。
人間の能力には限界があるのだから、無用の攻撃にいつも敢然と向かっていたらきりがない。これも「足るを知る」行動の-種ではなかろうか。