複数の医師に相談できる体制を

カルテの余白

カルテの余白 ④

 複数の医師に相談できる体制を

土曜 朝刊 (P.25医療)

2003.2

朝日新聞 掲載


セカンドオピニオンを広めるのはそう簡単なことではない。
医療の世界では、最初に「たまたま」診た医師が自動的に主治医となることが多い。家を買うにしても車を買うにしても、ふつうは検討を重ねて決断するのに。
それに、ひとたび主治医になれば「自分の患者」で、ほかの医師から紹介されると「ひとの患者」と考えがち。口出しは「させまい」「しない」という意識が働いてしまう。
主侍医契約を結んでいる患者さんから「ほかの医師の意見も聞きたい」と申し出があった時のこと。
診療をお願いしていたS医師にこの旨を伝えた。すると、
「君は余計な口をはさまないで欲しい。私が患者さんに直接丁寧に説明しながら診療しているから」。
耳を疑った。
S医師は私が提唱している「主侍医制度」を支援してくれている医師のひとりだったのに…。
もう一つ、忘れてはならないのが医療制度だ。
これもセカンドオピニオンを後押しするようにはなっていない。
同じ病気で別の医師にかかっても医療保険は効かない。重複診療を保険で認めると保険財政を圧迫してしまう。
しかし、主治医に内証で別の医師を受診することは、結果的に重複診療になってしまっているのではないか。
混合診療を緩和して、セカンドオピニオンは自由診療でどこの病院でも受けられるようにすべきだろう。
国立病院でも、セカンドオピニオン外来ができるなど、新たな動きも出てきている。
こうした受け入れ態勢が整備されることは歓迎すべきなのはもちろんだが、患者さんが主治医に「先生と違った意見も聞いてみたいのですが」と、気軽に尋ねられる関係を築くのが先決ではないだろうか。

    

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