「主侍医」は医療の指揮者役

カルテの余白

カルテの余白 ②

 「主侍医」は医療の指揮者役

土曜 朝刊 (P.20医療)

2003.2

朝日新聞 掲載


「あんな無愛想な医者は嫌。患者を何だと思っているんですか?」
「信頼できる先生でした。感謝します。」
内視鏡を使った治療で2人の患者さんにM医師を紹介すると、違った反応が返ってきた。
でも、最近は後者の反応が多い。紹介する際に「一見無愛想ですが、患者さん本位のプロですよ。」といった言葉を添えるからだ。
「医療判断医」。聞き慣れないだろうが、患者さんが最善の医療を選べるよう支援するのを役目にしている。治療を担当する「主治医」に対し、健康な時からそばにいる意味で「主侍医」という造語をあてている。
その症状から、どの専門外来を受診するべきか。がんなら、薬を使う治療がいいのか外科手術の方がいいのか。手術もその臓器をすべて取るのか、がんを中心に切るのか…。
医療の現場で決断に迷うことは多い。担当医の説明で十分と思えない人もいる。
内科医は最善の薬物治療に専念し、外科医は最善の外科治療を目指すことが多いが、患者さんの心の変化、職業や家族、宗教に配慮しなければ治療計画は立てられない。我々にも患者さんと話しながらこうした点を考えられるだけの余裕が欠かせない。
医療判断医は、医療をオーケストラに例えるなら指揮者役だ。先日、高名な指揮者のお嬢さんからこんな話を聞いた。「演奏会で停電になったんです。どうなるか、ひやひや。でも演奏はそのまま。これって指揮者がいらないってこと?電気がつくと、父はいつもどおり指揮棒を振り続け、演奏家たちも楽器を奏でていました。」
どんな時でも揺るがない患者と医師の信頼関係。医療分野に指揮者役の輪を広めようと心に誓った。

    

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