グローバルより顔なじみ⑩ むしろ頭デッカチとなるも 心デッカチとなるなかれ

 

2004.5~2005.4

グローバルより顔なじみ⑩
むしろ頭デッカチとなるも 心デッカチとなるなかれ

ばんぶう

2005.2

日本医療企画


一般に、科学一辺倒や理論優先的で計算高い考えに対し、「頭デッカチ」と批判的に使われることが多い。私は心理医学的面接という手法で、心の不調を訴える患者さんや重病時の医療決断の支援活動を行っている。その基本的な理論に認知心理学がある。-言で言えば「気分や衝動で行動せずに、理性や思考のもとで行動するよう心がけると苦しい感情が落ち着くものである」という理屈である。これは宗教的教えでなく、科学的説法であるところが新鮮である。人が行動をする時は、大きく分けて思考か、気分で決断する。人間のさまざまな感情や気分と思考とは密接な繋がりがあり、また、それらと免疫や自律神経などが複雑に絡み合っていることが解明されてきた。
その絡み合いにさまざまな神経伝達物質と呼ばれるホルモンの一種が活躍しているのである。
 糖尿病などの治療で薬以上に生活習慣が大切なように、心の健康にも生活習慣が重大な影響を与えるのである。心を支えているメカニズムは非常に繊細である。「酸いも甘いも」わかることは大切でもあるが、あまりにも苦い体験は心にとって試練を超えて、「トラウマ」というリスクファクターになるのである。
 このあまりにも苦い体験の代表例は「配偶者との離別」であったり「親友の裏切り」であったりするわけであるが、顔馴染みのちょっとした一言で傷つき、不幸や抑うつのどん底に落ち込んでしまうこともある。そんな時こそ「頭デッカチ」となり、理性的な判断を最優先するように自分に言い聞かせることが、うつ状態に入り込まない最大の防衛策となる。芸術家の諸氏には「心デッカチ」は必需品であるが、われわれ凡人が楽に暮らせる秘訣の-つが「時に頭デッカチになる」ことであるのは、意外な事実なのである。

    

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