かかりつけ医を応援します

カルテの余白

カルテの余白 ⑫

かかりつけ医を応援します

土曜 朝刊 (P.23医療) 

2003.4

朝日新聞 掲載


大学に在籍する後輩の医師から、こう打ち明けられた。
「研究や教育は、少し物足りない。患者さんを診察するのが好きなので、開業して診療に専念したいんですが、開業資金がないんです。」
患者さんの「大病院思考」が強い。高額の医療機器が充実していることも「安心感」をもたらすのだろう。だが、医療の質を上げるには、能力とともに情熱が必要。若い人材が机一つで開業しようとした時に支援できないか。こんな考えから今年2月、高額の機器を開業医が「共有」できる施設を東京都千代田区にオープンさせた。
磁気共鳴断層撮影(MRI)やコンピューター断層撮影(CT)などの医療機器をそろえ、開業医が利用する仕組み。開業医が自分で機械を購入しなくてもすむ。画像をみるのにも専門医が協力する。利用する開業医を1000人~2000人と想像しているが、現在50人~60人。患者さんの保険診療以外の特別な料金はいまのところ不要。
患者さんがいつでも検査データを引き出せる「どこでもカルテ」事業も考えている。実現すれば、セカンドオピニオンも受けやすくなる。
「医師は借金してはいけない。心のゆとりを持ってこそ親身で高度な医療に打ち込める」という私の持論の実現を目指し、患者さんに身近なかかりつけ医を支援しようと、スタッフ数人で小さな事務所を設けた。
まだ「家内工業」の段階だが、「手作りのスーパーカー工房」が目標だ。
小さいながらもスーパーカーのようなモデルを試作・実践してノウハウを公表。制度化を働きかけたい。
「変わった医者」と言われても、こんな医療へのかかわり方もあると確信している。

    

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