セカンドオピニオン医師も協力を

カルテの余白

カルテの余白 ③

 セカンドオピニオン医師も協力を

土曜 朝刊 (P.21医療)

2003.2

朝日新聞 掲載


脳ドックで小さな動脈瘤が見つかったNさんから相談を受けた。
「『心配なら、血管撮影を』と医師に言われたんだけど、不安で‥‥」
Nさんとは「主侍医」契約を結び、普段から医療相談をしている。
磁気共鳴断層装置(MRI)の画像では大きさは3㍉以下。血管撮影は、動脈に管を入れて造影剤を流し、X線で異常がないかどうかを調べる精密検査だ。
「様子を見たらどうでしょう。血管撮影にはリスクがありますから」と答えたが、Nさんの不安は消えない。
一緒に専門医の意見を聞きに行った。彼も「様子を見るのが最善」。
ようやくNさんも納得してくれた。
医療技術の進歩で、病気をいち早く見つけ、重くならないうちに治せるようになった。
一方で、治療しなくても身体に影響がないわずかな「異常」を見つけたり、それ自体にリスクが伴ったりする高精度な検査も増えてきた
検査や治療の選択肢が広がるのはいいことだが、目の前に並べられただけでは患者は途方に
くれるばかりだ。
複数の医師に意見を聞くセカンドオピニオンが話題になる。主治医の理解と協力が必要という。
ことは口で言うほどたやすくはない。
目の前の患者から「他の医師にも聞きたいから資料を欲しい」と言われるのはつらい。
だが、主治医に気兼ねして内証で病院をめぐる患者が少なくないのが現実だ。
ウインドーショッピングならぬドクターショッピング。
検査も一から。治療方針も決まらない。患者さんの命はすり減っていく。
我々医師には、ドクターショッピングをせざるを得ない患者さんの気持ちを理解し、自分の気持ちをコントロールする術が必要だと自戒したい。

    

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