吹っきりのち復活⑧ 「吹っ切りの予防医学」

 

2002.5~2003.4

吹っ切りのち復活⑧

「吹っ切りの予防医学」

ばんぶう

2002.12

日本医療企画


言葉の持つ力は大きい。相撲の力士が横綱になった時や、政治家が総理大臣に選ばれた時など「不退転の決意」「不惜身命」などと自分の気持ちをわずかな言葉に表すことが多い。彼らの長い演説よりも、その短い言葉は人々に長く大きな影響力を持つことになる。「はじめに言葉ありき」と、聖書でも教えている。私も、言葉の偉大さには常々感服している-人である。反対に、言葉の恐ろしさも相当なものである。親から言われた言葉、先生から言われた言葉、主治医から言われた言葉、親友から言われた言葉……勇気づけられる言葉もあれば、心の傷になる言葉もある。一般に勇気づけられる言葉より傷つけられる言葉のほうが、10倍も100倍も強力なものである。多くの人に影響を与える立場の人は、自分自身の言葉に大きな責任を持たなければならない。
 最近の良い例は、政財界の要人たちの発言であろう。長引く経済低迷の中、彼らのポジティブな発言に市場はあまり反応しないのに、ネガティブな発言には敏感に反応する。こういった市場心理も結局、人間一人ひとりの心理の集合体なのだから当然である。身近な例を挙げれば、ゴルフのラウンドでいくら良いショットを続けていても、一度悪いショットを打ちスコアを崩すとどんどん深みにはまるのは、たいていのゴルファーが体験していることである。人間心理上、そう簡単に悪いイメージは吹っ切れないものなのである。
 そうなると、「吹っ切りの予防医学」が大切になってくる。これは影響を与えるほう、影響を受けるほうの双方にとって、あらかじめ意識しておくべきことであろう。しかし、予防法も行き過ぎると毒になる。人の忠告や警告を無視する唯我独尊態勢になってはいけない。厳しい言葉も勇気づけの言葉に感じられるような、信頼できる人たちに囲まれた生活を送りたいものである。

    

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