吹っ切りのち復活④ 再起動できない人間関係

 

2002.5~2003.4

吹っ切りのち復活④

再起動できない人間関係

ばんぶう

2002.8

日本医療企画


前回は、コンピュータの「吹っ切り復活」であるリセットについて心理学的見解を述べた。コンピュータの調子が悪くなったら、リセットをかけて再起動すれば、たいていの場合は調子が復活するものである。
人間の場合もそうであると言いたかったのだが、実際の人間関係はそう簡単には再起動ができない。
 コンピュータトラブルでは最悪の場合、情報を破棄するということになる。
その時にとりわけ注意すべきことは、ハードディスク内に今まで使った情報が残るという問題である。これは単に、コンピュータ上の操作で削除したり、ゴミ箱に入れても完全には消えず、どこかでその情報がこじ開けられて、秘密が漏洩するという可能性があるということだ。そういった現状を反映して、完全にコンピュータ内の情報を破棄することを代行してくれる業者が次々と出現してきている。しかも、その料金が高いから驚く。場合によっては、新しいコンピュータを買えるくらいである。
それでもまあ、コンピュータの場合はなんとかなるからよい。
ところが人間関係の場合は、都合が悪くなったからといって、再起動が出来ないどころか、ましてや完全なる破棄など出来ないので大変である。
悪化した人間関係は非常に伝染力が強いから、被害は大きくなる一方である。
だからこそ、こまめなリセットが必要になってくる。そして問題を起こすプログラムは早めに検出して、原因がはっきりするまではそのプログラムを使用しないことが、再び調子が悪くならないための鉄則といえる。人間もコンピュータも変わらないんだなあと、敬愛する手塚治虫先生の洞察予知力の深さに脱帽するばかりである。

    

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