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グローバルより顔なじみ④ 個人と集団の違いとは
2004.5~2005.4 グローバルより顔なじみ④ |
ばんぶう 2004.8 日本医療企画 |
「三人寄れば文殊の知恵」という格言がある。凡人でも3人寄れば文殊菩薩のような知恵が出る、という意味である。これはこれで納得できるが、このことわざを捩もじって「百人寄ればサルの知恵」と私は変化球を使っている。弱い人間も集団になると結構怖い。小学校や中学校などの「いじめ」もたいていはこの図式である。子どもたちの集団が一人の子どもをいじめるのが通例であって、一人の独裁者的な子どもが他の子ども集団をいじめるというような話はあまり聞いたことがない。政治家でも医師でも銀行員でも一人ひとりに接すると、結構使命感も持っているし、適度に謙虚であったりもする。ところが政党や派閥や医局や大銀行貸付部などに所属するや否や、なんともまあ情けないくらいに変貌するから不思議である。私自身、そんな自分になるのが怖くて大学の医局を辞した経験がある。以後、一匹狼(羊?〉の悲哀をイヤというほど体験することになったのだが。最近、仕事上で、とても残念な体験をした。医療のビジネス化について、日本有数の大企業の系列の会社と論争をすることになった。「企業の目的の第一義は利潤追求」であり「医療の第一義は社会貢献」であるという、最近よくある論議であり、「株式病院論争」にも通じるものである。その企業の役員たちも、個人的には「企業の社会的責任」については深い理解を示す尊敬に値すべき立派な人物たちであり、私はどちらかといえば好きな方々であった。一方、私も「企業の利益追求」という立場は理解しているつもりである。ところが論争が私個人対企業という形になった途端、話がかみ合わなくなった。なんとか歩み寄ろうとしても「大企業であるわが社としては」とか「わが社の常務会で決まったことで」とか、誰の口からも同じ言葉が出るようになってしまったのである。昔、大学にいた頃、「医局の方針ですから」「教授会で決まったことですから」と患者さんの個人的な願いを退けたことはなかっただろうかと記憶を遡る自分であった。
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