吹っきりのち復活⑤  再生医療

 

2002.5~2003.4

吹っ切りのち復活⑤

再生医療

ばんぶう

2002.9

日本医療企画


医療界の今世紀の大きなテーマの一つに「再生医療」を挙げることができよう。最近の新聞紙上でもこの言葉が頻繁に登場するようになった。
 再生医療というと、いつも連想されるのは「トカゲの尻尾」である。トカゲの尻尾が何らかの外的力で切断されても、また同じように生えてくる現象である。私が幼かった頃は、なんだか不思議な感じがしたものであるが、よく考えてみれば、我々人間の爪や髪の毛、髭や皮膚なんかも同様である。特に眉毛なんかは剃ったとしても、前と同じぐらいに生えてきて、一定の長さくらいでその伸びが止まる。当たり前のようだけど不思議である。 そんな不思議を、手足でも出来るようにしようというのが、簡単にいってしまえば究極の「再生医療」なのである。臓器移植も狭い意味での再生医療になる。人工臓器も同様に再生医療になる。「どの辺までの再生が技術的に可能なのか」という問題もさることながら、遺伝子テクノロジーの発達により、「どの辺まで倫理上可能なのか」ということも同時に考えていかなければならなくなった。
ある意味では前半の回答は簡単で、後半のそれは難しい。人工腎臓や人工心臓はほとんどの人が受け入れるであろうが、人工大脳は誰も受け入れないであろう。角膜移植はおおくの人が賛同するが、心臓移植は躊躇する人も多い。凶悪犯罪人の「心」を入れ替える技術を持ったとしたら、再生したその人を許せるであろうか、など思わぬ判断を迫られることになるかもしれない。
 医療以外の分野でも同様と考えている。「20世紀は加速の時代だったが、21世紀は制御の時代」と私が常日頃話しているのは、こういった理由である。

    

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