吹っきりのち復活⑨  「予防医学とリスクヘッジ」

 

2002.5~2003.4

吹っ切りのち復活⑨

「予防医学とリスクヘッジ」

ばんぶう

2003.1

日本医療企画


「これからは予防医学の時代だ」とは、最近の健康関係の話題でよく登場する言葉である。私の医学事務所では、健康な時から、「病気にならないような対策」や「病気になったら医師や病院を誰やどこにするか」などの「予防医学的行動」のプロの“ブレ-ン”としての主侍医契約を職務としている。予防医学的行動こそ身近なリスクヘッジ行動の代表である。ところが、どの分野でもこのリスクヘッジほど難しいものはない。それぞれの分野の一流のプロは、リスクヘッジを心得ているものである。いやむしろ、リスクヘッジをしっかりこなしている人こそ、その分野のプロとして信頼してよい証であるといっても過言ではない。
 リスクヘッジとは、簡単に言うと「可能性は低いかもしれないが、自分の予想と反対の事態が起こっても、損失を最小限に食い止めるためにあらかじめ行う対策」となる。素人から見れば「予想に自信がないから」とか「無駄な行為」に見えることこそリスクヘッジと呼べるものであろう。例えば「株は底値だろうから買いましょう」と證券マンが進める場合、全財産で買うのでなく、定期預金や債権などへの分散投資を説くことが多い。これはポートフォリオと呼ばれ消極的なリスクヘッジである。本格的なリスクヘッジは、「株は底値だ」という予想に反して一部の株を売っておくという行為である。私も含め素人は、そのような行為を自分では決断しにくし、株が全面高になれば、きっと損をした気分になるであろう。
 「万一の場合は必要だが、使わない可能性が高いし、使わないで済むほうがよいと思うものに投資する」ということは、よほどの冷静なインテリにしかできない行動である。「吹っ切りのち復活」が難しい我々人間の命であるからこそ、リスクヘッジをプロに委ねたいものである、と今回のお話は自己宣伝になってしまった。

    

Copyright ©2013-2020 Terashita Medical Office Allrights All rights reserved.