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グローバルより顔なじみ⑨ 必学!心理学的ファンデルワールス力
2004.5~2005.4 グローバルより顔なじみ⑨ |
ばんぶう 2005.1 日本医療企画 |
今日は、少し難しい言葉を覚えてほしい。「ファンデルワールスカ」という物理学の用語である。2個の原子が非常に接近すれば、相互の弱い結合作用が生じるという自然の法則である。そしてその相互吸引力は、それぞれの原子に特有のファンデルワールス半径と呼ばれるものの和に近づくまで増大し、それよりもさらに近づいてしまうと、今度は正反対に強く反発しあうという現象が起きるのである。しばしば自然界の現象は、人間関係の学習に役立つことが多い。この現象でピンとくることは、人間関係の「間合い」に酷似しているということだ。人はある程度近づくと、互いに引き付け合うが、それぞれに定まった距離感以上に近づくと反発し合う。この距離感が「ファンデルワールス半径」にあたると仮説してみた。
しかし原子の場合は、その原子独自の一定した「ファンデルワールス半径」が存在する。人間の場合も独自の距離感はあるのだが、時と場合で変動するから物理学のようなわけにはいかずにそこが難しい。各人の好奇心、寛容力に加えて、相手方との好き嫌いを中心にした相性があり、また社会的な(仕事関係など)バイアスも「間合い半径」の決定要因となるからである。そして同様に相手方の「間合い半径」もあり、その和が「お互いの間合い」となるわけである。しかし、そんなに難しいことではあるが、これは勉強してマスターしがいのあることであろう。私が仕事で、さまざまな心理医学的相談事を受ける場合の問題事は、たいていの場合は人間関係に起因するものである。私自身がかつての嫌な体験を順に並べると、親や親友を亡くしたこと以外の上位のほとんどが人間関係の間合いの失敗であると認めざるを得ない。あまり杓子定規に、「間合い半径」を決めてしまうのも、人生世智辛くなるが、快適に生きていく知恵として、活用してほしい。
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